メタバースは新しい概念ではない。これは1992年にSF作家のNeal Stephenson氏が生み出したアイデアであり、20年近く前からすでに、仮想空間で暮らし、仮想通貨を使って仮想商店で買い物をする人々はいた。
当時、多くの人が訪れていた仮想空間が「Second Life」だ。そして今、メタバースが再び流行語となると、Second Lifeの創設者Philip Rosedale氏は元祖メタバースの進化を中核チームに指示した。Second Lifeのようなコミュニティー中心の世界を作ることが、仮想現実(VR)ヘッドセットが(現時点では)必ずしも解決していないメタバースの問題を部分的に解決する方法になる――Rosedale氏はそう考えている。
Rosedale氏はSecond Lifeを生み出した後、2013年に仲間とHigh Fidelityを立ち上げ、低レイテンシーのハイエンドVRの実現に取り組んだ。もっとも、ここ数年はVR以外の技術に軸足を移し、最近は空間オーディオに力を入れている。同氏は2019年、VRヘッドセットは多くの人が使いたいと思うような形には達していないとの見解を投稿した。筆者は先日、「Google Meet」で同氏と話す機会を得た。同氏は、今もその感覚は変わっていないと述べ、VRヘッドセットはごく一部の人だけが快適に使用できる、現実世界の目くらましにすぎないと語った。
Rosedale氏は、VRヘッドセットが「iPhone」並みにブレイクする日は来るかもしれないが、少なくとも数年はかかるため、それまではヘッドセット不要のメタバース、つまりSecond Lifeに重点を移すという。こう考えているのは同氏だけではない。SpatialをはじめとするVR・拡張現実(AR)ソフトウェア会社も、多くのユーザーを獲得するために、最近はVRヘッドセット以外の方法に目を向けている。メタバースをめぐるMicrosoftやMeta(旧Facebook)の最近の動きからも分かるように、さまざまな意味で、仮想世界はクロスプラットフォーム化を目指している。
Rosedale氏は、Second Lifeの「戦略的アドバイザー」に就任する。同氏の会社、High FidelityはSecond Lifeに新たなアイデアをもたらす一方で、他の新しいテクノロジーにも並行して取り組むという。時期はともかく、ここにはVRへの再挑戦も含まれるかもしれない。「7人のスタッフ、特許、そして資金を新しいプロジェクトに投入することを発表した。これはSecond Lifeの開発を続けるための投資だ」とRosedale氏は言う。「Second Lifeに提供する特許のうち、2件は分散環境でのモデレーションに関する非常に面白い技術だ」
この方向転換は、Second Lifeが今も収益を上げ、他のVRプラットフォームよりもかなり大きなコミュニティーを維持しているからにほかならない。Second Lifeでは、これまでに7300万以上のアカウントが作成され、アクティブユーザー数は推定90万人に達する。成熟したVRハードウェアがない状況では、Second Lifeへの投資が問題を解決する方法になるとRosedale氏は考えている。
「Oculus Quest 2」は成功しているように見えるが、Rosedale氏に言わせれば十分ではない。「まだまだ不完全だ。納得できるレベルに達するまでには、あと5年はかかる」と同氏は言う。「このままでは、われわれはスタートアップとして生き残れないし、5年間も無策でいるわけにもいかない」。同氏は理想的なハードウェアが登場するまでの次善の策として、Second Lifeを進化させ、VRを使わなくても利用できるプラットフォームを構築したいと考えている。
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