VRIコラム

花王『#全集中で年末そうじ』のストーリー

 企業が生活者とコミュニケーションしていくには、何よりも「ストーリー」が重要です。この場合の「ストーリー」とは、相手の感情を動かすエピソードや仕組みを指します。

 2020年は、新型コロナウイルスに翻弄された1年でした。またコンテンツではアニメ『鬼滅の刃』の続編が映画になり、大ヒットした年でもありました。様々な企業が『鬼滅の刃』とコラボしたキャンペーンを実施したことも特筆すべきことです。

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 そんな中でも、花王が『鬼滅の刃』とコラボし、11月2日から実施している「#全集中で年末そうじ」は、2020年を締めくくる象徴的なキャンペーンと言えます。

 このキャンペーンは「新型コロナウイルスの影響でおうちで過ごす時間が増えた今年こそ、汚れ落としだけではなくウイルス除去までできるおそうじ用品を使って、家族全員で年末そうじに楽しく取り組んでほしい」と企画されたものです。

 特設サイトでは『鬼滅の刃』に登場する「鬼殺隊」にちなみ、「年末そうじ隊」として、家の場所ごとに「年末そうじ任務」にチャレンジするという設定になっています。

 トイレや風呂などのそうじ任務完了をツイッターで報告すると、限定オリジナルポチ袋をダウンロードでき、ゲーム感覚で楽しみながらそうじができるようになっています。キャンペーン開始から1カ月で約1万4千ダウンロードを達成するほどの人気ぶりです。

 それ以外にも、スマホのカメラで対象商品をかざすと写真上に鬼滅の刃のキャラクターが登場するAR体験が可能なスペシャルコンテンツ「鬼滅の刃AR」を提供。

 特別任務として、スーパー、ドラッグストア、ホームセンターの花王そうじ用品売場にある2次元バーコードを読取ると、人気キャラクター「竈門禰豆子」デザインのポチ袋をその場でダウンロードできるなど、店頭との連動も考えられています。

 このような仕掛けのお蔭で、特設サイトは、キャンペーン開始から1か月で136万PVを突破しました。花王の主要おそうじ商品の売上は、昨年対比で約120%と大きく伸びたといいます。

 ではなぜ、このキャンペーンは大きな効果があったのでしょう?もちろん、人気の『鬼滅の刃』とのコラボ効果が大きいことは事実です。しかしそれだけではありません。

 こんな年だからこそ「家族一丸となって年末そうじをすることをゲーム感覚で後押しする」というストーリーによる効果も大きかったでしょう。新デザインのポチ袋も投入されており、年末にかけてさらに盛り上がりを見せることは間違いありません。

 このように、優れたコミュニケーションには必ずストーリーがあります。あなたの会社のコミュニケーションには、インタラクティブなストーリーがありますか?

 
◇ライタープロフィール
川上徹也(かわかみ てつや)

広告代理店勤務を経て、コピーライターとして独立。最近は広告制作に留まらず、「ストーリーブランディング」の第一人者として、様々な企業のコミュニケーション戦略をサポートしている。最新刊は、初の小説『仕事で大切なことはすべて尼崎の小さな本屋で学んだ』(ポプラ社)

この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。

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