次は2月14日開催された、新日本フィルハーモニー交響楽団のコンサート「愛と戦闘のバレンタイン ~ふたりに贈るシンフォニー~」だ。同じくすみだトリフォニーホールで開催された。
192kHz/24bitで生配信され、映像は、シャープとアストロデザインが共同開発した8Kカムコーダー「8C-B60A」で撮影。ハイレゾの音は深田さんが34チャンネルをその場で2チャンネルの192kHz/24bitにし、コルグのLive Extremeで送出。映像は8Kのまま伝送できないため、マルチアングルを8Kカメラから切り出した。
アストロデザインは8Kの分割技術を打ち出しているが、運用は今回が始めて。多視点切り替えとハイレゾ音源配信の組み合わせも初めてとなった。実際に配信音源を聴いてみると、透明感と伸びやかさあって192kHz/24bitらしい音だった。
6月1日に、有名なコンサートライブ配信サービスが、飛躍した。2008年にスタートした、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のライブストリーミング配信サービス「デジタル・コンサートホール」が遂にハイレゾに踏み切ったのである。毎年約40回の演奏会がライブ中継され、700本以上のアーカイブがオンデマンドでアクセスできる「デジタル・コンサートホール」はたいへん価値あるライブサービスなのだが、これまで画質と音質のアンバランスが残念だった。
画質は、当初はHD以下で開始したが、2012年にフルHDへ、その後、2019年からはライブ4K HDR配信になった。でも音質が問題だった。スタート当初の48kHz/24bit、AAC圧縮のまま、今日まで来ていたのだ。画質が4K HDR(HLG)なのに、音質がそれでは、せっかくの名演奏も泣くというものだった。
しかし、やっと立ち上がってくれた。96kHz/24bi、FLACのライブ配信(当初はアーカイブから)が、6月1日からスタートした。ベルリン・フィルではすでに2019~20年シーズンからコンサート収録を96kHz/24bitで行っており、ハイレゾ音源はすでにかなりの数に登っている。そのなかから、まずは首席指揮者のキリル・ペトレンコ、客演のセミヨン・ビシュコフ、ズービン・メータ、ダニエル・バレンボイムのコンサート映像でハイレゾ配信に乗り出す。試聴してみると、AACの48KHzとは、まったく異なる、高解像度にして、非常にクリア。明瞭にして、高解像度という、よく知っているベルリン・フィルハーモニーホールでの音がした。これから、ハイレゾ配信が増えるというのでとても楽しみだ。
このように、2021年前半も注目の配信コンテンツが出そろった。2021年後半もこの流れは続くと思われ、以前のように一箇所に人が集うのではなく、個別に楽しめるコンテンツが現れることで、クオリティはより上がっていくだろう。
この時に必要になるのが画面の大きさだ。プロジェクターであればかなり大きな画面を再現できるが、部屋を暗くする必要があるなど、手間がかかる。そこで求められるのが明るい環境で大画面かつ高画質を実現するディスプレイの登場だ。私が考える最適のディスプレイはソニーのクリスタルLEDだ。ただあまりにコストが高く、いつ登場するかは読めない。
それに加え問題になってくるのが音だ。音楽に限らず、スポーツやときには花火などのコンテンツも配信で楽しめる時代がやってくるだろう。でもそれはなかなかテレビプロパーでは難しい。キャビネットが薄いからだ。その意味では、テレビの音質改善は必須。サウンドバーに頼るという手はあるが、ぜひテレビプロパーとして良い音に取り組んで欲しい。
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