Appleの最高経営責任者(CEO)であるTim Cook氏は、世界で最も価値のある企業の1つを指揮しているだけではない。Donald Trump前米大統領など世界のリーダーたちと関係を築く、熟練の政治家に匹敵する存在にもなっている。米国時間12月7日に掲載された新たな記事によると、Cook氏は中国当局との交渉により、Appleが5年間で少なくとも2750億ドル(約31兆2000億円)を投資することを2016年に合意していたという。
The Informationは、Cook氏が中国政府と交わした合意について報じ、これによりAppleは2016年以降、中国での事業の大部分を拡大できたとしている。公表されていなかったこの合意の中で、Appleは「投資、事業取引、労働者の研修を通じて、中国の経済と技術力を発展させるための役割を担う」ことを約束していた。記事によると、中国当局はかつて、Appleが「地域経済に十分に貢献していない」と考えていたといい、そのことが合意の背景にあったとしている。
2750億ドルのうち、Appleが中国で行っている研究開発、製造、顧客サポート、物流などの事業にかかる費用がどの程度なのかは不明だが、この数字は、Appleがいかに大きな事業を行っているかを改めて思い知らせるものだ。たとえば2020年、Appleは世界各地での研究開発に約220億ドル(約2兆5000億円)、営業費用に約440億ドル(約5兆円)を費やした。Appleは、これらの費用の増加の多くは、スタッフへの支払いに関連していると述べている。Appleの広報担当者はこれまでコメントの依頼に応じていない。
Appleの事業は中国に大きく依存している。「iPhone」「iPad」「Mac」の部品の多くは中国で製造されている。製品の組み立ても、鴻海科技集団(Foxconn)など中国の受託製造業者に大きく依存している。一方、2020年の地域別の市場規模でみると、中国はAppleにとって3番目に大きな市場であり、Appleの年間売上高の約19%に相当する680億ドル(約7兆7000億円)を占めている。欧州は890億ドル(約10兆円)、南北アメリカは1530億ドル(約17兆4000億円)と、より大きな市場となっている。
そのため、Appleと中国政府との関係は長年にわたり注視されてきた。Appleは中国での事業継続を確実にするために、中国のユーザーに対するプライバシー保護を弱めたと伝えられている。また、中国の低賃金労働者を教育する取り組みや、配車サービス大手の滴滴出行(Didi Chuxing)への投資などをアピールしてきた。The Informationの記事によると、これらの動きの一部は、同国の政府関係者に自社の価値を示そうとするものだという。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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