パナソニックは、2022年1月4日(現地時間)、米ラスベガスで開催しているCES 2022のプレスカンファレンスにおいて、新たな環境コンセプト「Panasonic GREEN IMPACT」を発表した。
パナソニック 代表取締役社長執行役員兼グループCEOの楠見雄規氏は、「パナソニックは、事業活動において年間220万トンのCO2を排出している。また、パナソニックグループの商品は、世界で毎日10億人以上が利用し、その消費電力によるCO2排出量は、工場からの排出量の約40倍に達する。これらを含めたバリューチェーン全体からのCO2排出量は約1億1000万トンであり、世界の電力消費の約1%に相当する」と述べた。
「パナソニックでは、2030年までに、全事業会社のCO2排出量を実質ゼロにするとともに、2050年に向けて、利用されている商品からのCO2排出量を減少。企業や公共分野の顧客に対しても、省エネソリューションやクリーンエネルギー技術の提供により、バリューチェーン全体のCO2を減らす活動を推進する。Panasonic GREEN IMPACTは、持続可能な未来のためのコミットメントである」と続けた。
同社では、Panasonic GREEN IMPACTの意味について、「パナソニックの事業活動、パナソニックが提供する商品を通じてお客様が排出する膨大なCO2というインパクト(IMPACT)に対する責務と、それに対してパナソニックがCO2削減に貢献し、より大きく、ポジティブなインパクト(IMPACT)を与えていくという思いを込めた。また、持続可能な未来に向けて、行動(ACT)していくという、コミットメントの意味も込めた」と説明している。
楠見氏は、プレスカンファレンスのなかで、創業者である松下幸之助氏が、「なぜ、企業は存在するのか」という問いに対して、「『より豊かな暮らしを送りたい』という人々の願いを実現するところに企業の役割や使命があり、『企業は社会の公器』でなくてはならない」と述べたことに触れながら、「いま、社会の公器としてなすべきことは、地球の気候変動に対して行動することや、より豊かな暮らしを子供たちに約束することである」と述べ、「パナソニックが競争力を磨き、顧客への貢献を強化するほど、将来のカーボンニュートラルにも貢献できる。Panasonic GREEN IMPACTにより、自らのためにも、未来の世代のためにも、環境に正面から向き合い挑戦をしていく」とした。今後、具体的な取り組みについても発表していくことになるという。
サステナブルへの取り組みの1つとして紹介したのが、世界最大のリチウムイオン電池工場である米ネバダ州のテスラ・ギガファクトリーで生産されているリチウムイオン電池への取り組みだ。
同工場では毎年20億個のリチウムイオン電池を生産し、2021年には累計で50億個の生産を突破したほか、電気自動車の普及に伴って、今後10年間で5倍の成長が見込まれているという。
Panasonic Energy of North America プレジデントのAllan Swan氏は、「現在、1秒間に60個のバッテリーを生産し、それが1台の電気自動車に搭載される。この45分間の記者会見の間にも16万2000個のバッテリーを生産できる」と説明。「リチウムイオン電池のグローバルリーダーであるパナソニックは、より高い効率性と規模の経済を実現するために、何10億ドルもの投資を行ってきた。それは、ネットゼロエミッションを達成するために不可欠なものと考えているからだ」と述べた。
また、使用済みの車載用バッテリーについては、Redwood Materialsとの連携により、循環型サプライチェーンを実現。2022年末までには、リサイクル材料から生産された銅箔をバッテリー生産に再び使用できるようにすることを明らかにした。
プレスカンファレンスでは、いくつかの新製品も発表された。家電分野では、パナソニックが北米でナンバーワンシェアを持つインバーター搭載カウンタートップ電子レンジにおいて、新たにアレクサとの連動により、音声で温めや再加熱を指示できるようにしたほか、Blue Apronと共同で、おいしく、素早く調理ができるミールキットやレシピを提供することを発表。さらに、揚げ物や焼き物、煮物など、7種類の機能を持ったHomeCHEF 7-in-1 Compact Ovenを北米市場に投入することを発表した。
パーソナルケア分野では、6枚刃シェーバー「Arc6」を発表したほか、パーソナルケアをサポートする「#journeytoconfidence」キャンペーンを実施するという。
