VRIコラム

IRイベントのバーチャルシフトとアニュアルレポート

米山徹幸 / IRウォッチャー・埼玉学園大学大学院客員教授、全米IR協会(NIRI)会員2021年05月28日 14時35分
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 新型コロナのパンデミックはまだ続く。3密(密集、密接、密閉)を避けようと、企業の投資家向け情報(IR)活動も国を問わず、投資家・アナリストとリアルの面談は大半がバーチャル(仮想)の面談に切り替わる。

 これまでIRの活動で大きなイベントは、まずCEO(最高経営責任者)やCFO(最高財務責任者)による内外の主要な株主・投資家を年2回ほど訪問するロードショーであり、四半期決算をアナリスト・投資家向けに説明する電話会議(日本では対面式の決算説明会が主流だった)である。

 この3月末に発表された大手業界誌IRマガジンのグローバル調査(回答1082社)*1によると、この1年間に各社ともバーチャルでのロードショー(経営幹部による投資家面談の出張)を平均2.2回、投資家向け説明会を平均3.4回行っているという。こうしたIRバーチャル・イベントを開催した企業の比率は、それぞれ61%、85%におよぶ。(*1:Research Investor Events 20210329 IR Magazine Research Report - Investor Events)

 電話会議もロードショーでの対話も、ビデオ会議システムZOOM(ズーム)などの採用で、お互いに顔の見えるバーチャルのアクセスが当たり前になり、以前ならCEOやCFOの限られた旅程や時間の制約で足を運ぶことを断念していた株主・投資家とも双方向のコミュニケーションが取れる環境が実現した。もちろん経費的なメリットも大きい。

 こうした進行中のバーシャル・シフトを「新型コロナはIRコミュニケーションの歴史で最高の転換をももたらした」「お互いの顔を見合わせるバーチャル面談はリアルとなんら変わらない」とコメントするIR関係者も少なくない。

 では、投資家はどうか――。社外の投資家からは「IR担当者からの応対がとても迅速になった」という声も聞こえる。(この調査での投資家とは、資産運用の担当者やアナリスト、証券会社のアナリストなど投資コミュニティのメンバーを意味している。)

 調査によると、この1年間に投資家は投資家向け説明会に約12.4回、ロードショーに約17回参加している。資産運用サイドの担当者やアナリストは、投資家向け説明会(平均10.4回)と同じ回数のIRデイ(社内の各事業部門の説明を1日かけて行うイベント)に参加し、ロードショーには、それより平均8.6回も多く参加している。

 こんなIRイベントの前に、投資家やアナリストがチェックするのがアニュアルレポート(年次報告書)である。アニュアルレポートは、どの国の企業でも、数か月にわたって、計画、作成、編集、および校正に数え切れないほどの時間と手間を費やすIRツールだ。

 それだけに、今年のアニュアルレポートでは、パンデミックが自社の発展に与える影響が最大のトピックとなろう。オーストリアの企業報告会社NEXXARの別の調査によると、ドイツのDAX30企業の半期報告書は、すでに「コロナ」や「コビッド」、「パンデミック」や「封鎖」などの用語が、各ページに平均1.7回言及されていたという。

 これは、日本の企業のアニュアルレポートでも同じだろう。例えば、「新型コロナは従業員に与えた影響」では、パンデミックによって引き起こされた働き方の変容を語り、「新型コロナに立ち向かう経営」では、人々の命や地域社会、顧客サービスの継続などその最優先事項を具体的に説明する。もちろん、シンプル、明快、平明に。

 そして、CEOや経営幹部のメッセージの内容や掲載する写真の選択に気をつかいたい。どれも、情報の透明性やクオリティ(質)の点からIR担当者のセンスと知見が問われる。アニュアルレポートの仕上がりの程度が、コロナ禍の企業に対する信頼につながる。

◇ライタープロフィール
米山 徹幸(よねやま てつゆき)
IRウォッチャー・埼玉学園大学大学院客員教授、全米IR協会(NIRI)会員。

大和証券(国際部)、大和IR、大和総研を経て、埼玉学園大学大学院教授。2017年より現職。主な著書に「大買収時代の企業情報」(朝日新聞社)、「イチから知る!フェア・ディスクロージャー・ルール」(きんざい)、「新版 イチから知る!IR実学」(日刊工業新聞社)など。

この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。

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