ビズリーチ創業から12年--上場を果たしたビジョナル南社長が見据える「次の10年」 - (page 2)

藤井涼 (編集部) 日沼諭史2021年05月06日 08時30分
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コロナ禍でのグループ経営体制の舵取りは?

——2020年2月にグループ経営体制に移行してから1年余りですね。手応えはいかがですか。

 特に株式会社ビズリーチが一番変化が大きかったと思います。2020年2月は、新型コロナウィルスの蔓延が始まりつつあった、今思うとなかなか大変なタイミングでしたよね。それでも多田社長を中心に経営チームが一枚岩になって、情報を公開しながら、丁寧に1つ1つ判断して彼らしい経営をしてきた。コロナ禍における今回の事業運営は、新生ビズリーチの経営陣にとっても自信になったと思います。

 新しいチームが直面する最初の課題としては大きな山でしたが、結果として1年間を振り返ったときに、グループ経営体制にしてよかったなと。素晴らしい経営チームに役割を委ねながら、チームとして乗り切ってきた1年だったと思うので、それをストレスチェックではないですけれども、上場前に自分たちのポテンシャルを測ることができたのは良かったと思います。

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——コロナ禍で苦労したこと、あるいはコロナ禍だったからこそビジネスにおいて加速したところはありますか。

 オフィスって事業運営上、生産性を上げるために作られてると思うんですよ。それなのにオフィス勤務からテレワークにしたり、出社とテレワークのハイブリッドにしたりと、有機的に働き方を変えていくのは、働いてる人にとっても、従業員全員をマネージする側としてもストレスフルなことで、いい意味でも悪い意味でも各企業が試されることになったと思います。

 お客様を見ていても、順応できた会社となかなか順応できない会社に分かれていました。ただ、こうしたこと自体は僕は日本の未来の働き方に向けては1つのいいきっかけになったとも考えています。コロナが明けて、社会が通常運転に戻ったときに、これまでは企業が人を選ぶ時代だったのが、人が企業を選ぶ時代に変わるんじゃないかなと。

 そういう意味では、(人財活用プラットフォームの)HRMOSをわれわれ自らもっと使いこなさなければいけない。1on1の対話、人事プロセスの透明化・効率化などを通じて、従業員と企業の関係性を1つのクラウドシステムで支えていくこと、ここはもう待ったなしだと思いました。

 そして、まだ答えが出てないのはオンボーディング、人材育成ですね。コロナ禍でどうやって従業員のエンゲージメントを確保していくのか。長く勤めている従業員ですら苦労しているのに、社会人としての礎がまだ定まっていない新入社員をどうサポートしていくべきかは本当に難しい。今も試行錯誤していますね。

——セキュリティや物流といったHRテック以外の事業についても、現状の手応えや今後の展望を聞かせてください。

 次に何をやっていきたいかよりも、すでに孵化しようとしている事業のことが頭の90%以上を占めています。それらすべての事業は日本が抱えている課題そのものであって、物流も、事業承継やM&Aも、資本の流動化も、セキュリティもそうです。われわれが捉えたそれらの社会課題がどんどん表面化していく中で、きっちりその流れに沿った形で、地道に事業作りを続けていく以外ないんじゃないかなと。

 一喜一憂せず、やるべきことをちゃんと淡々とやっていく。それが12年間続けてきたビジョナルグループがもつ最大の強みでもあると思っています。1つ1つ丁寧に、価値あることを正しくやり続けることが、何よりも大事です。小さい事業ほど変化が求められるわけですが、市場や顧客に応じて変わっていくことを恐れず、変わることに対して学び続けることがこの会社の1丁目1番地なので、その根幹をきっちりぶれないように維持していくことがインキュベーション事業でも大事だと思っています。

——インキュベーション事業のなかで、有望そうなものを1つ挙げるとすれば何でしょう。

 たとえば事業承継、M&Aプラットフォームの「ビズリーチ・サクシード」ですね。4年前から始めた事業ですが、資本の流動化、雇用の流動化というものにずっとぶれずに取り組んできて、その課題が最近になって表面化してきています。まだ切実な状況にはなっていないかもしれませんが、いずれコロナが明けたときに、社会の二極化が起こると思うんです。変われる会社と変われない会社、デジタルを活用できる会社と活用しきれない会社、というような形で。

