ソニーとパナソニックが新体制へ--その中身から読み解く電機大手2社の今後 - (page 2)

2022年4月に持株会社のパナソニックホールディングス発足へ

 パナソニックは、2021年4月1日においては、CEOに楠見雄規氏が就任したことだけが大きな動きだが、これが新生パナソニックに向けた第1歩となる。楠見氏は、4月1日のCEO就任に続き、6月24日に開催予定の定時株主総会および取締役会を経て、代表取締役社長に就任する予定であり、さらに、10月には、現在の社内カンパニー制を廃止して、事業体制を再編。2022年4月1日に、持株会社のパナソニックホールディングスを発足し、その傘下に、8つの事業会社を置く新体制へと移行することになる。

4月1日にパナソニック CEOに就任した楠見雄規氏
4月1日にパナソニック CEOに就任した楠見雄規氏

 新体制では、白物家電や空調、照明などの事業を行うパナソニックのほか、オートモーティブ事業を行うパナソニックオートモーティブシステムズ、スマートライフネットワーク事業を行うパナソニックエンターテインメント&コミュニケーション、ハウジング事業を行うパナソニックハウジングソリューション、現場プロセス事業やアビオニクス事業を担当するパナソニックコネクト、デバイス事業を担当するパナソニックインダストリー、エナジー事業やテスラ事業を担うパナソニックエナジー、間接部門などを集約したパナソニックオペレーショナルエクセレンスを設立する。さらに、スポーツマネジメント事業強化の目的にした完全子会社として、パナソニックスポーツを設立し、スポーツマネジメント事業を承継させる。

 同社では、「パナソニックホールディングスは、各事業会社の事業成長の支援と、グループ全体最適の視点からの成長領域の確立に特化し、グループとしての企業価値向上に努める。また、分社化した各事業会社は、より明確になった責任と権限に基づき自主責任経営を徹底することにより、外部環境の変化に応じた迅速な意思決定や、事業特性に応じた柔軟な制度設計などを通じて、事業競争力の大幅な強化に取り組む」としている。

 パナソニックの楠見CEOは、4月1日付で発表したコメントのなかで、持株会社への移行の狙いを改めて示してみせた。

 楠見CEOは、「CEOという重責を担うこととなった。引き受けた以上は精一杯努めたい。従業員と力を合わせて前進していきたい」と前置きし、「パナソニックは、すべての事業において、攻めるべき領域に集中し、徹底的に競争力を高める『専鋭化』を目指すために、持株会社制に移行することを決断した。この再編を経て、すべての事業を、し烈な競争のなかでも勝ち残ることのできる強い事業にしていく。この姿に向けて、自主責任経営のもと、事業の特性に合わせた施策をとりやすい体制を構築していきたい」とする。

 そして、「そもそも、なぜ今改めて事業競争力を高める必要があるのか」と自問自答しながら、「それは、創業者の理念に立ち返れば明らかである。パナソニックは綱領のなかで、『社会生活の改善と向上』と『世界文化の進展』に寄与することを、社会に対して約束している。この高い理想は、時代の経過とともに社会が進展してきた現在も変わらない存在意義である。ただし、パナソニックが社会に対し、貢献を果たすには、お客様に選んでいただける力を身に着け、日々磨き続けていくことが不可欠である。それを成し得てこそ、真のお役立ちが叶い、当社事業のたゆまぬ発展を社会から認めてもらえる」とする。

 また、「誰よりも良い商材を、より早く、より多くのお客様にお届けし、理想的なくらし、社会の実現を目指す」、「地球環境保護など、グローバルな課題解決に大きな貢献を生み出す」といった目標を打ち出しながら、「こういった高い目標を設定し、知恵を出しあってスピードを上げ、そこに近づけていくことを目指していきたい。オペレーション力の強化、ブランド力の向上、デザイン経営の推進などの取り組みも今後行っていくが、まずはお客様や社会への貢献では誰にも負けないという志を持ち、全従業員一丸となって前進していきたい」とし、「私は、松下幸之助創業者によって設立されたパナソニックという会社を、心より誇りに思っている。いま一度、創業者の理念に立ち返り、皆が誇りと夢をもって集える会社にしたい」と抱負を述べた。

プラズマ、液晶テレビ撤退以上の荒療治の可能性も

 前任の津賀一宏氏は、55歳で社長に就任し、9年間という長期の社長在任期間となった。その間、就任した年に7000億円以上の赤字を計上して、瀕死の状態のパナソニックを、看板事業であったプラズマディスプレイ事業の撤退のほか、液晶ディスプレイ事業からも撤退。さらに、半導体事業の売却などの荒療治で業績を回復させてきた。

 56歳となる楠見氏も長期政権が見込まれ、そのなかで、パナソニックの課題となっている「低収益体質からの脱却」に向けた取り組みが行われることになる。そこには津賀氏以上の荒療治が施される可能性もある。

 すでに就任前から、「今後のコアといえる事業は、競合他社が簡単には追いつけないような強みを、1つか2つは持ち、その強みによって、社会やお客様への貢献力、スピードが担保される事業でなくてはいけない。そうした状態になりえない事業は、冷徹かつ迅速な判断によって、ポートフォリオから外していくことも考えていく必要がある」と発言している。

 プラズマテレビの終息や三洋ブランドのテレビの方向づけを行い、白物家電欧州白物家電の撤退や低収益事業である車載事業の再建に取り組んできた経験を持つ楠見氏だけに、社内外から、その一手に注目が集まっている。

 パナソニックの新たな体質改善がはじまることは確かであり、それがどんな成果につながるのかに注目が集まる。

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