KDDI、povoの契約数は「100万が見えた」--携帯料金値下げ影響は700億円規模に

 KDDIは5月14日、2021年3月期の決算を発表した。売上高は前年度比1.4%増の5兆3126億円、営業利益は前年度比1.2%増の1兆374億円と、増収増益の決算となった。

 同日に開催された決算説明会で、KDDI代表取締役社長の高橋誠氏は、携帯電話料金の低価格化トレンドでauブランドの通信料収入が減少したほか、電力卸値の高騰などでエネルギー事業が減益となったものの、成長領域と位置付けるライフスタイル領域とビジネスセグメントが大きく伸びて落ち込みをカバーし、増収増益を達成したと説明する。

決算説明会に登壇するKDDIの高橋氏
決算説明会に登壇するKDDIの高橋氏

 その1つとなるライフデザイン領域は、「au PAY」の会員数が3200万超、「auスマートパス」の会員数が1500万超となるなど好調な伸びを示したほか、同社が力を入れている金融事業の決済・金融取扱高が9兆円に達し、利益が前年度比で190億円増加するなど、業績への貢献が顕在化してきているという。

ライフデザイン領域では金融事業の営業利益が前年度比で1.6倍に伸びており、業績への貢献度合いが大きくなっているとのこと
ライフデザイン領域では金融事業の営業利益が前年度比で1.6倍に伸びており、業績への貢献度合いが大きくなっているとのこと

 またビジネスセグメントは、売上高が9916億円と1兆円に迫っており、利益も1667億円と、前年度比で12%近い伸びを示している。そこで高橋氏は、固定やモバイル、5Gなどの通信と、2100万を超えるIoT回線を軸に、企業やビジネスのデジタル化、そしてデータセンターなどの事業基盤サービスなどを推進するソリューション事業「NEXTコア」を推進していくと説明。法人事業全体の売上高のうち3割超を、NEXTコア事業が占めることを目指すとしている。

ビジネスセグメントでは通信を基盤に企業やビジネスのデジタル化ソリューションを提供する「NEXTコア事業」を推進、どうセグメントの売上高の3割にまで伸ばしたいとしている
ビジネスセグメントでは通信を基盤に企業やビジネスのデジタル化ソリューションを提供する「NEXTコア事業」を推進、どうセグメントの売上高の3割にまで伸ばしたいとしている

 一方、従来の個人向け通信事業を主体としたパーソナルセグメントに関しては、5Gの利用拡大を引き続き推進。2021年3月末には大阪環状線、5月末には山手線の全駅周辺で5Gの利用を可能にする予定であり、その後も主要鉄道路線の5Gエリア化を順次拡大するとしている。

 また5G端末の累計販売台数は、3月末時点で240万台を突破しているとのこと。高橋氏はさらに、2022年3末時点の累計販売台数が700万台超になることを目指すとしており、5Gの利用拡大に一層積極的に取り組む姿勢を示している。

5G端末の累計販売台数は期初予想を大きく超えた240万台に。来期は700万台超を目指すとのこと
5G端末の累計販売台数は期初予想を大きく超えた240万台に。来期は700万台超を目指すとのこと

 料金プランに関しては、引き続き「au」「UQ mobile」「povo」の3つの特徴を生かして契約数を増やし、5Gの拡大によってデータ通信の利用を増やして売上を高めるとともに、獲得した顧客をau経済圏の拡大に結び付けている方針だという。

「au」「UQ mobile」「povo」の3つを活用して契約数を増やし、データ通信とau経済圏の利用を伸ばす方針。povoは間もなく100万に達する契約を獲得しているという
「au」「UQ mobile」「povo」の3つを活用して契約数を増やし、データ通信とau経済圏の利用を伸ばす方針。povoは間もなく100万に達する契約を獲得しているという

 注目を集めたオンライン専用の低価格プラン「povo(ポヴォ)」の契約数は、「実数は開示していないが、なんとなく100万が見えてきた」(高橋氏)とのことで、契約は順調に伸びているという。その多くはauからの乗り換えだというが、他社からの乗り換えも一定数あるとしている。

 また、KDDIが事業承継して統合したUQ mobileに関しては「正直言って、(統合を)やっておいて良かった」と話し、運用コストの効率化などプラスの影響が大きかったと話す。UQ mobileを取り扱う店舗も拡大が進んでおり、UQ mobile独自の店舗とauショップでの取り扱いを合わせて、全国2000店舗で契約申し込みができる体制を整えたという。

 高橋氏はさらに、2022年3月期の業績予想についても説明。売上高は前年度比0.7%増の5兆3500億円、営業利益は前年度比1.2%増の1兆500億円と、引き続きの増収増益を予想しているという。

 一連の携帯電話料金引き下げの影響は、売上・利益ともに「ざっと計算すると600〜700億円」の影響があるという。だが、この落ち込みを成長領域の伸びでカバーできると考えており、ライフデザイン領域とビジネスセグメントの営業利益は、それぞれ2500億円、1840億円と引き続き2桁成長を遂げることを見込んでいるとのことだ。

2022年3月期も増収増益を予想。携帯料金引き下げの影響は600〜700億円を見込むも、成長領域の2つが大きく伸びることでカバーできると見ているようだ
2022年3月期も増収増益を予想。携帯料金引き下げの影響は600〜700億円を見込むも、成長領域の2つが大きく伸びることでカバーできると見ているようだ

 ただし、これらの成長領域、特に決済や金融などの分野は競合他社も力を入れているため、どのようにして差異化していくかが問われることとなる。この点については高橋氏は「われわれは10年前に『auじぶん銀行』を立ち上げるなど、他社に先行してモバイル中心の金融に特化しようと考えて取り組んできた。他社よりも先行している分野だ」と話し、先行する強みを発揮して競合との競争に勝ち抜く姿勢を示した。

 だが、そのauじぶん銀行などで提携関係にある三菱UFG銀行が、競合でもあるNTTドコモとの提携を発表し、デジタル金融サービスの提供を進めるとしている。この件については、「三菱UFJ銀行側からも、われわれとの関係に影響を与えるものではないとの話をいただいている」(高橋氏)と話し、金融戦略における直接的な影響はないとの認識を示した。

 なお、携帯電話事業に関しては、KDDIとローミングしている楽天モバイルが、エリア拡大を前倒ししてKDDIとのローミングを早期に打ち切っていることから、それによる収入の見込みが当初予想より減少している可能性も指摘されている。この点について高橋氏は「エリアカバーされている場所でもまだまだローミングが使われているところがある」と話し、5年間という契約期間もあることから収入が大幅に減っているわけではないと説明した。

 また、NTTによる総務省関係者への接待問題について、4月5日にKDDIやソフトバンクら21社が連盟で総務省に意見書を提出している。高橋氏は「第三者委員会の結果を見たうえで議論したい」とコメントしたが、一方で「澤田さん(NTT代表取締役社長の澤田純氏)の決算会見を聞いていると、2021年春に(NTTドコモとNTTコミュニケーションズ、NTTコムウェアの)統合を予定していたというコメントがあり、ちょっと驚いた。本当にこのような形で進んでいいのかというのは若干疑問がある」と、NTTが進めようとしているグループ再編に苦言を呈した。

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