Peter Jackson氏が監督し、「Disney+」でストリーミングされているドキュメンタリー「ザ・ビートルズ:Get Back」が成功を収めたことで、The Beatlesをめぐる熱狂が帰ってきた。George Harrisonがあくびをしているそばで、Paul McCartneyが一見何もないところから「Get Back」を作曲する姿を見られるのは、2021年最高の映像作品の1つと言えるだろう。
The Beatlesはほぼ間違いなく、歴史上最も成功したポップグループだ。彼らの全盛期以降、レコード会社や現在の音楽ストリーミングサービスのみならず、無数のアーティストやプロデューサー、ソングライターが、The Beatlesと同じ魔法を再現しようと試みてきた。ポップミュージックをヒットさせるというとらえどころのない目的のための最新ツール、それが人工知能(AI)だ。
AIによるアートの創作を考えるときに思い浮かべるのは、大抵の場合奇妙な作品や意図せぬ面白さを備えた作品だ。例えば、何千もの犬の目が描かれたGoogleの恐ろしい「Deep Dream」や、何百ものSF映画の脚本を読み込んでAIが執筆した映画「Sunspring」といったものがある。AIの影響を受けている芸術分野は映画だけではない。音楽の分野でも、NirvanaやJimi Hendrixと全く同じサウンドを目指したAIの新曲が公開されている。
音楽分野でのAIの使用はもう始まっている。その割合はまだ小さいものの、今後大きくなる可能性がある。論理的にその考えを突き詰めていくと、次のような疑問が生じる。AIが全く何もないところから、ポップスターやグラミー賞受賞者を生み出すことはできるのだろうか。
人工知能が、今日のサンプリングやホームレコーディングと同じ程度に使用されるようになることは、想像に難くない。グラミー賞を受賞したBillie Eilishのようなミュージシャンはすでに、昔ながらのコンピューターを使って、楽曲の録音やサンプリング、シーケンスを自宅で行っている。その方がスタジオでレコーディングするよりも安上がりなので、資金不足のミュージシャンにとって好都合なだけでなく、レコード会社の利益も最大化する。
AIツールは何もないところから全く新しい音楽を作り出す機能をすでに備えており、歌詞を自動生成するアプリ、コードの作成や楽器の編成を行うアプリなど、さまざまなアプリが存在する。コンピューターとスマートフォンが音楽の配信と録音を一般に普及させたように、AIは、音楽制作のプロセスを誰でも利用できるようにする、と支持者たちは話す。だが、AIに批判的な人々によると、予期せぬ悪影響が生じるおそれもあるという。
テレビ番組「Alter Ego」では、人間の歌手がデジタルアバターを使って、歌のコンテストに参加している。そこから、物理的に存在しないアーティストを想像するのも、それほどかけ離れたことではないだろう。近年、YonaやLil Miquelaなど、少数のAIポップスターが登場しているが、知名度は低い。だが、人間のアーティストは何年も前からAIツールを使用している。例えば、YachtというバンドはAIツールを使ってアルバム「I Thought The Future Would Be Cooler」を制作した。
Taryn Southern氏は人工知能を使って創作しているミュージシャン兼映画製作者だ。BBCはSouthern氏について、世界で初めて1位を獲得するAIポップスターになるかもしれないとさえ考えていた。Southern氏は米CNETとのインタビューで、AIは、YouTubeが動画制作に革命を起こしたのと同じように、音楽制作に革命を起こす可能性がある、と語った。
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