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【事業開発の達人たち】事業作りに必要なのは「自己開発」と「仲間作り」--AIoTクラウド・廣澤慶二氏【後編】

永井公成(フィラメント)2021年04月21日 09時00分
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 企業の新規事業開発を幅広く支援するフィラメントCEOの角勝が、事業開発やリモートワークに通じた、各界の著名人と対談していく連載「事業開発の達人たち」。今回はシャープのグループ会社であるAIoTクラウドのプラットフォーム事業部で企画開発を担当されている廣澤慶二さんにお話を伺いました。

キャプション
AIoTクラウドのプラットフォーム事業部で企画開発を担当する廣澤慶二さん

 前編に続く後編では、現在AIoTクラウドで廣澤さんが取り組まれていること、事業開発でぶつかった壁とその解決方法、そして廣澤さんが考える事業開発で必要なことなどについてお話しいただきました。

冷蔵庫をあけて「ビールがない」ことのない世の中に

角氏:いまAIoTクラウドではどんなことされてるのでしょうか。

廣澤氏:いまは、AIoTクラウドのプラットフォーム事業部というところに在籍しているのですが、この中に「IoT機器開発支援ソリューション」「AI/データ利活用ソリューション」「IoT-EC連携ソリューション」「プラットフォーム連携支援ソリューション」とあります。私のチームで対応しているのはIoT機器開発支援ソリューションとIoT-EC連携ソリューションです。


 IoT機器開発ソリューションは、これまでIoT化されていなかった機器を扱われているメーカーさんなどと一緒になって、IoT化を実現していくというようなお仕事をさせていただいています。こちらのほうは、ただ技術を入れてネットワークにつながるというものではなく、「それによってどういうお客さんにどんな嬉しいことがあるのか」というところから一緒になって価値を作り出しています。具体的には、顧客像の設計やインタビュー設計を担うとともにアプリも一緒に作り込んでいきました。

角氏:なるほど。メーカーさんということは、たとえば、家電メーカーさんに対して提供されることもあるという感じですか。

廣澤氏:そうですね。シャープのグループ会社ではありますが、シャープの名前がついていませんので、いままでは競合であったような会社さんとも一緒に価値を作っています。

角氏:非常に面白いですね。シャープさんといえば、ほかの会社さんがあまり作らないような意外な切り口で新しい商品を作っていかれる会社のカルチャーが有名ですが、そのカルチャー自体を売りものにするということを体現されているんですね。

廣澤氏:そうですね。続きまして、2020年の12月にリリースしたIoT-EC連携ソリューションがあります。こちらは「Amazon Dash Replenishment(アマゾン ダッシュ リプレニッシュメント)」という仕組みを使って、消費財の残量をセンサーで検知・管理して、なくなる前に配達するものです。オープンイノベーションとして、Amazonさんの仕組みを使って、これまでIoT化されていなかった消費財メーカー様と一緒に新しい価値を作っていくという取り組みです。

 子育てをされている方など、重い荷物を持って帰るのが難しい方のために、ニューノーマル時代の新しいショッピングスタイルとして打ち出しています。いろいろな消費財メーカー様からご興味をいただいて、一緒にプロジェクトを進めているというような状況です。


角氏:なるほど。この資料にある「AIoT連携している米びつ」って、もうあるんですか?

廣澤氏:作りたいなとは思っています。お米はスーパーから持って帰るのが大変ですし、なくなったらかなりダメージがありますよね。

角氏:そうなんですよね。うちはお米を生協さんで頼んでいるんですけど、注文するタイミングが早すぎると家の中で邪魔になっちゃうし、遅いと心配になってパスタの頻度が多めになっちゃう。AIoT米びつができるとすごく嬉しいですね。同じく資料にある「ビールの自動補充冷蔵庫」もですけど。

廣澤氏:そうですね。冷蔵庫をあけてビールがないことがない世の中を作りたいなと。

角氏:すごく面白いです。これはたしかに技術だけでは開発できないし、いろいろやってみて、初めて実現するものですよね。

廣澤氏:そうですね。はい。

角氏:廣澤さんみたいに、へこたれずにいろいろなアイデアを出し続ける、出しまくり続けられる素養がないと難しいでしょうね。

廣澤氏:そうですね。今回のDash Replenishment対応のIoTというところも、消費財メーカー様にお話すると「うーん。面白い!……で、これはどういうこと?」というような反応になるので、モックを作って試していただいて、そこで反応を見て次のステップに進めています。

事業開発に必要なものは「自己開発」と「仲間作り」

角氏:廣澤さんが考える、事業開発に必要なものってどんなものだと思われますか。

廣澤氏:「自己開発」と「仲間を作っていくこと」だと思っています。後者は実際にプロジェクトに携わるチームを作るところもありますし、あとは協力してくださる方を引き込んでいくところですね。そこで一度お話をさせていただくと、実際にプロジェクトが動き出した際に間接部門の方や工場の方が「あ、あの時のね」という形で協力してくださるので、そういった仲間を作っていきます。いまはオープンイノベーションで社外で仲間を作っていくというところで、同じ境遇の新規事業を開発する方の仲間作りをしています。

