eVTOLのレース、年内に開催へ--Airspeederが初のテスト飛行を完了

Chris Paukert (CNET News) 翻訳校正: 中村智恵子 吉武稔夫 湯本牧子 (ガリレオ)2021年06月21日 12時49分

 新しいレースシリーズを軌道に乗せるのはなかなか難しい。レギュレーションの策定、投資家の獲得、施設の契約、スポンサーの確保、一流ドライバーとの契約など、やらねばならないことが山のようにある。それは仕方ないとして、全く新しいレースシリーズを文字通り空中で軌道に乗せる、つまり、新しい飛行レーシング大会を始めるとしたらどうだろうか。しかも、新しくてまだ何も実証されていない機体を使っているとしたら。そういう刺激的で困難な前途がAirspeederのスタッフたちを待ち受けている。Airspeederは、草創期にある空飛ぶ電気レーシングカーを使ったレースシリーズ「EXA」を開催する企業だ。同社は6月17日、実際の飛行という重要な節目を迎えたことを発表した

Alauda Aeronautics Mk3
提供:Alauda Aeronautics

 新たに開発された電動マルチコプター「Alauda Aeronautics Mk3」の初飛行は、オーストラリアの民間航空安全局による監督のもと、南オーストラリアの砂漠で実施された。1950~1960年代のフォーミュラレーシングカーに発想を得てデザインされたAlauda Mk3のテスト機は、遠隔操作によって飛行した。

 パイロットが搭乗する有人機「Alauda Mk4」を使った飛行レースシリーズを開始する計画もあり、Airspeederのウェブサイトでは「有人の空飛ぶ電気自動車による世界初のレースシリーズ」だとうたっている。

 同社によると、EXAシリーズは最初、「1チームに2人のリモートパイロットを含む最大4チーム」が参加して開催され、2021年内に3回のレースを予定しているという。最初のテストフライトが6月に完了したばかりなので、時間的にかなりタイトな計画のようだ。

 EXAシリーズでは、ロボットのパイロットが操縦室に乗り込み、リモートで指示を受けて、地上にいる人間のパイロットの動きを模倣する。人間のパイロットは、実際に操縦する際と同様の環境で機体を遠隔操作する。目的は、機体に乗り込んだアバターを実現するだけでなく、「人の動きがダイナミクスとパフォーマンスを決める」様子を実証して学習することで、最終的には2022年に実際に人が乗り込んで操縦するレースに備えることだ。

 これらフルサイズのドローンのようなeVTOL(電動垂直離着陸機)には、レーダーおよびLiDAR(ライダー)技術が搭載され、機体同士が接近しても安全なレースができるという。Airspeederは、氷や雪、あるいは焼けつくように暑い砂漠の中など、あらゆる条件のあらゆる地形の上空でレースを開催することを想定している。参加するパイロットたちは拡張現実(AR)の「スカイトラック」に沿って飛行し、そして観客は、今日の多くのEスポーツと同じように、レースのストリーミング放送を視聴できるようになるだろう。

 完全電動式でカーボンファイバー(炭素繊維)製の機体を持つこれらのレース機は、ピットストップでのバッテリー交換に要する時間がわずか20秒で、空中でもかなりの速さになるはずだ。加速は2.8秒で0-62mph(0-100km/h)に達し、最高速度は125mph(200km/h)に及ぶと見込まれている。

Alauda Aeronautics Mk3側面
提供:Alauda Aeronautics

 Airspeederは、作り込んだ動画を公開して、Alauda Mk3の初飛行の様子を紹介している。

 同社の目標は、こうしたポッドレーサーのようなレースを実験の場として利用し、空中タクシーや「空飛ぶ車」技術の開発と商用化を加速させることだ。これは急成長している分野で、General Motors(GM)の「Cadillac」ブランドや、現代自動車(ヒョンデ)、Stellantisなどの従来型自動車メーカーから注目と投資資金を集めている。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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