内部文書で、Facebookは「体型コンプレックスに関しては、以前からマスメディアが批判の対象になってきた」と述べ、現在のソーシャルメディアがどんな影響を持ちうるか検証しているところだと書いている。従来のメディアにも理想的な体型というイメージはあふれているが、ソーシャルメディアならではの落とし穴は、有名人やインフルエンサーだけでなく、身近な人と自分とを比較してしまうところにある、とHancock氏は言う。コンテンツを投稿した人が身近であれば、現実と非現実を区別するのが難しくなるのだ。
映画やテレビ、雑誌に登場する有名人と自分たちとの間には距離がある、とEngeln氏は指摘する。そういう世界の中で見るものが現実でないことは、大抵十分に理解できる。俳優やモデルは、見知った人ではないからだ。ところが、オンラインのコンテンツとなると、違う見方をしてしまうことも多い。
「ソーシャルメディアが果たす強力な効果の1つとして、ある種のライフスタイルや見掛けが、実際よりも身近であるような印象を与えるというものがある。完璧に見える有名人(それはまやかしだとわれわれが気付くようになった)以外のものも見ることができるようになったからだ」、とEngeln氏は話す。「身近な人が、完璧な形になり、編集や加工が施されたイメージを目にするようになった。そちらの方がリアルに感じられるのだ」
こうした問題の解決方法は、まだ定まっていない。TikTokの影響を把握できる十分なデータを研究者はまだ手に入れられていない、とEngeln氏は言う。アプリのアルゴリズムは、一人ひとりの興味に応じてユーザーごとにさまざまな情報を提供しており、それも研究を難しくしている。こうした特徴は、どんな変化が必要かを見極めるのも難しくしてしまうのだ。
「われわれ、つまりユーザー、投稿者、作成者側が習慣を変えるしかない。それか、離れるしかないだろう。ソーシャルメディア企業に、ユーザーのメンタルヘルスを守ってくれと頼ることはできないからだ。それは、企業の役目ではない」(Engeln氏)
内部文書で、Instagramは体型コンプレックスを緩和する方法について、提案をいくつか挙げている。これは「以前の研究で出されたものだが、具体的な調査結果の裏付けがあるわけではない」という。例えば、ユーザーがアカウントを作成する際に、「Instagram上の画像は編集されている場合が多い」という開示情報を示す、という案がある。また、「体型コンプレックスを誘発するようなコンテンツを見ないようにすることが難しい以上、ソーシャルメディアを利用する時間やスクリータイムそのものを減らすのが最善だと結論した研究もある」ことを示す案もあった。
摂食障害で入院している患者の治療に当たっているNagata氏が患者に勧めているのも、まさにこの考え方だ。通知をオフにする、就寝前はソーシャルメディアを利用しない、就寝中はスマートフォンを遠ざけておく、といったことを同氏は提案している。それでもなお、有害な投稿を管理することと、調査結果や、コンテンツを薦めるアルゴリズムについて透明性を保つことに関しては、企業側に大部分の責任がある、とNagata氏は指摘する。
「ソーシャルメディアとボディイメージの問題については、意識の向上も見られるが、問題改善のためには、ソーシャルメディア企業や政府規制によるもっと大きな変化が必要だ」(Nagata氏)
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
すべての業務を革新する
NPUを搭載したレノボAIパソコンの実力
日本のインターステラテクノロジズが挑む
「世界初」の衛星通信ビジネス
NTT Comのオープンイノベーション
「ExTorch」5年間の軌跡
先端分野に挑み続けるセックが語る
チャレンジする企業風土と人材のつくり方
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力