「会話型AIテクノロジーの研究は始まったばかりだ」とVlahos氏は認める。今後はインタビュアー役のボットをさらに改善し、会話の細かいニュアンスまで理解できるようにするという。「しかし一方通行ではなく、あくまでもギブアンドテイクが基本だ」
HereAfter AIは故人と交流する機能だけでなく、遺族が故人の思い出を整理する方法も提供してくれる。
このサービスのデモを見ながら、私は父が何十年も前に作った1本のカセットテープのことを思い出した。内容は、父の母親(私にとっては祖母)がロシアのミンスクで過ごした子供時代の話だった。祖母が今も生きていれば、ぼろぼろになったテープに吹き込まれた物語はHereAfter AIにきちんとテーマ別に記録され、いつでも簡単にアクセスできるようになっていただろう。
父の声を記録しておけば、私も父の声をもっと気軽に聞くことができていたかもしれない。私のスマートフォンには今も、父が私の誕生日に残してくれた2件のボイスメールが残っているが、父の死から3年以上がたった今も聞く勇気が出ない。いずれ父のしわがれた温かい笑い声が、悲しみよりも慰めをもたらしてくれる日が来るのだろうか。
「いつでも父の声を聞けると思うと気持ちが安らぐ」とVlahos氏は語る。「他の方法では、父の存在をこれほど身近に感じることはできなかっただろう」
オーストラリアで、悲嘆に暮れる人々のメンタルヘルスの回復を専門としているAmanda Lambros氏は、外部の専門家としてこのサービスについて「悲しみの最中にある時もその後も人々が利用できる、素晴らしい試み」と表現した。
Lambros氏によると、このサービスの1つの欠点は、生前に伝えられなかった情報が見つかる可能性があり、それが混乱や怒りにつながりかねないことだという。
Vlahos氏によると、この記事の執筆時点で、HereAfter AIには数百人のユーザーがいるという。その1人であるSmita Shahさんは、92歳の父親と86歳の母親から聞いたさまざまな興味深い話を保存するため、同サービスに登録した。Shahさんはすでに、現実の両親とリアルタイムで話せないときに、HereAfter AIを使って両親と「会話」している。
「両親はインドに住んでおり、私はカナダに住んでいて時差があるが、いつでも両親と話ができる。次の世代にも、自身のルーツとなる謙虚な人柄を記憶していてほしい」とShahさんは語った。
HereAfter AIは必ずしも悲しみを和らげたり、愛する故人の代わりになったりするものではない。しかし、故人と、故人を悼む人や故人に会ったことがない人を結びつけることができるのだとVlahos氏は語った。
「死への恐れの1つは、その人がいなくなり、記憶が薄れ、すべてが色あせてセピア色になり曖昧になることだ」とVlahos氏は語った。「こうしたAI遺産技術は、死の痛みを和らげはしない。これが実現するのは、記憶に留めておくための、はるかに豊かで鮮明かつインタラクティブな方法を提供することだ」
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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