Amazonが米アラバマ州ベッセマーに構える物流倉庫の従業員らが労働組合「Retail, Wholesale and Department Store Union(RWDSU)」への参加の是非をめぐって行った投票は、反対が多数となった。賛成多数となれば米国初のAmazonの労組が誕生するとして注目されたこの投票で、従業員3200人以上が郵便で票を投じた。米国時間4月9日時点で有効性が争われる投票が約500票あるものの、1700人以上が反対票を投じ、労組結成は否決された。
Amazonの労組結成の是非を問う投票が行われたのは、過去7年間で初めてだ。ベッセマーに組合が結成されれば米国各地で同様の動きが起こったはずだ。しかし否決された影響で、労組結成を検討している他の物流倉庫従業員の意欲がそがれる可能性がある。9日の暫定の開票結果で、労組結成の反対票が1798票、賛成票が738票だった。5800人以上の従業員に投票権があった。
労組結成の推進派は、Amazonとは正反対の立場を取っていた。Amazon側は、従業員に同地域の最低賃金の2倍近くを支払っており、医療給付、退職金、学費補助なども提供しているため組合は不要だと主張してきた。The Interceptの報道によると、Amazonは会社の姿勢を従業員に伝えるため、コンサルティング団体を1日当たり3200ドル(約35万円)で雇い、組合を結成しないよう説得させたという。推進派は労組結成により、雇用が安定し、休憩に関するポリシーなどの福利厚生の改善に役立つと期待していた。新型コロナウイルスのパンデミックにより、大勢の米国人が日々行う注文を処理する倉庫従業員の負担が増している昨今、従業員らはそうした要求を一層強く望むようになっていた。
RWDSUは、全米教育協会(NEA)や国際サービス従業員労働組合(SEIU)などの大手労組と比べると規模は小さく、精肉業者、穀物生産業者、百貨店の従業員も代表している。
最終的な結果が確定しつつあった9日、RWDSUは、「Amazonは自由で公正な投票を行うアラバマ州ベッセマーの従業員の権利を侵害した」とする不当労働行為の告発と併せて、投票結果への異議を全米労働関係委員会(NLRB)に申し立てることを明らかにした。NLRBは、この問題を解決する目的で公聴会を開く可能性が高い。Amazonの行為が許されないものだったと判断すれば、投票のやり直しを命じる可能性がある。不当行為が著しい場合、雇用主に従業員の組合を直ちに認めるよう命じることもできる。
Amazonは、同社の措置に対する組合の見解を否定し、「当社の従業員はわれわれからよりも、組合、政治家、報道機関からはるかに多くの反Amazonのメッセージを聞いていた」と述べた。
RWDSU側はすでに、Amazonのある行為に異議を唱えていた。それは、米郵便公社(USPS)にAmazonの敷地内に投票のための郵便箱を設置させたことだ。NLRBはAmazonに、敷地内に投票箱を置かないよう命じていた。RWDSUが入手した文書によると、Amazonは投票前に郵便箱を設置するようUSPSに迫っていたという。RWDSUの会長を務めるStuart Appelbaum氏は、郵便箱の存在が従業員の票を左右した可能性があると述べた。従業員らは勤務中、常時監視されていることを認識しており、そのため投票すること自体に抵抗を感じた可能性もある。
Amazonは、郵便箱にアクセスできたのはUSPSだけだったとして、「われわれは最初から、すべての従業員に投票してほしいと話していたし、投票しやすくなるようにさまざまな選択肢を提案した」と述べている。
金融アナリストと労務の専門家は、Amazonの強力な反労働組合キャンペーンについて、自社のブランドと業務への支配を維持しようとする取り組みの一環だとしている。
倉庫の従業員による大規模な組合は、ストライキやサボタージュによって配達を遅らせる可能性があり、そうなればAmazonの小売り事業が持つ長所が損なわれることになる。組合が1度勝利したところでAmazonへの信頼が低下することはないだろうが、ベッセマーでの日常業務に対するAmazonの支配力は小さくなる。より多くの労働組合が組織されれば、業務への影響も出てくるだろう。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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