ウォンテッドリー流チームのモチベーションを生み出す実践手法 - (page 2)

川口かおり (ウォンテッドリー 執行役員)2021年11月30日 15時00分

共感・自律を加速させる

 共感・自律を加速させるためのミッション・ビジョン・バリュー浸透について2つの取組みを紹介しよう。

 まずは「組織の歯磨き」と呼んでいる、CEO主催の週一のCulture Lunch。参加者は少人数でCEO+3名ほど。1時間のランチ中で、ミッションとはなにか、それはどんな定義化、ビジョンはなにか、そのためのアプローチはなにか、といった組織カルチャーのベースの部分から、今注力していることについてCEOとメンバーが対話形式で話を進める。参加者が疑問に思ったこと、思っていることを率直にぶつけるような会となっている。これは創業期から継続して行ってきているもので、新型コロナが流行してから、オンライン開催に切り替えて継続させている。

Culture Lunch
Culture Lunch

 次は毎年更新して発行しているCulture Book。70ページ以上に渡り、Wantedlyのミッションの詳細や、どのようなバリュー(行動指針)を大事にしているのかといった内容について、詳細に綴られている。明確なイメージを抱きやすい表現があればそれを取り入れたり、会社としての活動記録が記載された年表を更新したりと、常に内容はアップデートされ続けている。表紙デザインは例年Wantedlyのデザインチームが丹精を込めて手掛け、手元においておきたくなるようなものにしている。社内浸透の他に、選考過程で候補者の方にお渡しし、より会社のカルチャーについて認識のギャップが生まれないようにするといった工夫も凝らしている。

Culture Book
Culture Book

挑戦

 OKR(Object & Key Result)と呼ばれる、インテルが初めて導入した目標管理手法を、ウォンテッドリーでは取り入れている。OKRを簡単に説明すると、ムーンショットと言われる「これが達成できたら本当にすごい」と思うような目標(Objective)を掲げ、それの実現度合いを示す重要指標(Key Result)を設定し、週1~月1程度の高頻度で進捗を確認していくというものだ。

 目標設定期間が終了したタイミングで、達成率が60~70%だと適切といった形だ。100%だと目標設定が低いという話になる。リーダーが設定したOKRに紐付ける形で、各メンバーがOKRを設定していくのだが、このOKRの設定もメンバー自ら行うことで自律性を担保し、ムーンショットと感じられる適切なハードル設定をリーダーと相談しながら行うことで、挑戦という面もカバーする。

フローを作るために、Moon shotを目指すOKR
フローを作るために、Moon shotを目指すOKR

 OKRは期初に設定して、期末に思い出す……では効果が薄い。ウォンテッドリーが実践しているなかで見出した理想的な運用方法は、週次のリーダーとの1on1ミーティングでOKRの進捗を確認していき、今最も挑戦だと感じていることや、助けが必要なことなどをすり合わせしていくというものだ。常にOKRを意識する仕組みを取り入れることで、自然と挑戦している感覚を継続させる。年間のOKR設定をする組織もあるが、変化が激しい状況なのでOKRが形骸化しないためにも、四半期ごとにOKRを設定するというサイクルを採用している。

自律・共感・挑戦を高めるために

 最後に紹介するのはPeople & Cultureチームの存在。人事業務のなかでも、“育成・研修”と“組織開発”をスコープとしている。夢中になって仕事がする人であふれた組織を作るための、自律・共感・挑戦を支援する少人数のチームとなっている。コロナ禍に入ってから発足したチームで、手始めとしてコミュニケーションの活性化を目的として、仕事以外の趣味のやりとりをするSlackチャンネルを整備したり、組織図を常に最新版にする取り組みを行ったりと、上記の取り組みでカバーしきれない部分に着目。夢中になる組織作りを支えるチームだ。メンバーは各チームから有志で集まっており、常に改善点に目を光らせている。

 外発的動機づけから内発的動機づけに、モチベーションの源泉をアップデートしなくてはならない時代のなかに我々はある。そして内発的動機づけのためには自律・共感・挑戦の3要素が重要だ。これから働き方が変わろうとも、モチベーションが重要という部分は普遍的だと思われる。

 一気に会社のカルチャーを変えることは非常に労力がかかることなので、まずはこのモチベーションの考え方について同僚と話してみたり、部下へ仕事を渡すときのコミュニケーションの仕方を変えたりと、スモールスタートで少しずつ試していって貰えると嬉しい。自律・共感・挑戦、始めやすいところからで構わない。もちろん、あなたに強制することはしないし、強制することはそもそもできない。大事なのはあなたが「自分で決定する」ことから始めること。本稿が「シゴトでココロオドルひとをふやす」ことにつながることを祈る。

川口かおり

ウォンテッドリー株式会社 執行役員

早稲田大学卒業後、オリンピック選手のマネジメントに従事、その後、2007年リクルートエージェント(現リクルートキャリア)に入社。人材紹介事業で9年間、大手総合商社、大手消費財メーカー、大手広告会社など多くの日本を代表する企業の中途採用を支援。その後グローバル・ハイキャリア領域の事業開発にマネージャーとして携わり、多くの企業の採用課題と向き合う。テクノロジーでもっと適材適所を生み出したいと考え、2017年10月にウォンテッドリー株式会社に入社。自身も採用にコミットし、組織を1年半で3倍にすることに成功。

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