多くの大手ゲーム会社が、ゲームにNFTを取り入れる可能性を語ってきたが、これを実行に移した最初の企業が「アサシン クリード」や「ファークライ」シリーズを手がけるUbisoftだ。2021年12月、同社はミリタリーシューティングゲーム「ゴーストリコン ブレイクポイント」にNFTを導入した。
「ゴーストリコン ブレイクポイント」のプレイヤーは、ゲームから独立した「Digit」と呼ばれるNFTアイテムを所有できる。Digitは、ブロックチェーン上で生成されるデジタル資産であり、Ubisoftのサーバーではなく、プレイヤーのデジタルウォレットに保存される。そのアイテムがカルト的な人気を博してDigitの価値が上がった場合や流通量が少ない場合、プレイヤーはゲーム外の市場でそのDigitを売却できる。このように、世界中のゲーム開発会社は人気の高いレアなゲーム内アイテムを本当の意味で所有できるようにすることで、プレイヤーを引き付けたいと考えている。
しかし、NFTがゲーム内でうまく機能するか、このトレンドにゲーマーたちが乗るかどうかはまだ分からない。UbisoftのNFT実験について言えば、プレイヤーの評価はすこぶる悪かった。
UbisoftがNFTの導入を発表したYouTube動画には、2000足らずの「高評価」に対して、4万以上の「低評価」がついた。NFTを購入しているプレイヤーはほとんどおらず、2021年12月時点で、Ubisoftが販売したNFTは20にも満たない。同じくゲーム大手のセガは、NFTに対するゲーマーの激しい拒否反応を見て、この技術の導入に慎重な姿勢をとっている。NFTがただの金もうけだと見なされるなら、NFTの展開は見送る、とセガの経営陣は述べた。
ゲームを開発する側にとって、NFTが商機となることは間違いない。しかし、この数十億ドル規模のビデオゲーム業界で、どの企業がプレイヤーの支持と関心を得られる形でNFTを導入できるかは、まだ誰にも分からない。
ビデオゲームにNFTを導入し、その名を歴史に刻む企業はどこになるかという質問に対し、Pachter氏はこう答えた。「それは、Amazonが創業する前の1993年に、Amazonを説明するようなものだ」。デジタルの世界は動きが速く、市場を制する企業の顔ぶれはめまぐるしく変わる。その例として、Pachter氏はインターネットの黎明期を挙げる。「もし1993年に『インターネットを制するのはどの企業か』と問われたら、私はAOLと答えただろう。当時はAOLが市場のリーダーだったからだ」
ビデオゲームにNFTを導入できるからといって、そうすべきだとは限らない。これは専門家だけの見解ではなく、一部のゲーマーからも同じような意見が聞かれる。
多くのビデオゲーム関係者はNFTの導入に前向きだが、業界は一枚岩ではない。Microsoftのゲーム部門を統括するPhil Spencer氏はNFTを警戒している。世界最大級のデジタルゲームストアのSteamは、ブロックチェーン関連のビデオゲームを全面的に禁止した。Ubisoftが「ゴーストリコン」にNFTを導入した際の反発の大きさを考えれば、ブロックチェーン技術に二の足を踏むのも無理はない。
最近のある調査によると、ゲーム開発会社の半数以上はNFTやブロックチェーン技術に興味を持っているという。しかし、大手ゲーム開発会社がNFTの導入を試みる間も、Ubisoftへの反発が続くなら、現在のNFTブームは短命に終わり、Axie InfinityのようなP2Eゲームはビデオゲーム史の脚注に小さく記される程度の存在で終わるかもしれない。つまり、NFTがゲームの世界に定着するかどうかはゲーマーにかかっている。これまでと同じように、決めるのはプレイヤーであり、その決定に市場が答えるのだ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス