シャープは、2021年3月期第3四半期(2020年4~12月)連結業績を発表した。売上高は前年同期比3.8%増の1兆8168億円、営業利益は0.4%増の620億円、経常利益は26.6%減の438億円、当期純利益は10.8%減の414億円となった。
また、第3四半期(2020年10~12月)の売上高は前年同期比6.3%増の6734億円、営業利益は21.3%増の323億円、経常利益は54.0%減の139億円、当期純利益は28.3%減の173億円となった。
同社では、連結子会社であるカンタツにおいて、不適切な会計処理の疑義が生じ、それに伴う調査を行ってきたことで決算発表の時期を遅らせていた。これに伴い、2018~2020年度までの通期連結業績を修正した。3カ年合計での売上高への影響はマイナス75億円、当期純利益ではマイナス76億円の影響があるとした。
シャープ 代表取締役社長兼COOの野村勝明氏は、「ご迷惑、ご心配をおかしていることをお詫びする。事態を重く受け止めている。再びこうした問題を起こさないように、調査報告書にある再発防止策を確実に実行するとともに、さらなるガバナンス強化に取り組む」と陳謝した。
一方、業績については「新型コロナウイルス再拡大に伴う各国の規制強化や規制の延長、部材隘路(あいろ)や物流隘路による影響はあったものの、2021年3月期第3四半期の売上高、営業利益は、おおむね想定線で推移し、第2四半期実績からは、さらに伸長した。スマートライフ、8Kエコシステム、ICTの3つのセグメントのすべてで、第2四半期から収益が回復。とくに、スマートライフは、白物家電などが好調で、前年同期から大幅な増益になった。新型コロナウイルスの影響や部材隘路の影響が継続するなか、足元では原材料価格の上昇も目立っている。製品の高付加価値化やグローバル展開の強化、原価力の向上に努め、引き続き業績の回復を図っていく」とした。
第3四半期における新型コロナウイルスの影響は、売上高で約130億円、営業利益で約40億円のマイナス影響があったという。
また、「堺ディスプレイプロダクト(SDP)の減損処理を行い、通期予想に織り込んでいなかった持分法投資損失が生じた。だが、通期の最終利益は公表値を達成できる見込み」とした。
なお、シャープは、SDPが持つ株式を、SDPに売却することを、2月25日付で発表していたが、3月12日に、SDPから売買中止の申し入れがあり、株式売却の中止を発表した。野村社長兼COOは、「譲受人の強い要望によるものであり、シャープが別の売却先を探しているわけではない」とした。
第3四半期(2020年10~12月)のセグメント別業績では、スマートライフの売上高が前年同期比10.8%増の2726億円、営業利益は72.3%増の265億円。「白物家電が国内のプラズマクラスターが大幅に伸長するとともに、冷蔵庫や洗濯機、調理家電などが好調に推移した。デバイスも堅調な顧客需要のもと、前年同期実績を上回った。各事業の原価力が着実に向上したことや、白物家電の高付加価値化が進んだ」としたほか、「白物家電の収益重視の姿勢を継続し、AIoT家電の国内外への展開強化を進める。白物家電の今後の成長戦略は新年度の中期経営計画のなかで示したい」と述べた。
8Kエコシステムの売上高は前年同期比4.2%増の3379億円、営業利益は25.9%減の74億円。「営業利益は前年実績を下回ったが、業績は回復基調にある。PCやタブレット向けパネル、大型ディスプレイが伸長したこと、完成したテレビは、日本、アジア、米州で売上高が増加した。一方で、車載向けディスプレイやMFPは、新型コロナウイルスの影響が残り、減収となった。また、ディスプレイ事業やテレビ事業で部材隘路が発生している。半導体の部材調達が難航しており、それが液晶パネル価格の上昇につながっている。新型コロナウイルスの動向を鑑み、パネル在庫を抑制したことや、オフィス閉鎖により、MFPのプリントボリュームが減少していることがマイナスに影響した」と述べた。
ICTは、売上高が前年同期比1.6%減の869億円、営業利益が16.0%減の37億円。「半導体が逼迫するなど、一部部材に隘路が発生した。通信事業では、マーケットニーズを捉えた商品展開が進捗。PC事業では、GIGAスクールをはじめ教育向けPCなどで伸長した。また、スマホのミッドレンジモデルが増加し、モデルミックスが変化し、減益になった」という。
なお、2020年度通期の業績見通しは公表値を据え置き、売上高は前年比3.9%増の2兆3500億円、営業利益は59.3%増の820億円、経常利益は39.5%増の700億円、当期純利益は3.6倍となる500億円とした。
「第3四半期まで業績はおおむね想定通りに推移、通期予想には変更はない。新型コロナウイルスの感染が終息していない状況下にあって、第3四半期は着実に業績が回復した」としながらも、「しかし、子会社における不適切な会計が行われていたことが確認された。業績の向上や財務体質の改善だけでなく、ガバナンスや従業員の安全、社会貢献なども重要な課題であると考え、経営に取り組んできたつもりであったが、まだ十分ではなかったと反省している。今後、これまで以上にESGに注意を払い、経営に取り組んでいく」と述べた。
会見の冒頭で、カンタツの不適切な会計処理について説明したシャープ 執行役員 管理統轄本部 管理本部長の榊原聡氏は、「2018~2020年度まで、カンタツおよび子会社において、注文書のない状況下で売上げを計上したり、返品特約付き売買について引き当てを行うことなく売上を計上したり、簿価を有しない在庫品について循環取引を行うなどの不正または誤謬と評価すべき事象が行われていた」とし、弁護士や公認会計士を含む調査委員会を設置して網羅的に調査を行ってきたことを報告。
その発生原因として、「カンタツの経営者による法令、会計準則の軽視」、「業績優先を意識する社内の風土」、「牽制機能の形骸化による統制の不備」、「管理体制の不備・脆弱性」の4点をあげたほか、さらに、シャープにおけるグループガバナンス上の課題として、「グループ内部統制の機能が奏功しなかったこと」、「子会社役員人事についての親会社としての管理の不十分性」、「子会社の経営管理(モニタリング)が不十分であったこと」、「親会社による子会社監査の拡充」をあげた。
再発防止に向けた取り組みとしては、「会計基準の順守等コンプライアンスに関する意識の醸成や会計知識の強化、相互牽制の強化や手続順守の徹底および監査・監督の強化、シャープによる管理・監督の強化を図る必要がある」とした。
2018年度の子会社化以降、信賞必罰のシャープの手法が、不適切な会計処理の要因になったのではないかとの質問については、「子会社化した判断は間違っていなかった。グループ子会社の管理、監督も強化しなくてはならない。カンタツは世界有数のレンズメーカーである。技術は優秀だが、日本と中国に工場を作り、そのうちのひとつの工場の採算が悪かった。IPOを目指していたこともあり、独立性を重視していたほか、100%子会社ではないということも影響していた。役員は入れていたが、監査役を入れていなかった点に問題があった。突っ込みが浅かったとは感じている。調査委員会からは、シャープからの圧力はなかったという報告を得ている」(野村社長兼COO)などとした。
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