特殊冷凍ソリューション事業を展開するデイブレイクは10月27日、初の自社開発特殊冷凍機「アートロックフリーザー」を発売した。導入価格は350万円〜。最先端冷凍テクノロジーを集結したデイブレイクの特殊冷凍機ショールームで体験できる(事前予約制)。
アートロックフリーザーは、これまでのデイブレイクの冷凍研究ノウハウを全面踏襲した製品だ。氷結晶を小さく生成してうまみ成分を閉じ込める(ドリップを出さない)ほか、特別な原理で冷気を当てることで、食品から熱を奪う効率を最大化しながら、乾燥・変色といった食材へのダメージを与えず、「限りなくありのまま」の高品質な冷凍を実現できるという。
さらに、庫内の隅々まで均一に冷気を当ててることで、どこに置いても安定した冷凍が可能。また、老若男女問わず開閉しやすい扉の構造や、厨房に収まりやすい規格、デザインなど客様目線で「あったらいいな」と考えられる要素を散りばめたという。自社開発することで、発売後も現場の声を拾い上げた定期的なバージョンアップを予定しており、他にはないカスタマーファーストの冷凍機を実現したいとしている。
この特殊冷凍機をいち早く導入したのが、東京・麻布十番にある「鮨心(すしこころ)」と千葉・九十九里町の海鮮料理専門店「ばんや」だ。通販によって、高級にぎりずしや調理済みのハマグリや天ぷらなどを全国に展開している(ばんやの通販は改装中)。
鮨心は客単価2~3万円の高級店だ。親しい客に冷凍すしを提供した後、冷凍だったと種明かしをすると、「嘘でしょ、わからなかったと言われる。1カ月前の鮨だというとびっくりされるので、それが快感になっている」(鮨心 店主の中村導昌氏)
中村氏は長らくすしを冷凍で流通させたいと考えてきたという。「(コロナ禍などを受けて)おすしを食べに行くのが当たり前でない時代がすぐそこまできているし、現に来ている。麻布十番の店はカウンターの10席で、毎日満席だが一日10人しか幸せにできない。アートロックフリーザーによって、(麻布十番の店まで来られなくても)全国・世界中におすしで幸せになっていただくことが可能になったと実感している」と語った。
ばんやは、漁師が運営する居酒屋だ。「冷凍と言わないで(美味しいかを)聞くと、『漁師の店は鮮度が良くて美味しいですね』と言われた」と鮨心と似たエピソードを明かす。
魚には旬があるほか、漁獲量のコントロールもしにくいため、大量に魚が獲れすぎたときにはロスが出ていたこともあるという。この冷凍技術を導入することで、シーズンを問わずカタクチイワシを提供したり安定して鮮度のよい刺身を提供できたりするメリットがあると語った。
しかしながら、特殊冷凍機を導入すれば誰もが鮨心やばんやと同じように鮨や天ぷらを提供できるようになるわけではないという。向く食材や向かない食材があり、おいしく提供するには解凍した後の調理までを考える必要があるようだ。
鮨心は、凍結自体はマイナス35度で25分。しかし「さらに最低でも12時間、マイナス20度以下の冷蔵庫で休ませてからパッケージする。熟知して使いこなす技量がないといけない。アートロックフリーザーが素晴らしいので、扱う方も勉強しなければならない」と話す。鮨は乾燥に弱く、液体に弱いといった特性を踏まえ、水分量や加水量のパーセンテージの変更、冷凍では酢の風味が飛ぶので、量や材質の変更など、特殊冷凍に合った調整をしたと明かした。
デイブレイク 代表取締役の木下昌之氏は、「冷凍技術はタイムカプセルだと思っている。いまここでにぎった鮨もしっかり保存さえすれば、100年先にも残せる技術。消費者に喜びを与えられる技術でありながら、フードロスなど社会問題も解決でき、鮮度がいいものを届けることもできるツールでありテクノロジー」と語った。
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