Amazonは数年にわたる開発期間を経て、一般的な家庭用Wi-Fiの接続圏外にあるデバイスでも常時接続可能な長距離無線ネットワークを構築する取り組みを強化する。同社は「Amazon Sidewalk」と命名したこのサービスを、米国時間6月8日に開始すると発表した。Sidewalkがサポートする対象には、大半の「Echo」スマートスピーカーのほか、Amazon傘下のホームセキュリティ企業Ringの製品、TileのBluetoothトラッカー、他の早期パートナーが含まれる。
Echoが対応することにより、Sidewalkの低消費電力のBluetooth接続を家庭用Wi-Fiの予備ネットワークのようなものとして利用できるようになり、同社によるとデバイス設定時の安定性が増すほか、ネットワーク名やパスワードをアップデートする際にルーターへ再接続する時間が短縮されるという。
つまり、こうしたSidewalk接続は、スマート屋外灯、郵便受けセンサー、ネットワーク接続されたガレージドア開閉装置などのデバイスが自宅のWi-Fiネットワークの末端にある場合でも、これらのデバイスを常時接続しておくのに役立つ。サービス開始当初はRingの屋外灯やカメラといった一連の製品や、Levelのスマートロック、TileのBluetoothトラッカータグに対応する。
Amazonはまた、認知症患者向けのウェアラブルセンサー製品群を手がけるCareBandと提携して、Sidewalkを活用する屋内外のトラッキング、行動パターンの自動分析、ヘルプボタン機能のパイロットプログラムを実施する。
自宅のWi-Fiネットワークより広範囲に広がるそうした接続により、家の外にいる他者も関わってくる可能性がある。たとえば、自宅にSidewalk対応デバイスがあり、首輪にTileのトラッカーを着けた近所の飼い犬が庭に入ってくると、飼い主である隣人は、愛犬がいるおおよその場所を知らせる通知を受け取る。
そうした自宅外の接続がAmazonのサーバーに届くように、Sidewalkは、家庭のWi-Fi帯域幅のごく一部、最大で80Kbpsのデータを、月500MBを上限に流用する。
Sidewalkが初めて発表された際、このような説明により、すぐにプライバシーやセキュリティについての疑問が生じた。Amazonは2020年に、そうした通信を保護する方法を記述した詳細なホワイトペーパーで、その疑問に答えた。今回の発表でも、そのホワイトペーパーの説明を繰り返した。
Amazonは公式ブログで次のように述べた。「Sidewalkは、データの安全を保ち、ユーザーが体験を管理できるように作られている。Sidewalkネットワークで共有されるデータは、3層の暗号で守られており、ユーザーが選択するデバイスでしかアクセスできず、プライバシーを守るために24時間置きに自動的に削除される」
また、AmazonでSidewalk担当のゼネラルマネジャーを務めるManolo Arana氏は、米CNETの取材に対し、「結局、ユーザーが隣人のブリッジに関する情報を得ることはなく、隣人がそのユーザーのデバイスに関する情報を知ることもない」として、「レイヤーを越えられる情報はこのレベルまで常に最小限にとどめられる」と述べた。
Sidewalkは、Alexaアプリの「アカウント設定」で完全に無効にできる。Amazonは2020年終盤から、対応するデバイスでこの機能をあらかじめ有効にしており、なぜオプトイン方式ではなくオプトアウト方式にしたのかという疑問が沸き起こった。
Amazonの広報担当者はその際、「対応デバイスを保有する既存のEchoユーザーに、各デバイスがSidewalkの一部になることと、機能が提供される前に設定を変更する方法を通知開始した」として、「顧客はデバイスのセットアップ時やAlexaアプリの設定からいつでも、Amazon Sidewalkの設定を変更できる」と説明していた。
Sidewalkの通信に利用されるのはBluetooth Low Energy(BLE)や900MHzの無線周波数帯だ。「Sidewalk Bridge」と呼ばれるデバイスが中継器の役割を果たす仕組みで、現時点では多くのEchoデバイスのほか、防犯カメラの「Ring Floodlight Cam」と「Ring Spotlight Cam」がSidewalk Bridgeとして機能する。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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