SNSが摂食障害を拡散--問われるInstagramとTikTokの責任 - (page 2)

Abrar Al-Heeti (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2021年12月10日 07時30分

 摂食障害とボディイメージの問題は、コロナ禍でさらに顕著になっている、とEngeln氏は話している。ペンシルべニア大学が11月に発表した研究によると、米国では摂食障害で入院した患者の数がコロナ禍で倍増したという。もともと摂食障害を患っていた人の場合、コロナ禍でさらに症状が悪化したという研究報告もある。

 コロナ禍でのロックダウンは、社会的な支援や規則的な日常を急速に崩壊させただけでなく、人々の食事習慣や運動習慣も大きく変えた。屋内で過ごす時間が増え、誰もがスマートフォンを見る時間が増えた、とEngeln氏は語る。

 「ぎりぎりのところで摂食障害にならずにいた人にとっても、コロナ禍が最後の藁になった場合もあるかもしれない」(Engeln氏)

アルゴリズムの力

 TikTokやInstagramなどのサイトで使われているアルゴリズムが、否定的なボディイメージを悪化させる重要な要因になっている可能性がある、と専門家は考えている。例えば、自分の体重に悩んでいる人は、とかく減量に関する情報を探しがちになる。それを受けて、プラットフォーム側はそのような情報がさらに求められていると判定する。その結果、フィード欄は不安を煽るような有害な投稿であふれることになるのだ。

 「こうしたアルゴリズムは、ひたすら最適化を目指すが、その最適化が必ずしも人の幸福につながるとは限らない」。コミュニケーション学の教授であり、Stanford Social Media Labを創設し、その所長も務めているJeff Hancock氏はこう語っている。「最適化の目的は、あくまでも企業が利益を創出することにある。そして、それは通常、広告の効果を向上させるために、エンゲージメントと注目を増やすことが中心となる」

 Elisa Aas氏は、過食症とオルトレキシア(健康に良いとされる食品に、不健康なまでに固執する症状)を2014年に克服し、現在は摂食障害を抱える人々に向けたコーチングを営むようになった。@followtheintuitionという、フォロワー数8000人を超えるInstagramアカウントを使って、同じような悩みを抱えているユーザーに向けたヒントやレッスンを公開している。Aas氏によると、ソーシャルメディアには、摂食障害に苦しむ人々が真に必要としているサポートやリソースを探す助けになる面もあるという。だがその一方で、自分と他人を比べないようにするのは困難であり、ダイエット関連の有害なコンテンツを見つけるまで延々とスクロールしがちになって、ますます気持ちを落ち込ませたりすることもある。

 「どんなに気をつけていても、人はついつい他人との比較にはまってしまう。回復のためのコンテンツがきっかけになってしまうこともある。そこにも比較の図式はたくさんあるからだ」(Aas氏)

 ソーシャルメディア企業も、摂食障害などに苦しむ人々を支援するための手段は講じていると話している。TikTokのある担当者は、米CNETにこう語った。「われわれは、TikTokユーザーの幸福を支えるために包括的なアプローチをとっている。スクリーンタイムのリマインダー機能や、視聴の好みを管理する設定もそうだし、摂食障害や自傷についてはプラットフォームの随所から専門家にアクセスできるようになっている。われわれは、健康に関する自分の経験を共有してくれた人に対して、支援環境を発展させようと取り組んでいる。また、コミュニティーガイドラインに反して過食や拒食を正当化あるいは称賛するようなコンテンツを削除するよう努めている」

 TikTokは、ニュースルームページで「limiting unwanted content(望まないコンテンツの制限)」という記事を公開している。見たくない動画は、その上で長押しして「興味ありません」というボタンを押せば、「今後同じような内容の動画の表示が減ります」と表示されて再生されなくなるという。

 Instagramの場合、「発見」ページで投稿の右上隅にある「…」メニューをタップして「興味なし」を選択し、見たくないコンテンツにフラグを指定することもできる。Instagramは、自殺に関する告白やそうした行為からの回復、自傷、摂食障害に関するコンテンツを禁止も削除もしていないが、その代わり、そうしたコンテンツをユーザーにおすすめとして表示することもしていない。2021年に入ってから、Instagramは「不適切なコンテンツをコントロール」という機能をリリースし、そのようなコンテンツを「発見」ページでどのくらい表示するか細かく管理できるようになった。

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