シャープ 代表取締役会長兼CEOの戴正呉氏は3月30日、社内イントラネットを通じて、CEOメッセージを配信した。
タイトルは、「“正々堂々の経営”と“事業ビジョンの実現”を通じて、社会からより信頼され、期待される企業を目指そう」とし、連結子会社のカンタツにおける不適切会計問題について報告するとともに、改めて社員に対して、「正々堂々の経営」の実践を徹底するものになった。なお、ほぼ毎月配信されているCEOメッセージは、今回が2021年最初のものとなった。
今回のCEOメッセージの最初のテーマは、正々堂々の経営とした。シャープでは、レンズ製造事業などを行う連結子会社のカンタツが、2018~2020年度まで、注文書のない状況下で売上げを計上したり、返品特約付き売買について引き当てを行うことなく売上げを計上したり、簿価を有しない在庫品について循環取引を行うなどの不正または誤謬と評価すべき事象が行われていた事実が発覚し、弁護士や公認会計士を含む調査委員会を設置して網羅的に調査を実施。戴会長兼CEOは、3月12日に、調査委員会から調査報告書を受領。同時にその内容を対外公表していた。この日に行われた2020年度第3四半期決算発表でも、シャープ 代表取締役社長兼COOの野村勝明氏が、この件に関して説明するとともに、陳謝していた。
CEOメッセージでは、「報告書によると、2018年以降、カンタツでは、経営層をはじめとした社内のコンプライアンス意識の低さと事業環境の悪化などが相まって、法令や会計基準よりも事業計画達成を優先する風土が生まれていた。この結果、業務ルールがおろそかにされ、さまざまな手法で、本来認められない売上げを計上する不正が繰り返されていた」とした。
「ガバナンスの強化や法令遵守について、CEOメッセージで、これまでに6回に渡って徹底し、また折に触れ、勉強会や研修などを実施してきたにもかかわらず、こうした事態が発生したことは残念である。企業として、事業計画の達成を目指すことは当然であり、シャープでは、厳格な信賞必罰を行うことで、計画達成に向けた最善の努力を促している。だが、だからといって、不正を行うことは、もってのほかである。二度と同じ過ちを繰り返さぬように、カンタツでは、経営層を含む、全社員を対象としたコンプライアンス研修の再実施、取締役会の監督および監視機能の強化、業務プロセスの見直し、内部通報制度の周知徹底など、早速、さまざまな再発防止策を講じている」と、強い口調でとがめながら、対応策について説明した。
さらに、「このような不正が、3年もの間、発覚せず行われ続けた背景には、カンタツ社内だけでなく、シャープグループとしてもガバナンスが十分機能していなかった問題があることを認識しなければならない」とも述べ、「シャープは現在、事業の分社化やM&Aを積極的に進め、子会社の数が増加しており、こうした面でも統制のさらなる強化が不可欠である。子会社の経営管理体制の見直しや本社部門による管理、監督機能の強化など、具体的対策を進めていく。社員には、シャープが行動規範に掲げる“正々堂々の経営”を、いま一度肝に銘じ、コンプライアンス遵守の事業活動を徹底してほしい」と呼びかけた。
3月12日に発表した2020年度第3四半期決算についても報告した。同決算発表は、不正会計問題の調査のため、予定よりも約1カ月遅れで発表することになった。
戴会長兼CEOは、「第3四半期は、新型コロナウイルスの再拡大に伴う各国の規制強化や規制の延長、世界的な半導体不足などの影響を受けたものの、売上高と営業利益、当期利益が3四半期連続で改善しただけでなく、3セグメントのすべてで、前四半期から収益を回復させることができた。また、財務面においても、引き続き、在庫の適正化や純有利子負債の削減が進み、フリーキャッシュフローの黒字幅が拡大するなど、着実に改善傾向にある。また、年間の最終利益は公表値を達成できる見込みである。このように業績が着実に回復している状況を踏まえ、2020年度配当の増配も発表した」と述べた。
決算説明会の出席者からは、「業績の回復に加え、財務体質改善の取り組みが着実に進展していることを感じられた」「白物家電の好調継続は想定以上」といった前向きな評価の声があがる一方で、「ディスプレイデバイス事業やオフィス事業の収益回復がやや緩やかな印象」といった声もあったことに触れながら、「一部格付機関が、今回の決算を踏まえ、シャープに対する見方を上方修正するなど、全体としては良い決算になった」と総括した。
また、先週、一般社員にとっては、初となる四半期賞与の支給を行ったことに触れ、「今回の部門業績評価では、赤字部門の数が大幅に減少するだけでなく、とくに利益面において当初計画を上回る部門が多数あったことから、7割以上の部門の評価ランクが前期よりアップする結果となった。皆さんの努力に改めて感謝する」と述べ、「明日(3月31日)は、2020年度の最終日を迎える。2020年度の業績は、新型コロナウイルスの影響を受けるなかでも順調に推移しているが、最後まで抜かりなく、それぞれの職務をまっとうしてほしい」と語った。
3つめのテーマが、「事業ビジョンの実現に向けて」とし、4月1日付で実施する組織変更などをもとに、「ブランド事業」「デバイス事業」「中長期的な成長に向けた人材育成」の3点から説明した。
ブランド事業では、まず「オフィス事業」について触れ、「グローバルでテレワークが急拡大するなど、コロナ禍を契機に市場が大きく変化した事業のひとつがオフィス事業である。大胆な事業変革が急務となっており、これまでのオフィス主体から、ワーク主体へと変化させ、仕事の仕方そのものを変革する事業体へと転換を図ることが大切である。また、工場や店舗など、さまざまな分野における企業向けソリューションを拡大していく必要がある」とした。
また、「業務用ディスプレイ事業」の競争力強化を目的に、欧米を中心に海外での販売に強みを持つSNDS(シャープNECディスプレイソリューションズ)と、国内販売で強みを持つシャープのビジュアルソリューション事業、開発や生産に強みを持つテレビシステム事業の三者が連携して、開発、生産から販売までのバリューチェーンの効率化を推進していることを説明。「SNDSの黒字化にめどがつきつつあり、今後はより一層連携を深め、One SHARPで、さらなる事業拡大を実現する」と述べた。
「白物家電事業」では、「2020年度は、国内を中心に大きな成果をあげることができたが、これはコロナ禍における特需といった面もあり、決して先行きを楽観してはいけない」と厳しく評価。「今後は、国内におけるAIoT機器やサービスの販売を引き続き強化するとともに、海外にも横展開することでさらなる事業拡大を実現し、持続的成長の確かな基盤を構築していく」と述べた。
また、成長を遂げているプラズマクラスターイオンを中軸とした「PCI事業」と、グローバルでさらなる事業拡大が期待できる「空調事業」を分離し、それぞれの事業特性に合わせた体制を構築するとともに、独立した収益管理を行うことで、両者の成長を一層加速する考えも示した。
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