未来の義手は「触る」「動く」という失われた感覚を再現する

Monisha Ravisetti (CNET News) 翻訳校正: 編集部2021年09月10日 08時00分
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 映画「スター・ウォーズ」のルーク・スカイウォーカーの義手がSFファンタジーではなく現実のものになる未来を夢見る科学者たちが、「バイオニックアーム」(筋電義手)を設計した。この義手は、小型ロボットの支援で、上肢を失った人が同時に失ってしまう感覚を再現するものだ。ロボットは、切断部位の筋肉に安全な振動を与えることでこれを実現する。

触覚ロボットの内部を示すクリーブランドクリニック、バイオニック統合研究所の研究グループ
触覚ロボットの内部を示すクリーブランドクリニック、バイオニック統合研究所の研究グループ。内部に設置された小さな黒い箱は、5本の指のそれぞれの感覚をニューラル・マシン・インターフェースを介して利用者に伝える。
提供:Cleveland Clinic

 Grand View Researchの2021年の報告書によると、世界の義肢装具市場の規模は2028年までに80億ドル(約8800億円)以上になるという。だが、義手はメカニカルな問題に直面した。例えば手を閉じたり開いたりする時の感覚など、日常生活に役立つ多様な直感的感覚を義手の使用者にリアルに伝えることができないのだ。

 「われわれはいまだ、第二次世界大戦中に到達したレベルの技術を使っている」と、クリーブランドクリニック・ラーナー研究所の医用生体工学科准教授、Paul Marasco氏は説明した。同氏は、Sciense Roboticsに9月1日付けで公開された、新たなバイオニックアームについての論文の筆頭著者でもある。

研究グループが開発したバイオニックアームを装着した被検者
研究グループが開発したバイオニックアームを装着した被検者。
提供:Cleveland Clinic

 研究グループが開発したバイオニックアームは、金属とリアルな肌色のハイブリッドだ。

 バイオニックアームに取り組んでいるチームは多数あるが、Marasco氏は自身のチームのバイオニックアームの利点を幾つか紹介した。

 このSF的な義手は、マッチ箱の約半分のサイズの高性能ロボットを介して、脳と指先の双方向に情報を伝達する。脳で思考したことを腕に伝えて行動に変えるのと同時に、意図したことを行っている腕の感覚を脳に伝えることができる。

 この義手は、典型的な義手よりも優れている点について、複数の指標を同時に検証する初のバイオニックアームであるだけではない。これらの指標は、この義手を使う人の無意識の反射を回復するのに十分な、自然な腕のメカニズムを再現することを示している。

 われわれの日常は、こうした無意識の反射に支えられている。例えばコーヒー入りのカップを持ち上げるとき、手はテーブル上のカップを見つけ、適度な強さでその持ち手をつかみ、コーヒーがこぼれないような速度で持ち上げる。われわれが朝の寝ぼけている状態でもこの一連の動作を無意識に行えるのは、腕の筋肉にある神経が、われわれの選択(この場合は「コーヒーを飲む必要がある」)に自動的に反応するからだ。

 これまでの義手は、「マニュアル操作」のため、こうしたなめらかな動きを再現できなかった。義手を使う人は、常に義手を見ていなければならず、健常者が直感的に行う事でも意識を集中して行わなければならない。

 2人の被検者でこの義手をテストし、新しい分析ツールを使ったところ、被検者が直感的に物体をつかんだり、義手から目を離して自然な目の動きをするなど、腕を失う前の反射行動を取り戻したことが分かった。

 この義手は主に3つの部品で構成されている。切断面の神経終末の再編成、コントロールセンターの役割を担うミニロボット、バイオニックアーム本体だ。

 まず、外科的処置によって腕の正常な部分の使っていない神経終末を切除し、それを指先など、失われた部位専用として切断部位に「差し込む」。

 「脳は『私の指が筋肉につながっている』と判断する。その筋肉が肩のものなのか、前腕のものなのかは意識しない」とMarasco氏は説明した。

 次に、ソケット部分にミニロボットを設置したバイオニックアームを切断面に装着する。ミニロボットは、切断面の5本の各指に関連する領域を圧迫し、切断者が腕を意識すると、神経終末を刺激する。

 「切断者は筋肉を振動させることで、実に興味深いものを生成できる。複雑な手の動きの知覚的錯覚だ」(Marasco氏)

 このバイオニックアームの開発に当たり、研究者たちはゼロから設計するのではなく、既存の義肢を改造した。その方がデバイスをリハビリテーションクリニックに迅速に提供できるし、従来の義肢よりも費用効果の高いものにできるからだ。こうした既存の義肢の利用者は、腕が残っている方の体側を酷使する傾向にあり、その結果、背中や肩を痛めて医療費がかさむことになる。

 「これらの高度なシステムは、使い始める際の費用はより高額だが、使用中に存在を意識せずに済むので、体を壊すことにならない。長い目で見れば安く上がることになる」(Marasco氏)

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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