有名シェフのAnthony Bourdain氏を取り上げた新しいドキュメンタリー映画「Roadrunner:A Film About Anthony Bourdain」について、The New Yorkerがレビューを掲載したが、レビューの最後の方に書かれた1つの逸話が注目されている。米国時間7月15日に公開された同記事で、Helen Rosner記者は、Bourdain氏の友人でアーティストのDavid Choe氏がBourdain氏からの電子メールを読む場面について説明している。Bourdain氏は旅行番組の制作もしていた著名人だが2018年に自殺した。
このシーンでは、Choe氏の声からBourdain氏の声に変わり、「そして、今私の人生は少し惨めなものだ。君も成功を収めているし僕も成功を収めている。それでも僕は思うんだ。君は幸せなのかな?」と語る。Rosner記者は同作品を制作したMorgan Neville監督に、Bourdain氏が電子メールを読む声の録音をどうやって見つけたのか尋ねた。Neville氏は「彼の声を使いたかったけれども録音されたものがないセリフが3カ所あった」と答えたという。Neville氏はソフトウェア企業におよそ12時間分の録音素材を渡し、「Bourdain氏の声の人工知能(AI)モデルを作った」とのこと。
この判断の背後にある倫理観について、不安を感じる人もいる。The Washington PostのDave Weigel記者はこのやり取りのスクリーンショットを添え、「私は嫌いだ」とツイートした。
thanks I hate it https://t.co/xuRftW7p4y pic.twitter.com/f08wHXuroE
— Dave Weigel (@daveweigel) July 15, 2021
新しい技術を使えばディープフェイクなどの人工的なメディアを通じて現実を簡単に歪めることができる。同ドキュメンタリーでは、Bourdain氏ならAIの利用を認めたかどうかという疑問も残る。
Neville氏はRosner記者にこう語っている。「この映画を見ても、さっき言った(電子メールの)場面以外にAIがしゃべっている箇所にはおそらく気付かないだろうし、今後も気付かないだろう。これに関しては、後でドキュメンタリーの倫理について議論の場を作ってもいい」
Neville氏はGQが13日に公開した記事で、「問題がないことを確かめるため、夫人と遺作管理者に確認を取った。Tony(Bourdain氏)だったら問題にしないだろうという感じだった。私は彼の言葉を作り出したわけではなく、それらを生き生きと表現しようとしただけだ」と述べている。
Ottavia Bourdain夫人は16日、この発言に反論し、「Tonyだったら問題にしないだろうと言ったのは、明らかに私ではない」とツイートした。
I certainly was NOT the one who said Tony would have been cool with that. https://t.co/CypDvc1sBP
— Ottavia (@OttaviaBourdain) July 16, 2021
「Roadrunner:A Film About Anthony Bourdain」は16日から米国で劇場公開されている。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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