事業承継 M&Aプラットフォーム「ビズリーチ・サクシード」
事業承継 M&Aプラットフォーム「ビズリーチ・サクシード」

 企業の生産性の差が注目される中で、雇用の流動化、つまり従業員のみなさんがより良い環境を求めるようになっていきます。さらに資本も同様で、より生産的に活用できるところに資本が集まりますよと。経営者がそれに気づいて、自分たちだけでやっていくのか、もしくはパートナーシップを組んで大きい資本の中でやっていくのかを的確に判断して経営ができるかが、企業の価値を未来につなげていくうえではすごく大切なことになる。

 昨今、みなさん1人1人が自分のキャリアについて考えるようになりました。だったら経営者も株式会社と資本をどう生かしていくのかを考えなければいけません。経済合理性だけでなく、会社として、従業員として幸せになるためにどうすべきかを捉える必要がある。会社の未来がどうあるべきなのか、市場におけるさまざまな選択肢を見極めながら、経営者が合理的な判断を下していくのが僕は日本の未来だと思っています。個人がキャリアの健康診断をするように、経営者が企業価値という観点で健康診断をしていくのは、経営の選択肢を考える上で非常に重要ではないでしょうか。

——DXで変わろうとチャレンジを始めている企業に向けて、もしくは顧客や株主の方に対してメッセージがありましたら。

 3年前に新婚旅行でガラパゴス諸島に行ったんですが、ご存じの通り、とてものどかな島で、法律で環境が保護されていて、その辺にイグアナがいるわ、カメがいるわで、本当に特別な場所です。きっとダーウィンが訪れた当時も同じような雰囲気だったんでしょうけども、今の日本・国際社会ってそうじゃないんですよね。時間が流れるのはすごく速いし、ありすぎるくらいの情報があって、迷子になっちゃうほどに変化・進化が起こっている。

 ガラパゴス諸島だと地形や気候が変わっていくのは100年単位かもしれないけれど、われわれの時代ってそんな変化が5年10年単位で起こっていくんだろうな、と感じました。ダーウィンが唱えたとされる「最も強い者、最も賢い者が生き延びるのではなく、生き残るのは変化できる者である」というような言葉がありますが、現代においても生き残るために変わり続ける、変わり続けるために学び続ける、ということが必要なんですよね。DXも同じで、学び続ける姿勢がある企業、もしくは将来的にどうありたいのか明確なビジョンをもって、変わり続ける強い意志がある会社が今後も成長していくのではないでしょうか。

 働き手個人も、たぶん100歳まで生きるわけです。だとしたら、あと何年働くのか考えてみてほしい。おそらく50年、60年になりますよね。そのときに、最初に学んだこと、これまで学んできたことだけで、未来の自分のあるべき姿が自分自身で描けるのか。それは多分「NO」です。だから、企業も、いち個人としても学び続けなきゃいけない。

 100年続く会社も素晴らしいですが、われわれは100回変わる会社になりたいと言ってきたのも、それが理由です。何度も変わってやる。その時代その時代の社会が求める課題・ニーズに合わせて、われわれ自ら変わり続けることが、ビジョナルが存在し続ける、あるいは社会にインパクトを与え続ける1つの意義ではないかと思います。

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「ビズリーチのビジョナル」から「ビジョナル」へ

——グループ経営体制に移行したときが1つ目の節目、今回の上場は2つ目の節目だと思いますが、次は何が大きな節目になると思いますか。

 いまは「ビズリーチのビジョナル」と言われるんですよ。親会社・子会社の関係で言うと逆なんですが、正しいことでもある。たぶん「ビズリーチのビジョナル」でないと一般には伝わらないと思うんですよね。

 ですので、1年目は「ビズリーチのビジョナル」かもしれませんが、いずれ「ビジョナル」として認知されるようになったとき、つまり、続く事業がビズリーチに肩を並べる事業に成長したときが、次のステージ、節目になるのではないでしょうか。

——それは何年後くらいになりそうですか。

 ここまで12年かかったので、あと10年くらいじゃないですか(笑)。生まれてから小学校6年生を終えて、今ようやく中学生になった。次の10年で大学を卒業して、社会人になったときに、ビジョナルとしての自覚がちゃんと生まれているか。これから中高大の3年・3年・4年でいろいろなマイルストーンが出てくるのではないかな、と個人的には思っていますけどね。

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