ウクライナに多額の仮想通貨が寄付される--使途公開など多くのメリット - (page 3)

Daniel Van Boom (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2022年03月07日 07時30分

 「私はWeb3を中立なものだと考えている。Web3の本質はツールであって、ツールは、使う人によって善にも悪にもなる」とWangさんは述べ、Reli3fが善のために使われた前例になることを望んでいると説明した。「われわれが言いたいのは、これがWeb3の本質的な部分であるということだ。すべてのトランザクションハッシュをスレッドに記載し、特定の数字について、その理由を人々に説明し、はっきりと確認できるようにした。資金の使い道を確かめることができる」

 Wangさんによると、仮想通貨を使用することで、現在課されている銀行振込の制限を回避できるという利点もあるという。ウクライナ国内、特に東部のいくつかの銀行は、市民が引き出したり、移動したりできる金額に制限を設けている。ウクライナ国立銀行は、引き出し限度額を10万ウクライナフリヴニャ(約39万円)に設定しているほか、自国通貨と外国通貨の両替にも制限を設けている。

 問題は、多くの組織が仮想通貨ウォレットを設定していないことだ。ウクライナ政府がウォレットを介した資金調達で大きな成功を収めたことにより、そうした状況は近いうちに変わるかもしれない。

figure_3
Reli3fの作品の一部。収益はウクライナのレジスタンスへ寄付される。
提供:OpenSea/Reli3f

善にも悪にもなり得る仮想通貨

 ウクライナでの仮想通貨の使用は、このテクノロジーの利点を証明している。突発的に世界から資金を調達できる取り組みであり、動きの遅い官僚制度に邪魔されることなく、多額の資金が現地の組織に素早く送られる。だが、マイナス面があることも明らかだ。

 ビットコインやイーサの、制度上の制限を回避できるという特性は、どちらの陣営も利用できることだ。米国とEUは、ロシアの金融機関、輸出、政財界の重要人物に対して全面的な制裁を課している。経済を圧迫すれば、Vladimir Putin大統領は交渉の席に着かざるを得なくなるだろう、というのが狙いだ。こうした制度上の制限を回避できることが多い仮想通貨によって、制裁の効果が弱まるのではないか、という不安の声もある。

 ダルハウジー大学の国際開発研究の准教授であるRobert Huish氏は先頃執筆した評論で、「ロシアは、国際的なパートナーと取引し、制裁を回避するために、仮想通貨を詳しく研究している」と記している。Huish氏によると、シベリアは仮想通貨マイニングの中心地であり、ロシアの頼れる供給源になっているという。

 仮想通貨に固有の匿名性が組織的に悪用されているだけでなく、おなじみの詐欺事件も多数発生している。慈善団体のためのものと詐称するウォレットアドレスが出回っているほか、Reli3fを装ったいくつかのコレクションがOpenSeaに登場したことを受けて、Twitterでは警告するツイートが投稿されている。

 それでも、Raskalov氏は仮想通貨だけでなく、それ以外のことについても楽観的だ。「私たちが戦争に勝ち、祖国の再建に着手したとき、仮想通貨は我が国最大の収入源の1つになるだろう」

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]