「リモートワーク」というと、どこからでも働けるということなので、カフェやコワーキングスペースでもいいと思うんですが、今はコロナでなかなか外出するのも気が引けてしまうので、実際には「在宅勤務」ということになるのかなと思います。
夫婦や家族と同居している場合、自分だけでなく、パートナーも在宅勤務をしていることが多いのかなと思うんですが、そこでみなさんに質問です。「在宅勤務になってから奥さん(パートナー)とケンカになりませんでしたか?」。もしかして、僕だけですか(苦笑)。
ことの発端は、同じリビングルームで仕事をすることにしたことでした。
自宅に自分専用の書斎があればいいのですが、なかなかそんな理想的な状況を作るのは難しく、かといってベッドルームで仕事をしようにも、せまかったり、いいイスがなかったり、それで結局「リビングルームが一番仕事しやすい」ということにお互いなったんです。
僕はリビングルームにあるダイニングテーブルで仕事をし、奥さんはそのそばにある作業デスクで仕事をする。ちなみに奥さんは、ミシンを使って赤ちゃん服を製作しています。距離にして、わずか「2メートル」。
そのせまい空間で、片やパソコンをカタカタ、たまにビデオ会議やポッドキャストの収録のために、僕がブツブツと会話している。片やパソコンやミシンをガタガタやっている。これが、わが家の在宅勤務の日常の風景です。
奥さんは僕の会社の経理も手伝ってくれているのですが、あるとき頼んでいた作業をしてもらい、それに対してありがとうと「チャットで」返信したんです。2メートル先に視界には入っている、だけどチャットでありがとう、と。
それに対して奥さんは「口で言ったらいいやん」と。「この書類を作ってください」みたいな仕事の依頼がチャットで来るのは分かるけど、「ありがとう」までチャットというのは。たしかに、わざわざチャットを開いてメッセージを確認したのに、そこに書かれているのは「ありがとう」の一言だけ、「だったら言えばいいやん」というのが彼女の考えでした。
そうだよ、「ありがとう」くらい口で言えよ、という読者さんもいらっしゃるかもしれません。が、実は僕のほうは「よかれ」と思って、あえてチャットで伝えたんです。「仕事のじゃまをしたらいけない」「自分が逆の立場だったら、チャットで言ってほしいな」と思って。そこで「価値観の相違」があらわになったんです。
奥さんは仕事中でもなにか思いついたらパッと話しかけたいタイプ。僕は仕事中に話しかけられると、ほんとに申し訳ないんですが、正直「えっ」と感じてしまうタイプ。
もちろん仕事の内容にもよりますが、僕は編集者として、ライターさんから送られてきた原稿に向き合っているとき、ほんとは1、2時間、静寂に包まれた空間で作業をしたいんです。
だって、途中で話しかけられて、また作業に戻るとき、スイッチングが難しくないですか? だから僕は、逆に奥さんのように、パパっと頭を切り替えられる人のことをほんとにすごいと思っているんです、これは別に嫌味じゃなくって。
そう奥さんに明かすと、彼女は「だったらもう箱作れ!」と(苦笑)。いやいや、リビングルームに急に大きな箱が出現したら、今度は家の景観が乱れるでしょう。
それに、僕にも言い分を言わせてもらえば、途中で話しかけられたら仕事が止まってしまうわけで、「それは効率的ではなくなるのでは?」と尋ねると、奥さんは「いや、効率よりも大切なものがある」と。
彼女からすると、僕はリビングルームで「仕事モード」を出しまくっているそうです。例えば、天気がよくて、「ああ、外晴れてるね」と奥さんが思わず話しかけたとき、僕は「聞いてません」みたいな顔で、もう返事すらしないときもあるんだとか。
それはさすがに自覚していなかったんですが、ほんとにそうだとしたら自分でも「ひどいやつだなあ」と(苦笑)。もし、自分がそんなことされたら、リビングルームの空気はもう変な感じになるよなと思います。
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