角氏:社外の人の仲間作りとおっしゃいましたが、どうしたらいいか分からないって方ってすごく多いと思うんですよね。何か心がけていらっしゃることってありますか。

廣澤氏:社外の方とお話しするときにいろいろお話を伺っていると、すでに壁にぶつかって悩まれている方々が結構おられるんです。そこからさらによくよくお話を聞いてみると「その壁は自分もぶつかったことあるな」ということがあるので、「こうやったらいいかもしれないですね」とアイデアをお出しして、そこに実際に自分も協力させていただくようにしています。

 先ほどのIoT機器を一緒に開発させていただいている会社さんも、最初はインタビューをすることはプログラムに入っていなかったのですが、お話しするうちに「顧客をうまく設定したほうがいいですね」という話になりました。そこからペルソナを作るとなった時も何種類かペルソナを作って、すごく細かく設定を書いてインタビュー設計を行いました。

角氏:一昔前の家電メーカーさんとかだと、多くの開発は技術シーズドリブンでやられるような印象があったと思うんですけど、いまでは顧客起点で商品開発していくことが普通になりつつあるんですね。

廣澤氏:この「顧客起点」という考え方がAIoTクラウドに根付いたのは、IoTを他社さんに先行して始めていた中で「IoTによる価値ってなんだろう?」というところが、ほかのメーカーさんを見ても答えがないので、お客さんを見るしかないということになりました。

「誰のための商品か」を明確にイメージする

角氏:なるほど。ありがとうございます。いまのお話の中で、他社さんが壁にぶつかられた時に、「それは自分もぶつかったことがあるな」と思われたとおっしゃっていたじゃないですか。そのぶつかった壁と、それをどう乗り越えたのか教えていただけますか。

廣澤氏:私がfunbandを開発していた時は、私自身もターゲットでしたし、周りの広島出身の方々もターゲットというところで、本当に誰のための商品かが明確でした。そこでインタビューをして何が刺さるかを見つけるということをやっていました。

 今回IoT機器の開発に携わらせていただいた他社さんに関しては、ペルソナが誰かというところが明確ではなかったので、まずは具体的なペルソナを見つけるところからはじめました。事業開発というものは進んでいくにつれていろいろな困難が出てくるものですが、困難に直面したとき、迷ったときに、「インタビューで迫れたユーザーの生の声」が、回帰すべき原点・背骨になると思うので、それを一緒に見つけることができたのが良かったなと思います。

角氏:なるほど。まさにデザイン思考ですね。実在しない人のことを勝手に想像しちゃうと考えがぶれるということなんでしょうね。「みんなこう言っている」と言うけど、その“みんな”って誰だよということですよね。

廣澤氏:そうですね。そこが役員さんとかに上申する際に、何か言われると「ん?違うかも」と思ってしまうんですけど、ちゃんと声を聞いていればぶれずに再提案することができます。それを心がけています。


角氏:大きい主語で“みんな”とか言い出すと、それが誰のことなのか分からなくなってしまう。でもしっかりとインタビューをして、実在する人がこういう思いでこの製品をほしいと言っているんだということがちゃんと自分の中で掴めていたら、それがいざという時、何かあった時にぶれない指針になってくれるということですかね。

廣澤氏:そうです。おっしゃる通りです。

スマートホームから「スマートライフ」へ

角氏:最後に、ご自身のAIoTクラウドの事業に対して今後どうしていきたいとか、そういった思いの部分もお聞きしたいと思います。

廣澤氏:AIoTクラウドになって他社さんの新規事業のチームといろいろとやらせていただくようになりました。これまで電機メーカーの中にいましたが、新しく消費財のメーカー様など、さまざまな業界の方といろいろな取り組みをさせていただいて、どんどん場が広がっています。そういった他社さんの仲間と協力して、私たちが価値を提案したり、逆に助けていただいたり、そういったことを続けてAIoTクラウドという場で多様な分野の方々を巻き込んで「スマートライフ」実現に向けて、より面白い事業開発を広げていきたいです。


角氏:なるほど。「スマートライフ」についても少しご説明いただけますか。

廣澤氏:これまで家電だけで「スマートホーム」を提案していましたが、それだけではなく先ほどのIoT-ECみたいなスマートストックや、そういったところに加えて建物をスマートにするというところで、鍵や部屋の状態をスマートにする、はたまた建物の周りにあるいろいろなサービスと連携することによって、家電だけではないさまざまなものとつながっていくことで、顧客体験価値を上げていくことを「スマートライフ」と考えています。

角氏:いままでほんのちょっとしたことのために人間の一手間が必要だったりとか、目が離せかったりとかして、そこがストレスになっている。冒頭にお聞きしたビールが冷蔵庫にないとかもそれですよね。そういった「ちょっとしたストレス」がなくなって喜びに変わっていくような生活がテクノロジーによって実現されることがスマートライフということなんですね。

廣澤氏:そうですね。ありがとうございます。

角氏:わかりました。本日はどうもありがとうございました。

角 勝

株式会社フィラメント代表取締役CEO。

関西学院大学卒業後、1995年、大阪市に入庁。2012年から大阪市の共創スペース「大阪イノベーションハブ」の設立準備と企画運営を担当し、その発展に尽力。2015年、独立しフィラメントを設立。以降、新規事業開発支援のスペシャリストとして、主に大企業に対し事業アイデア創発から事業化まで幅広くサポートしている。様々な産業を横断する幅広い知見と人脈を武器に、オープンイノベーションを実践、追求している。自社では以前よりリモートワークを積極活用し、設備面だけでなく心理面も重視した働き方を推進中。

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