実店舗を持つ小売店にこそオンラインで強みがある

Tom Foremski (ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部2022年02月01日 07時30分

 オンライン小売業は、商取引技術の発達などに支えられて長年にわたり繁栄してきた。伝統的な実店舗を運営する小売業者は苦戦してきたが、時代は変わりつつある。

実店舗
実店舗にはオンラインショップにはない強みがある。
提供:Tom Foremski

 良くできたユーザーインターフェースを備え、何ペタバイトもの顧客データを持つ資本の十分なオンライン小売業者は、新たな市場や地域に迅速に参入できる。倉庫の物流インフラの構築などは必要だが、出店用地も、店舗の建設または賃貸も、店舗の設備購入や店員の採用も不要だ。管理するのは、実店舗の展開に必要な人員よりもはるかに少ない数のソフトウェアエンジニアと、データセンターだ。

 このように、オンライン小売業者はこれまで有利だったが、この利点は失われつつあるのではないだろうか。誰でも利用できる高度なクラウドITや、サービスとして購入できるeコマース技術が多数登場しており、それらの品質は、オンライン小売業者が利用しているものとほぼ同レベルだ。

 現在有利なのは、実店舗を持っている小売業者の方だろう。オンライン小売業者が実店舗を建設して競合に挑戦するのは難しいが、実店舗を持つ小売業者がオンライン小売業者に挑戦するのはたやすい。実店舗を持つ小売業者は高度なITを短期間で実装できるからだ。

 (私が以前働いていた)Delphxの創業者、Jedidiah Yueh氏は著書「Disrupt or Die」の中で、誰でもテクノロジーを簡単に利用できるようになったため、テクノロジーは事業を成功させるためのキーファクターではなくなったと指摘した。差別化要因はイノベーションだ。テクノロジーはビジネスプロセスを自動化し、支える手段にすぎない。

 実店舗を持つ小売業者にとって、最も価値のある資産はその実店舗であり、物理的なインフラと実店舗を好調に維持するための人材の専門知識だ。

 マイクロサービスのアプローチを採用し、クラウドITサービスを活用することで、従来の小売業者は自分のペースで新たなテクノロジーを導入できる。彼らには他にも利点がある。独自の専門的な商取引技術を開発したり、人件費の掛かるソフトウェアエンジニアを多数雇用したりする必要がない。

 従来型の小売業者は、新機能を追加したりバグを修正したりするのに忙しい他社のソフトウェアエンジニアが維持している、高度なITサービスを利用できる。

 私は最近、東芝グローバルコマースソリューションを取材した。同社は、従来の小売業者がオンラインチャネルを拡大し、柔軟なクラウドベースのマイクロサービスとAPI駆動形ITアーキテクチャーを使ってeコマースを強化することを支援している。同社の統合コマースプラットフォーム「ELERA」は、実店舗のレジとオンラインショップの決済システムとを統合する。

 小売業者は、柔軟なITアーキテクチャーを使うことで、革新的なアイデアをテストし、速やかに終了またはネットワーク全体でスケールアップできる。

 従来の小売業者は、地元で強い信頼関係を築いており、その実店舗で買い物をしたり、商品を手に取って確認したりする多数の常連客を持つ。店舗は重要な小売りショーケースになる上、必需品の当日配達も可能だ。

 店舗は小売業者にとって、人間同士の触れ合いを提供する手段だ。リアルな触れ合いは本質的に、顧客体験と顧客の忠誠心を大幅に向上させる。結局、クリックしてオンラインショップを乗り換えるのは簡単だが、わざわざ車で遠くにある別の競合店に行くのは面倒だ。

 オンラインの世界には実店舗を持つ小売業者が必要だ。商業における形勢は変化している。そんな予感がする。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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