またドコモは、後者の通信事業のコスト削減に関しても、1つ特徴的な取り組みを打ち出している。それは販売チャネルのデジタル化推進で、ドコモショップやコールセンターのデジタル活用による効率化だけでなく、ドコモショップを地域や顧客のデジタル化支援の拠点として活用しようとしているのだ。
ドコモショップでahamoの契約などを有料でサポートする「ahamo WEBお申込みサポート」「ahamo WEBお手続きサポート」などがその一環となるようで、有料で顧客のデジタルシフトをサポートするサービスをドコモショップで提供していくことで、販売に重きを置いていたドコモショップの役割を再構築していきたいと井伊氏は話している。
現在、総務省で新規契約重視に偏重したキャリアショップの販売手法について議論が進められるなど、キャリアショップのあり方の見直しが求められているだけに、井伊氏の発言はそうした動向を意識したものといえる。だが、顧客のデジタルシフト推進は、販売・サポートのオンライン利用拡大、ひいてはドコモショップに訪れる顧客の減少にもつながってくる。それだけに、この動きはahamoの強化とセットで、将来的な店舗の削減によるコスト削減を見込んだ動きと見ることもできそうだ。
それら一連の取り組みによって、楽天グループを除く3社は2021年度も、料金引き下げの影響を強く受ける利益は微増にとどまるとはいえ、引き続き増収増益を目指すとしている。また楽天グループも楽天モバイルの先行投資を除けば、本業のEコマースや決済・金融などの伸びで好業績であることは付け加えておく。
ただし、好業績を続けていくには、各社が新たに抱えた固有の課題にどう向き合うかも重要となってくる。ドコモは親会社のNTT幹部による総務省関係者への接待や会食に関する問題を指摘されており、総務省などで調査中であることから、その結果が出なければドコモによるNTTコミュニケーションズの再編にともなう法人事業の強化などが思うように進められないだろう。
また、ソフトバンクはLINEの海外での個人情報管理に関する問題が取り沙汰され、こちらも対応や調査などが進められている最中であることから、LINEの本格活用に向けては課題が多い状況にある。KDDIは国内での課題は少ないが、国軍のクーデターに揺れるミャンマーで現地の公社と共同で携帯電話事業を展開していることから、今後の動向によってはその扱いが課題として浮上してくる可能性が考えられるだろう。
そして楽天モバイルは、基地局整備の前倒しと密度の向上で設備投資が大幅に増えており、日本郵政などから大規模な資金調達を実施してしのいだとはいえ、十分なエリアと品質を確保できるかという点は引き続き課題だ。また、日本郵政と同時に中国テンセントからも投資を受けており、政治的観点から問題視されたことで、今後さらなる設備投資のために資金を調達するにしても、その相手が限定され、思うように調達が進まない可能性が出てきたことは、楽天グループにとってデメリットだ。
さらに楽天モバイルに転職したソフトバンク元社員が営業秘密を持ち出したとして、ソフトバンクから1000億円規模の損害賠償請求を受けていることも課題の1つといえるだろう。ソフトバンクはこの訴訟で、楽天モバイルの不正競争により建設された基地局の使用差止請求を盛り込んでいることから、訴訟の結果によっては楽天モバイルの基地局整備計画に影響が出てくる可能性もあるだけに、その行方は非常に気になるところだ。
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