モビリティの発展も目覚ましい。自動運転技術の導入を牽引するのは、2017年にエスポーで誕生したスタートアップ「Sensible 4」だ。同社が強みとするのは、大雪や霧、凍った路面などの極端な悪天候でも安全な走行を実現する「全天候型の自動運転技術」。
同社は、無印良品を運営する良品計画にデザインを依頼し、2社の共創により自動運転バス「GACHA(ガチャ)」を開発。シンプルな北欧らしさと温かみを感じさせる丸みを帯びた車体、機能性にもこだわりがあり、Good Design Gold Award 2019を受賞している。
GACHAは、さまざまな実証実験を実施しているが、まだ実用化はしていない段階。「特定条件下において完全自動運転が可能」な自動運転技術レベル4を搭載しているが、現在のフィンランドの規制では、セーフティドライバーの同乗が求められるため、扱いとしてはレベル3になるはずだ。2021年6月には、Panasonic Industry Europeとの共同プロジェクトも発表され、レベル5の実現に向けて研究を開始するという。
Sensible 4の公式YouTubeでは、悪天候のなか自動運転で走る「GACHA」が見られる
首都ヘルシンキと同様に電動キックボードの利用も一般化しており、モビリティの選択肢は広い。電気自動車用の充電スポットの整備も見込まれていることから、近い将来、電気自動車が広く普及することも予想される。マイカーを除く電車、バス、タクシー、自転車、電動キックボードなど、あらゆる交通手段をシームレスにつなぐ概念「MaaS」も浸透している。
というのも、フィンランドは世界に先駆けてMaaSの概念を提唱した国であり、業界のパイオニアといわれるMaaS Globalが存在するためだ。同社が開発・販売するアプリ「Whim」は、ヘルシンキやエスポーの市民を中心に利用者が広がっている。
エスポーの中でも、持続可能なスマートシティのモデル地区として実証実験が進められているのがケラ地区だ。主に焦点を当てているのが、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の確立とノキアが主導する5Gの活用。ここでは、フィンランド国内で初の試みとなる5Gを使った「スマート街灯」を取り上げたい。
「Smart Pole(スマートポール)」と名付けられたこの街灯は実に多機能で、5G基地局、GPS、ビデオカメラ、環境モニターセンサー、サウンドシステム、アラーム、ディスプレイ、電気自動車用の充電ポイント、物体を検出するセンサー、ドローン充電・着陸ステーションなどを備える。
今回の実証実験では、ノキア本社の構内から近くのケラ駅までのルートをカバーしており、19本のスマートポールと250台の相互接続機器が導入されている。これにより、該当ルートのセキュリティ監視、交通量や道路状況のモニタリング、自動運転車の遠隔操作、交通・物流サービスなどへの活用が見込まれる。
環境、天候、交通、公共の安全、エネルギー使用などに関するオンラインデータも蓄積され、特定のニーズに応じて市や企業がデータを使用することも可能になる。同プロジェクトでは、さまざまなソースからの大量のデータを、信頼性の高い効率的な方法で処理できるデータプラットフォームも開発中とのこと。
スマート街灯を活用した「LuxTurrim5G」プロジェクトの概要は、上記のYouTubeがわかりやすかった
今回の取材を通して、よりエスポーの魅力を感じ、「住んでみたい」という思いが高まった。引き続き、スマートシティ・エスポーの発展を追っていきたい。
(サムネイル写真提供:Spinverse社、取材協力:Enter Espoo)
小林香織
「自由なライフスタイル」に憧れて、2016年にOLからフリーライターへ。【イノベーション、キャリア、海外文化】など1200以上の記事を執筆。2019年よりフリーランス広報/PRとしても活動をスタート。2020年に拠点を北欧に移し、現在はフィンランド・ヘルシンキと東京の2拠点生活。北欧のイノベーションやライフスタイルを取材している。
公式HP:https://love-trip-kaori.com
Facebook :@everlasting.k.k
Twitter:@k_programming
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
すべての業務を革新する
NPUを搭載したレノボAIパソコンの実力
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力