日本はメタバースを国家戦略として取り組むべき--クラスター加藤代表が語る展望 - (page 3)

佐藤和也 (編集部)2022年01月03日 10時30分

NFT×メタバースは、セカンドライフの盛り上がりに近い

――先ほどメタバースの言葉が広まったことにNFTの存在も挙げてましたけど、加藤さんはNFTについて、どのように感じてますか。

 僕自身、ブロックチェーンの技術には以前から関心を持っていて、動向も追っていました。ビットコインの盛り上がり、ICOの盛り上がりがあって、ICOよりももっと楽にお金を動かすことができるということで、NFTに着目が集まっていると思います。

 僕の考えとして、NFTはクリエーターエコシステムの文脈と相性がいいととらえています。「WIRED」の創刊編集長であるケヴィン・ケリーが「1,000 True Fans」と題して、自分に対してしっかりと応援してくれる忠実なファンが1000人いればと生きていけるということを言っていたのですね。コミュニティがあって売買があるという世界観のなかで、NFTは相性がいいとは思います。

 ブロックチェーンの技術がメタバースに使われるということ自体は模索していたけど、エントリーの仕方はわからなかった。「Decentraland」が出てきたときに、ブロックチェーンとVRプラットフォームという新しいものの掛け算で、正直怪しげに見ていたのです。でも、そのなかでNFTの盛り上がりをいい感じにとりこむことができたと。その土地自体に価格がついてNFTで売買され、そこでの建築物や売買されているアイテムもNFT化されてます。

 面白いと思っているのは、NFT×メタバースの盛り上がりは、セカンドライフの盛り上がりに近いと感じていて。セカンドライフも、2006~2007年のころに土地やアイテムの売買で儲けようという方が入ってきて、個人でもかせぐ人たちがいた。それに酷似しているんですよね。

 バーチャル空間の住人というぐらいに親しんでいる人たちのメタバースコミュニティと、NFTを中心としたメタバースコミュニティに差があるのは面白いところでもあります。ブロックチェーンやNFTから出てきたメタバースサービスは、住んでる人と興味のある人が分かれているような気がします。NFT主体のメタバースコミュニティと、バーチャルの住人たちが、いつか交じり合うのかどうかはわからないですけど、だいぶコミュニティが違うので、しばらくはそれぞれが独自に発展していくのかなと。

――イメージですけど、現実でも趣味の延長にあるようなコミュニティと、金銭が表立って絡んでくるコミュニティでは、壁のようなものが存在しているように思いますし、それがメタバースでも起こるということでしょうか。

 いくつかNFTのアバターを販売している有名な会社が、日本発のアバターフォーマットであるVRMに対応したこともあり、そのアバターをclusterに持ち込んで、イベントをやったりしている人たちが出てきました。アバターを介してお互いの世界がクロスし始めているところはあると思いますけど、僕個人としては、すぐに交じり合うようなことにはならないかなと。

 ただ将来的な展望として、ひとつのメタバースになるのか、あるいは複数のメタバースが存在しつつ、双方向で行きかうのかなど、その議論もありますけど、個人的な見方としては、少数のメタバースプラットフォームが残っていくのではないかなと。

 コミュニティがあって、そこにエコシステムとしてお金が動くことが大事なので、ある程度規模がないと、メタバースに住むクリエイターや住民たちは利益を享受できません。動画やSNSのプラットフォームに近しい構造のマーケットシェアになるのではないかなと。たくさんのメタバースがいくつも存在していることは想像しにくく、大きなところがあって、2番手以降小さく存在して、多くても4から5ぐらいのプラットフォームにまとまっていくのかなと推察しています。

 また、アバターにおけるフォーマットは統一されていくのではないかなとは思います。動画にフォーマットがあるように、アバターフォーマットがあると開発するのも利用するのも楽ですし、横ぐしとなるものはそろっていって、その上に載る形のコンテンツやカルチャーは違うものができてという風に、プラットフォームがそれぞれに発展していくのではないかなと感じてます。

