オーディオブックの配信サービス「audiobook.jp」を運営するオトバンクは、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)の公共図書館システム「ELCIELO」と連携して提供している「オーディオブック配信サービス」について、1月から東京都台東区の公共図書館全館で導入したと発表。台東区立図書館の利用登録のある区民(在勤・在学含む)を対象に、6000タイトルを超える作品を聴くことができる。
オーディオブックは、ナレーターや声優が朗読した本などの音声を、PCやスマートフォンで聞くことのできるサービス。オトバンクとKCCSは、公共図書館システム「ELCIELO」のオプションサービスとして、2020年2月からオーディオブックの貸出を開始。オプションを導入した図書館では、オーディオブックを利用者に提供可能となっている。現在は台東区を含め全国8つの自治体で導入されている。
コロナ禍における非来館サービスの需要高まりに応じて進む図書館のDX化や、障がい者差別解消法および読書バリアフリー法(※正式名称は「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」)の施行に伴い導入館数を伸ばしているという。
1月から、新たに台東区内の全公共図書館にてオーディオブック配信サービスが利用可能。図書館の利用者は、紙の本と同様に図書館ホームページの蔵書検索機能から書籍を検索しオーディオブックを再生できる。インターネットを通じてのストリーム配信となっているため、PCやスマートフォンなどでいつでもどこでも聴くことができる。なお利用対象は、台東区立図書館の利用登録のある区民(在勤・在学含む)となっている。
オトバンク代表取締役社長の久保田裕也氏は図書館などの公共機関に向けたオーディオブック展開について、紙の書籍、電子書籍に続く第三の書籍として、誰もが読書を楽しめる環境を実現することの一環と説明。そして背景には、シニア層と親和性が高いことを挙げる。
オーディオブックの利用者のうち、60代以上が2020年以降で4割増加しているという。また利用者からの声でも、老眼など視力の低下で読書が難しい環境でも“聴く本”で読書の楽しみを味わっていること、そのほか継続率や購入冊数のデータなどを見ても親和性は高く、そうしたシニア層へのアプローチはやりたかったことと語る。
公共機関の施設に向けた導入は、以前からも問い合わせは相当数あったが、権利関係の調整もさることながら、公共施設としての予算の問題もあってなかなか進まなかったと振り返る。そうしたなかで、読書バリアフリー法の成立などが後押しとなって公共施設の取り組みも進んでいったと説明する。
またオトバンクとして「SDGs読書」プロジェクトも展開。読書環境における音声の観点から、「すべての人々に包括的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯教育の機会を促進する」「人や国の不平等をなくそう」「平和と公正をすべての人に」の実現を目指している。これらを踏まえ、読むのと並んで「聴く」も選べる時代へと、オーディオブックを当たり前のように使っていただける社会にしていきたいという。
京セラコミュニケーションシステム 文教医療ソリューション事業部 事業部長の長野伸幸氏は、読書バリアフリー法や新型コロナウイルスの感染拡大を受け、図書館の利用スタイルが変化していることを察知。また「SDGs読書」プロジェクトにも賛同する形で、障がいの有無に関わらず図書館に行かなくても読書の機会を提供したいという思いから、オーディオブック配信サービスの提供に至ったことを説明。利用も急速に拡大しており、さらなる導入も進めていくという。
今後の展開として図書館だけではなく大学や病院、福祉施設への導入も検討。また、オーディオブックは視覚障がい者に有効という観点から、スマートスピーカーを活用し、声のやり取りで検索や再生するシステムも開発を進めているという。
台東区立中央図書館の横倉淳二氏はオーディオブック導入の背景として、非来館型サービスの充実が課題にあったと語る。図書館の利用実績として「利用者(来館者)が大きく減少」「開館日ベースでは、貸し出し冊数は微減」「貸し出し総数は減少、ウェブ予約数は増加」という3つの動向を踏まえて、利用者のニーズは減少していないことと、来館を控えている状況があること、そして来館して書架で資料を探す利用者が減少し、ウェブで予約して借りる利用者が増加している状況があると考察したという。
これを踏まえ、非来館型サービスの充実を検討しているなか、図書館システムの更新にあわせてオーディオブック配信サービスを紹介され、今回の導入に至ったとしている。
またバリアフリーの観点から、これまでも専用資料の貸し出しや、ボランティアによる対面やウェブ会議システムを使っての朗読サービスも行ってきたという。一方で貸し出しや返却の手続きがあったり、朗読サービスはボランティアとのスケジュール調整の手間もあったと指摘する。オーディオブックであれば、自由な時間に利用できるため気軽に利用しやすいとメリットを挙げた。そして今後も障がい者だけではなく、多くの方にオーディオブックを利用していただきたいとアピールした。
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