Facebookが10月、社名をMetaに変更した。この変更は、最高経営責任者(CEO)のMark Zuckerberg氏が数カ月前から語ってきたソーシャルネットワーキングの未来、つまり、あらゆるデバイスで利用できるマルチバースの実現に向けた広範な取組みの一環だ。折しも、Facebookがヘイトスピーチやデマなどの有害コンテンツの蔓延に果たした役割を指摘する内部文書が公開され、盛んに報じられていた。
Metaは、いまだ解決されていないソーシャルメディアの問題を解決するために、未来に希望を託そうとしている。この未来の中で、メタバースはどのような役割を果たすのか。これからの数年間で、Metaは何を達成しようとしているのか(そしてそもそも、メタバースとは何なのか)――。元Instagramの製品責任者で、Facebookが新設したメタバースグループの初期のキーパーソンである担当バイスプレジデントのVishal Shah氏に話を聞いた。
インタビューの内容を整理した上でお届けする。
——Metaとは結局、何なのでしょうか。今回の社名変更の意味と目的を、あなた自身はどのように理解していますか。
社名の変更については、2年ほど前からいろいろと準備を進めてきました。2019年にもロゴを刷新し、リブランディングを行いましたが、当時はFacebookを大文字にしただけで、社名自体に変更はありませんでした。この時のリブランディングの目的は、私たちはFacebookというアプリ、Facebookという製品を超えた存在であることを伝えることでした。
私はInstagramで6年間働いていたので、この点はよく分かります。しかし同時に、Facebookがソーシャルメディアの象徴的なブランドだという感覚も引き続きありました。当時はFacebookというブランド自体が重要だったのです。しかし今の私たちは、もはや単なるソーシャルメディア企業ではない。確かにFacebookやInstagramには今も投資していますし、アプリの名称に変更はありません。しかし、次のコンピューティングプラットフォーム、つまりメタバースにも新たな投資を始めています。もっとも、メタバースは私たちだけで構築できるものではありません。この点は、今日はっきりとお伝えしたと思いますし、今後も訴えていくつもりです。「メタ・メタバース」というものは存在しないからです。メタバースは1つしかありません。「当社がメタバースを構築している」と言うのは、「当社がインターネットを作っています」と言うようなもので、そもそもおかしい。しかし会社として、私たちは単なるソーシャルメディアではないと示すことは重要です。それが、今回の社名変更の意味です。
——個人的に、大きなテーマだと感じたのはコマースです。実際、Instagramでは多額のお金が動いていますね。(新しい)世界の収益性を確保するためには、やはりコマースが重要になるのでしょうか。
Instagramの仕事をしていた時は、クリエイターやInstagramのエコシステムだけでなく、コマースのことや、Instagramで生計を立てている小規模な事業者のことを、時間をかけて考えていました。だからこそ、クリエイターとコマースの話が今、盛んになされているのです。何であれ、新しいプラットフォームを作る際は、そのプラットフォームに投資する人たちが生計を立てられるようにすること、利益を出せるようにすることが必要です。
誤解しないでいただきたいのですが、私たちも企業であり、この分野には多額の投資をしてきましたから、私たちにとっても持続可能なビジネスを作りたい。この点をごまかすつもりはありません。しかし、すべての前提として言えるのは、ユーザーの体験は私たちだけでは構築できないということです。
新しい世界をつくるのは、クリエイター、個人、個人のビルダー、アマチュアらの創造力です。他の企業も相互運用可能な体験を作ってくれるでしょう。私たちが新しいビジネスモデルの話をこれほど早い段階からしているのは、そのためです。クリエイターやビルダー、デベロッパーが、自分たちのビジネスの今後を見通せるようにしたい。正直なところ、この点ではInstagramは少し遅かったと思いますが、同じ失敗をしたくはありません。
——規模も重要だと思いますか。(ゲーム業界の伝説的なプログラマーである)John Carmack氏は、2次元アプリのユーザーや資産、コストの重要性を語り、2次元の側が仮想現実(VR)に近づき、適応するのではなく、VRの側が2次元に歩み寄るべきだと言いました。経済規模を拡大するためには、この点も課題となってくるのでしょうか。
そうですね。実際、今日もその話をしました。次世代のプラットフォームはVRだけではないし、拡張現実(AR)だけでもないと考えています。すべてのデバイス、すべてのスクリーンに対応する必要があるのです。ソーシャルな体験、つまり、大切な人たちと体験を共有したい場合は、特にそうです。誰もが最新のハードウェアや最新のメディアを使っているわけではない場合、同時に同じ体験をすることは難しくなります。
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