日本は国家戦略としてゲーム業界を巻き込んで進めていくべき

――メタバース領域のなかで、clusterはどのように勝負していくのでしょうか。

clusterのロビールーム
clusterのロビールーム

 まず、Metaは毎年1兆円規模をメタバースに投資すると言ってますし、その宣言した時点でメタバースが大きくなっていくのは必然です。お金やプレーヤーが流れ込む道筋が示されていますから。さらにほかの海外企業は時価総額で何兆円もついているものや、さらにメタバースやVRのSNSに取り組むスタートアップで、100億円規模のファイナンスをするようなところも出てきてます。

 一方で、日本ならではのよさは、カルチャー、コンテンツ、IPですね。ポケモンなどさまざまなコラボをやりましたけど、やはり日本の会社で、日本のIPとの付き合い方がわかるからコラボができます。集客もききますし、海外に打って出るには大きな武器にはなる。それらを活用したイベントなどが、今のところのclusterとして発展していく道になるのかなと。

 VTuberのカルチャーが生まれて盛り上がったのが日本からだというのは歴史や文化の賜物だし、非常に大きい意味があると思っていて。そして日本には漫画やアニメのカルチャーがあり、ゲームにおいてもアバターに親しんでいて、親和性が高い状況がある。日本発でメタバース業界を盛り上げていくことを考えると、重要なことだととらえてます。

――日本は、メタバースの領域で存在感を出せるのでしょうか。

 少なくとも、強みを出せる要素はあります。キーポイントは、ソーシャルゲームで培われたエンジニアやデザイナーの人材にあると考えます。ソーシャルゲームというのは、ゲームエンジンを活用して、キャラクターを生み出し、世界観を構築してゲームとしての体験を提供するものですよね。このアセットというのはメタバース構築にも通じるもので、とても重要です。そして、日本において2010年代の優秀な人材は、こぞってソーシャルゲームに携わってます。

 一方で、欧米ではアプリを作るための培われてきていたエンジニアが携わると思うのですけど、メタバース領域で活躍しにくい状況が発生すると見ています。スマートフォンででグローバルなサービスがさまざま展開されてますけど、ゲームを作る技術アセットと、アプリを作る技術アセットは別ですので。

 日本のソーシャルゲーム領域で活躍していた優秀なエンジニア、デザイナー、プランナーは技術的にドンピシャで、即活躍できます。そして日本はゲームカルチャーが強い国ですので、アバター文化とも相性がいい。国を挙げてメタバースに取り組むぐらいの方針でやったほうが、これから日本が輝いていくために重要ですし、国家戦略としてゲーム業界を巻き込んで進めていくべきというぐらいに考えてます。

――日本では、「ファイナルファンタジーXIV」「ファンタシースターオンライン2」(PSO2)、「ドラゴンクエストX オンライン」といったMMORPGの国産タイトルがあり、新型コロナの流行下では「あつまれ どうぶつの森」を通じての交流も話題になりました。オンラインでのアバター交流文化がすでにあるのも、メタバースと相性がいいように思います。

 確かに。そこに何十万人というプレーヤーが生活するように滞在して楽しんでいる状況もありますし、その状況をメタバースと呼ぶ方もいらっしゃいます。

 既存のMMORPGとメタバースで、ひとつ違う視点を挙げるとするなら、自己組織化があると思います。ひとりひとりのプレーヤーが全体を見渡すことができないですけど、自分がやりたいことをやっていると、自然と全体で調和ができている。そして自発的に発展して進化していく構造こそが、僕はメタバースだと思ってます。

 3Dで世界が構成されていて、アバターで交流ができてコンテンツが楽しめるというだけでメタバースというならMMORPGもそうなんですけど、そこに自己組織化、そしてその世界を作っていくクリエーターのカルチャーがあるかどうかが、メタバースのキモであると。クリエーターのカルチャーが存在して、クリエーターがその世界を作って、今まで考えもしなかったような世界が生まれていくことがメタバースの本質的な価値です。

 既存のMMORPGは、テーマとストーリーが決まっていて、コンテンツも用意されたものとなってます。ほかにも、MMORPGで仲良くなった方がその空間で結婚して、それがリアルでも結婚するということも、もう珍しいことではなく当たり前のようになってます。つまり、開発や運営側が思う予測の範囲内のことしか生まれてない空間と言えるんです。その予測を超えて世界が広がっていくというのが、これからのメタバースで起こることだと感じてます。

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