ソフトバンクグループは5月12日に2021年3月期の連結業績を発表。純利益が4兆9880億円となり、過去最高益を更新したことを明らかにした。売上高は前年比7.4%増の5兆628億円。米WeWorkの損益などが膨らみ、9615億円の最終赤字となった2020年3月期からV字回復と言える、大幅な増益を達成した。
決算会見の冒頭、ソフトバンクグループ代表取締役会長兼社長の孫正義氏は、創業の地である福岡県雑餉隈地域の1981年当時の写真に、当期純利益を示したグラフを重ね、「ソフトバンクの40年の歴史を1枚に表したのがこの写真。いつか必ず、売上げも利益も1兆、2兆と数えられるようにすると言っていたが、やっとそうなった」と感慨深く語った。
利益急増の主な要因はファンド事業の好調だ。同社が中心となって出資する「SoftBank Vision Fund1」(SVF1)や「SoftBank Vision Fund2」(SVF2)などの投資利益は6兆3575億円におよぶ。
上場投資先の株価が好調だったことに加えて、韓国最大のECを展開するCoupang、米フードデリバリーのDoorDashなど投資先のユニコーン企業の新規株式公開(IPO)による利益が大きく膨らんだ。中でも大型IPOとなったのが韓国のAmazonとも評されるCoupangで、SVF1の投資額3021億円に対し、3月末時点の時価は3兆1041億円と、保有株式の価値が約10.3倍になっている。
2020年9月には、傘下の英Armの米半導体大手NVIDIAへの売却を発表するなど、近年ますます投資会社としての色彩を強めているソフトバンクグループ。孫氏が「金の卵の製造業」と説明するその戦略的投資が、世界的な株高を背景にまさに花開いた格好だ。しかし、孫氏が自社の株価について「安すぎるのではないか」と不満を漏らすように、市場における同社の投資会社としての評価は必ずしも高くない。
「たまたまが重なって、一時的に利益が膨れ上がったいうのが投資家の見方。私自身にも投資の失敗や機会の見逃し、仕組みの欠如など多くの反省がある。金の卵の製造業として、ユニコーンを発掘するための分析力、組織の充実、資金調達など継続して利益を出せる仕組みを作っていかなければならない」と、金の卵を生み出すエコシステムの確立に取り組む姿勢を鮮明にした。
孫氏が「ソフトバンクグループにとって、純利益よりも大切」と話すのが、保有株式などの資産から負債を差し引いたNAV(ネット・アセット・バリュー/時価純資産)だ。2021年3月期のNAVは26.1兆円。このうちアリババグループが43%、SVF1とSVF2が25%、その他ソフトバンクやスプリント&T-Mobile US、Armなどが32%を占めている。
「ほんの半年前まではアリババが60%を占めていたが、近い将来、SVF1とSVF2の占める割合が最も大きくなる」と孫氏。SVF1の92社、SVF2の95社に加えて、ラテンアメリカ市場に特化したラテンアメリカ・ファンドで37社と、すでに投資先が計224社に上っていることを明らかにした。いずれも「AIの技術の最先端、またはAIを使った最先端のビジネスモデル」を持つユニコーン企業揃いだ。
出資者を募って10兆円規模の投資をしてきたSVF1はすでに投資フェーズを終えているが、ソフトバンクグループのみが出資するSVF2は、第3四半期から3カ月で投資先を39社から95社へ急増。「すでにSVF1を上回る数のユニコーンを抱えるところまで進展している」という。SVF1およびSVF2から昨年度は14社が上場したが、「21年度はそれを大きく上回る数のIPOが見込まれている」(孫氏)
「ベースの数が増えれば、その中から上場までこぎ着ける会社も増える。たまたま当たったとか外れたではなく、確率論の世界になれば、われわれのエコシステムもできあがる。継続して利益を出せるしくみを着々と粛々と改善し、伸ばしていく」と意気込んだ。
決算会見では、多くの海外AIユニコーン企業に投資する孫氏に、日本の現状はどのように見えているかという質問も飛んだ。これについては「デジタルトランスフォーメーションの次にはAIトランスフォーメーションがあるが、そもそもデジタルになっていないというのはスタートラインにも並んでいない状況。世界に1000社近くAI関連のユニコーンがある中で、日本には3社くらいしかない。せめて10%ぐらいは日本がないとおかしい。決定的にAI革命から遅れをとってしまっている現状を憂いている」とコメント。
続けて「AIのユニコーンを日本で育てるにはどうすればいいか、日々考えを巡らせている。アイデアはあるが、語るにはまだ時期尚早」と話した。
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