テクニクスでは「Technics True Wirelessイヤホン」において、特許取得済みの「JustMyVoiceテクノロジー」や、強力なノイズキャンセリング機能、Bluetoothマルチポイント接続機能を搭載し、仕事でも、プライベートでも利用できるように進化させたことを強調。ヘッドホンでは、「Technics EAH-A800 Noise Cancelling Wireless Over-Ear Headphones」を発表。ほぼすべてのスピーカーに接続可能な「SA-C600 Compact Network CD Receiver」も発表した。
なお、2021年8月に発売したパナソニック初のウェアラブル没入型ゲーム用スピーカーシステム「SoundSlayer WIGSS」が、CES 2022 Innovation Awardのパーソナルオーディオ&ヘッドフォン部門とゲーミング部門の両方で受賞したことも報告した。同スピーカーは、スクウェア・エニックスのサウンドエンジニアと共同で設計し、6種類のサウンドモードによって完全な没入感を実現できる製品として人気を博しているという。今回、ゲーミングネックスピーカーであるSoundSlayer wearableの FINAL FANTASY XIV Onlineスペシャルエディションも発表した。
また、テレビでは、有機ELテレビのフラッグシップモデルとして「LZ2000シリーズ」を公開。LUMIXでは、新製品を2022年春に投入することを明らかにした。
自動車分野では、パナソニックが北米でトップ8、全世界でトップ15の自動車部品メーカーであることを強調しながら、2021年のCESで発表した車載用AR(拡張現実)対応ヘッドアップディスプレイ(HUD)を進化させた「AR HUD 2.0」を発表。アイトラッキング技術の導入により、ドライバーに対して、視覚的に安全性を示したり、障害物を警告したりといったことをよりわかりやすく伝え、移動中にドライバーが首を傾げても視差補正やダイナミックオートフォーカスによって映像を鮮明に表示。個人認証や眠気検知などのドライバーモニタリング機能も搭載したという。
また、充電スタンドの検索やエンターテインメントへのアクセス、アレクサと連携ができる「SkipGen in vehicle entertainment」では、新たな「Teachable AI」によってインテリジェント性を高め、車内でアレクサに「暑い」と話しかけるだけで、これまでの対話から学習し、車内の温度を5度下げたり、窓を開けたりするといった操作が可能になる。
さらに、25個のスピーカーなどで構成する「ESL STUDIO 3D Signature Edition」を、2022年の新型「アキュラMDX Type S」に搭載することを発表したほか、Tropos Motorsとの協業により、車両管理プラットフォーム「One Connect」を進化。ドライバーの安全、貨物のセキュリティ、車両のメンテナンス、コストとエネルギーの利用を監視することができるという。
二輪車では、Totem USAとの協業により、UL認証を取得した初の家庭向けeBike「Zen Rider」を米国市場に投入。パナソニックのバッテリーを採用したという。
一方、ラスベガスの体験型施設「AREA 15」にパナソニックのプロジェクション技術が採用され、14台の4Kプロジェクター「PT-RQ35K」により、没入型の体験が可能になっていることを紹介。また、Team Panasonicのブランドアンバサダーであり、東京オリンピックで、女子1500m自由形、女子800m自由形で金メダルを獲得したKatie Ledecky氏が登場し、小中学生を対象とした新たなSTEM教育プログラムに協力していることを紹介。同プログラムに活用されるデジタル学習プラットフォームを提供するディスカバリー・エデュケーションのAmy Nakamotoシニアバイスプレジデントも登場し、このプログラムが1月4日から教育関係者や生徒など対象に提供することを発表した。
なお、パナソニックでは、当初は、現地会場でのプレスカンファレンスを予定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けてオンラインのみで開催。展示についても、最終的にはオンラインを中心とした内容にした。
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