KDDIは10月29日、2022年3月期第2四半期の決算を発表。売上高は前年同期比3.5%増の2兆625億円、営業利益は前年同期比2.7%減の5731億円と、増収減益の決算となった。同日に実施された決算説明会に登壇したKDDI代表取締役社長の高橋誠氏によると、通期目標に対しては売上高と営業利益の進捗がそれぞれ49.1%、54.6%と順調だという。
新料金プランの導入による値下げ影響で「au」などのマルチブランド通信ARPU収入が前年同期比304億円減となったが、グループMVNO収入と楽天モバイルなどへのローミング収入がそれを補い、モバイル通信料収入全体では117億円の増収とのこと。利益を押し下げたのは2022年3月を予定している3Gの停波に向けた減価償却が主因だという。
高橋氏は上期の市場環境について、「色々な値下げの話や、楽天モバイルの0円プラン(「Rakuten UN-LIMIT IV」)などがあって解約率が上がった」と話し、楽天モバイルによる料金攻勢の影響などを受け契約数が2万減少したことを明らかにしている。そこでKDDIは6月以降、で「でんきセット割」(9月に「自宅セット割」にリニューアル)を提供するなどサブブランド「UQ mobile」の強化を図ったという。
さらに9月には、オンライン専用の「povo」を月額0円から利用できる「povo 2.0」にリニューアルするなど、マルチブランド戦略の強化を図った結果「だいぶ減りが少なくなってきた。10月は明らかにプラスに転じた」と高橋氏は説明。povo 2.0が月額0円からとしたのは、楽天モバイルへの流出を防ぐ狙いがあったことを明らかにした。
そのpovo 2.0について、高橋氏は顧客をデータで知り、継続的にアプローチしてトッピングしてもらう仕組みであることから「販売後も顧客とつながる、個人的にもやってみたかったサービス」と力を入れている様子を示す。povo 2.0の開始によってpovoの契約数は月当たり10万程度増えているそうで、povo全体の契約数としては「今の段階で100万を超えている」とのことだ。
ただ、povo 2.0は月額0円ということもあり、利用者の増加にともない収益の悪化も懸念されている。この点について高橋氏は、poro 2.0の利用者が「4分の3くらいはトッピングをしている」と説明。UQ mobileよりARPUが高いくらいの状況にあるとのことで、導入による減収の影響はないという。
一方で、KDDIが成長領域と位置付ける事業はともに好調を維持しており、金融などのライフデザイン領域は利益が前年同期比で100億円増、金融事業だけで49億円増加しているとのこと。前年度は下期に電力事業で卸価格高騰の影響を受けたことから、その影響がなければ今期はさらなる増益が見込めるという。
もう1つの成長領域である法人事業の「ビジネスセグメント」に関しては、「NEXTコア事業」と位置づけるデジタル化関連ソリューションの事業利益が前年同期比17%増加しており、こちらも好調が続いているという。中でも同社が力を入れているIoT関連サービスに関しては、7月にすでに累計のIoT回線契約数が2000万を超えており、2023年3月期には3000万回線を目指すとしている。
ただ、そのIoT回線は、NTTドコモが10月14日に起こした大規模通信障害の原因になるなど、利用の拡大につれネットワークに与える影響も大きくなってきている。高橋氏はドコモの障害について「他人事にしておける話題ではない」と話し、IoTデバイスは通信量が少ないものの接続数が多いことから、一度事故を起こすとリカバリーが難しいと説明。一般回線とIoT向け回線を明確に分けるなど、対策を進めていきたいとしている。
そのドコモは10月25日にNTTコミュニケーションズとNTTコムウェアの子会社化を発表し、NTT主導でのグループ再編が本格化しつつある。この動きに批判的な対応を取ってきた高橋氏は、一連の動きについて懸念を示しつつも「ネガティブなことばかり考えてもしょうがない」「社内にハッパをかけるターゲットが明確になってよかった」などと回答。ドコモがKDDIに近しい戦略を打ち出してきていることから、次の中期計画に向けてはよりKDDIらしい特色をさらに加えた戦略を打ち出していきたいとしている。
一方で、ドコモが小容量・低価格の領域をカバーするために開始した「エコノミーMVNO」については、すでにpovo 2.0のほか、ビッグローブなどグループ内のMVNOで十分対応できる体制が整っているとし、「あのプランが出たからと言って手を打つ状況にはない」と話す。
また、KDDIが回線のローミングを提供している楽天モバイルについても、10月から39の都道府県で順次ローミングを終了するという動きが出ており、KDDIにとってはローミング収入減少の懸念が出ている。この点について高橋氏はルールに従い順次解除を進めていくとしたが、「70%に到達したけれど、引き続き(ローミングを)貸してほしいというエリアが意外と多い」と説明。今年度でローミング収入はピークアウトするものの、その下げ幅は意外と小さいとした。
それでも2022年度以降はローミング収入が確実に減少することとなるが、高橋氏は3Gの停波以降は巻き取りや設備撤去などのコストがかからなくなることから、双方でうまく収益のバランスが取れてくるのではないかと説明した。
またKDDIをはじめ大手3社の3G停波が近づくタイミングで、総務省で周波数帯の再割り当て議論が進められており、楽天モバイルが再編によるプラチナバンドの割り当てを要求している状況にある。
この点について高橋氏は、過去にプラチナバンドの1つである800MHzの再編に関わった経験から「(現在より)顧客は少なかったが大変で、周波数を再配置して空いたからといってすぐ使えるわけではない」と説明。周波数再編が5Gの普及、そして国が力を入れるBeyond 5Gの進展にポジティブな影響を与えるのかどうか、慎重な議論が必要としている。
そしてもう1つ、ここ最近注目されているのは半導体不足の影響だが、高橋氏によると前四半期と同様に、基地局設備の半導体に関しては早い段階から調達しており影響は出ていないが、伝送路など細かな設備で一部影響が出てきているとのこと。
それに加えてコロナ禍によるの影響などもあって、2022年3月末で人口カバー率90%を達成するという5Gのエリア整備目標は「若干黄色信号かなと思う」と高橋氏は話しており、同社が力を入れている生活同線にこだわったエリア設計で満億度を高めることにより、遅れを解消していきたい考えを示した。
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