シャープ戴CEOが語る「キャッシュフロー重視の経営」--全社一丸で事業拡大へ

 シャープ 会長執行役員兼CEOの戴正呉氏は、11月18日、社内イントラネットを通じて、CEOメッセージを配信した。

 8月12日以来、約3カ月ぶりとなった今回の配信では、「“キャッシュフロー重視の経営”を実践し、財務基盤強化を加速しよう」と題し、最初に、11月4日に発表した2021年度第2四半期決算に触れた。

 戴会長兼CEOは「上期累計業績は、売上高、利益ともに前年同期を上回り、最終利益は前年同期比1.8倍の大幅増益となった。第2四半期は、半導体隘路(あいろ)や物流混乱の影響が拡大したのに加えて、ASEANにおける新型コロナウイルスの感染再拡大によって、販売や生産が落ち込んだ結果、売上高は前年同期比で減収となった。一方、利益については、これまで進めてきた収益力強化の取り組みが功を奏し、原材料価格の高騰が継続するなかでも、ブランド事業、とくにスマートライフが堅実に利益を計上するとともに、ディスプレイデバイスの収益改善がさらに進展し、増益を確保することができた。加えて、フリーキャッシュフローを着実に創出するとともに、自己資本比率についても20%まで回復を遂げ、当面の目標である25%に向けて四半期ごとに改善が進んでいる」と総括した。

 その上で、「このような決算を受け、説明会の出席者からは、『スマートライフを中心に、外部環境悪化の影響をしっかりと抑え込んでおり、ブランド企業として確かに歩みを進めている印象を受けた』、『コロナ禍や半導体不足のなかにあっても、財務基盤強化が着実に進展している』など、前向きな評価がある一方で、『厳しい事業環境のなかで健闘してはいるものの、業績の減速感が強まってきており、年間公表値達成のハードルが上がっている印象』など、今後の見通しについて厳しい見方もあった」と指摘した。

 「下期の事業環境は、半導体価格の上昇がピークを過ぎつつあることに加え、日本でもコロナ感染の沈静化に伴い、経済活動の正常化が進展するなど、前向きな変化が見られる。だが、足元では、コロナ感染者数が、欧州などで再び拡大に転じており、日本においても第6波のリスクが残るなど、依然として不透明感が拭えない。また、原材料価格の高騰やサプライチェーンの混乱は、しばらく続く見通しであり、今後も厳しい事業環境が続くことを覚悟しておかなくてはいけない」と手綱を締めた。そして、「シャープの最重要経営課題は、財務基盤の強化であり、売上げ、利益の拡大を目指す一方で、環境変化にも常に目を配り、在庫の適正化や経費削減、投資の効率化など、よりきめ細かな経営管理を行う“キャッシュフロー重視の経営”を実践していくことが肝要である。下期は、社員全員がこうした意識をより高く持ち、さらなる業績改善に邁進してほしい」と述べた。

 また、戴会長兼CEOは、10月に全事業本部長と議論を重ねて、年間公表値の達成に向けた下期経営計画を再確認したことを報告。「各本部では、計画をブレイクダウンし、具体的なアクションにつなげてくれていると思う。一人ひとりが目標達成に執念をもって取り組み、全社一丸となってがんばろう」と呼びかけた。

AQUOSは、XLED、OLED、液晶、8K/4K/2Kと、業界随一のラインアップを誇る

 2つめのテーマは、10月26日に発表した「AQUOS XLED」についてだ。AQUOS XLEDは、シャープのテレビ製品のフラッグシップとなる新ブランドであり、日本の製品ブランドでは、初めてmini LEDバックライトを搭載。従来の液晶テレビの強みである「白の輝き」と、有機ELテレビの強みである「黒の締まり」の両方を実現した点が特徴だ。

 実際にAQUOS XLEDを見たメディア関係者からは、「一目でその美しさに目を奪われるテレビだ」、「シャープの高い技術力を感じた」、「シャープが先頭に立って次世代テレビ市場を切り拓いてほしい」といった高い評価が集まったことを示したほか、国内最大級のオーディオビジュアル機器の総合アワード「VGP2022」で、「総合金賞」を受賞したことを報告した。

「AQUOS XLED」シリーズ
「AQUOS XLED」シリーズ

 戴会長兼CEOは、「AQUOSは、XLED、OLED、液晶、8K/4K/2Kと、業界随一の幅広いラインアップで展開し、顧客の多様なニーズに応えることで、日本国内はもとより、欧州、中国、ASEAN、そして米国においても、さらなる販売拡大を実現していく考えである。関係部門の一層の奮起を期待している」とはっぱをかけた。

 10月19日から4日間に渡ってオンラインで開催されたCEATEC 2021 ONLINEについても報告した。

 シャープは、Smart HomeやSmart Office、Entertainment、Healthcareなど、8つの重点事業分野から、10種類のソリューション提案を実施。全出展者のなかで最も多い来場者数となり、高い注目を集めたという。

 「出展した耳あな型補聴器の「メディカルリスニングプラグ」は、医療機器認証を取得したリーズナブルな補聴器でありながら、一見、補聴器とは見えないワイヤレスイヤホンのようなスタイルが特徴で、潜在的な難聴者を救い『健聴寿命』の延伸に貢献する製品であると、主催者から高く評価され、CEATEC AWARD 2021 要素技術・デバイス部門 グランプリを受賞した。このほかにも、重点8事業分野の取り組みは、さまざまなアワードを受賞するなど、各方面から高く評価されている」と成果を強調。「今後も、こうした取り組みをグローバルで加速し、社会課題の解決に貢献することで、シャープブランドの価値向上を実現していく」と語った。

ワイヤレスイヤホンスタイルの「メディカルリスニングプラグ」<MH-L1-B>
ワイヤレスイヤホンスタイルの「メディカルリスニングプラグ」<MH-L1-B>
主な受賞
主な受賞

 11月1日付で、AIoTクラウドの新社長として、石黒豊氏を迎えたことにも言及した。同氏は、日本DEC、日本オラクル、日本マイクロソフトを経たほか、LINE WORKSを展開するワークスモバイルジャパンで社長を務めていた。

 「石黒氏は、法人向けITサービス分野における豊富な経験を持ち、直近では、企業向けビジネスチャットやグループウェア事業を牽引してきた。11月20日には勉強会を開催し、石黒氏から、AIoTクラウドの今後の方向性などについて説明してもらう。幹部はもちろん、マネージャーも、積極的に参加してほしい」と述べた。

 最後に、11月11日に中国のEC業界最大のイベントである「双十一」において、シャープの大型ハイエンドテレビの販売が拡大したことを報告するとともに、来週末にブラックフライデーを迎えること、さらにはクリスマス商戦や年末年始商戦と、大型商戦が続くことに触れ、「各国において極めて重要な商戦期に入るが、年間公表値を達成するためには、この間にどれだけ前倒しで業績を積み上げられるかが鍵を握る。日本では、AQUOS XLEDの発売を記念したキャッシュバックキャンペーンを展開しており、12月10日の発売に合わせて、テレビコマーシャルも予定している。また、海外においても、各市場の特性に合わせたさまざまなプロモーション施策を展開していく予定である」とし、「こうした取り組みを、着実に成果につなげ、全社一丸となって、さらなる事業拡大を実現しよう」と呼びかけて、メッセージを締めくくった。

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