NTT西日本とNTTドコモの関西支社は11月17日、災害時における通信サービスなどの早期復旧を想定した合同防災訓練を関連企業や機関らと実施し、報道陣に公開した。
合同防災訓練は今後想定される南海トラフ大地震をはじめ、台風や集中豪雨といったさまざまな災害を想定し、被災した電力や通信サービスをそれぞれが装備する機材でどのように復旧するのか、互いに知ることを目的としている。毎年11月頃に実施され、過去には自衛隊や海上保安庁が参加してヘリコプターを出動させるといった大規模な訓練も行われていた。2020年はコロナの影響で非公開だったが、7回目となる今回は規模を縮小し、NTT西日本、NTTドコモ、NTTコミュニケーションズ、関西電力グループ(関電)、関西広域連合(自治体)から100人以上が参加した。
開会のあいさつでNTTドコモ 関西支社 ネットワーク部長の西島英記氏は「関西のみならず全国で災害が増えており、日頃の訓練だけでなくいざという時に連携が図れる関係を築くため、合同訓練で実動の様子を知っておく必要が高まっている」と述べた。例えば今回は新しく導入されたドローンや高圧移動電源車などが披露され、どのようなシーンで活用できるのかが確認された。
訓練は大阪府堺市の近畿圏臨海防災センターに近い広場を使い、大きく3つのゾーンに分けてそれぞれ異なるシナリオにあわせて実施された。電柱の倒壊や倒木による長期不通状態への対応を想定したゾーンでは、NTTドコモがドローンを飛ばして現地の被災状況を映像で確認し、自治体が道路を開通した後に、NTT西日本と関電が電力と電線の復旧を行う。車で持ってきた電柱を実際に建て替え、電線をつなぐ作業では、被害確認に使ったドローンで離れた場所に光ケーブルを運び、開通する様子も公開された。
電柱の建て替えが難しい場合に使用する衛星エントランス搭載型移動基地局は、ワンボックスカーに必要な機材が積み込まれており、普通免許で運転できる。屋根の上に搭載したアンテナと衛星パラボラはほぼ自動でセッティングでき、2人だけで設営できるようにしている。さらに、電波が届きにくい山間部などで使用する有線のドローン中継局は今回初めて公開された。機体はNTT e-Drone Technologyが開発し、ドローンが増幅した電波を使って上空からサービスを復旧するもので、最大で約100メートルの高度まで飛ばせる。
2つ目のゾーンでは土砂崩れなどによる電力、通信、交通アクセスのいずれもが遮断され、孤立した地域に公衆電話とWi-Fiを設営する。アンテナなどの各種機材は自衛隊のヘリコプターで現地に運び込むことを想定し、背負って運べるサイズにしており、過般型衛星エントランス基地局はパーツに分けられたパラボラを現地でを組み立てる。いずれもセッティングの時間はそれほどかからず、ポータブル電源を使って動かしていた。
3つ目のゾーンは都市部で、停電した通信ビルの電源を復旧するシミュレーションが行われた。通信ビルの消費電力が大きいため、1台あたり2000kVAの発電が可能な高圧移動電源車を2台連携して給電を行うことを想定し、一連の流れが確認された。
今回印象的だったのはドローンの活用で、NTTドコモでは災害対策以外にも点検などの用途で各支店にドローンの配置を進めているという。保守点検のスタッフがドローンの免許を取得し、運用しているが、航空法の規制があるため災害時といえども、いつでもどこでも使用できるというわけではないようだ。ただし、ドローンの運用に関する規制は来年緩和する動きがあり、ドローンの性能向上とあわせてこれから活用する機会が増えるかもしれない。
ひと通りの訓練が終了した後、使用された機材を見学する時間が設けられ、担当者からの説明を聞いたり参加者同士で熱心に情報交換しあったりしていた。NTT西日本 関西支店長の小川成子氏が「それぞれの機器運用や基本手順を全て無事に確認できた。全国で災害が増えており、災害復旧に向けた連携をさらに強めていきたい」と述べ、訓練を締め括った。
関西でも小さな規模だが地震が続いており、季節外れの大雨や気候変動に対する備えも求められている。災害時の重要なインフラとなる通信環境をどのようにして維持するのか。訓練の成果が万が一の場合の迅速な対応につながることが期待される。
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