NTT Comの新規事業創出社内コンテスト「DigiCom」の成果--上位3チームと事務局が登壇

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 「常識を再定義するニュービジネスが前例なき時代を切り拓く」をテーマに、2月いっぱいかけて開催されたオンラインカンファレンス「CNET Japan Live 2021」。2月19日は、NTTコミュニケーションズが「社内から新規事業を創出する~ NTT ComのビジネスコンテストDigiCom(デジコン)のチャレンジ~」と題して講演した。

 大企業の新規事業創出が叫ばれて久しいが、いつも熱量高くアイデア溢れるといった事例はそれほど多くはないだろう。そんななか、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)の新規事業創出社内ビジネスコンテスト「DigiCom」では、毎年数百名から応募があり、6年目で延べ2639名もの社員が参加しているという。

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新規事業創出社内ビジネスコンテスト「DigiCom」
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毎年幅広い層が数百名参加

 2016年にスタートした同社の社内ビジネスコンテストは、当初は「社員で楽しみながら、新しいことを生み出していこう」というイベントだった。そこから「事業化しないともったいない」と言われるようなアイデアが生まれるようになり、6回目となる2020年は、次世代の事業の柱を生み出す「新規事業創出」という方針を強く打ち出した。また、参加者への教育プログラムを充実させ、高い評価を獲得したチームは、事業化支援を受けられる“出口”も明確に設定。結果、若手チームが最優秀賞を獲得する流れを生んだ。

DigiCom事務局の斉藤久美子氏(中央下)、Space Techチームの井上大夢氏(左下)、コロコロコロッナチームの宮岸大輝氏(左上)、Cats Me If You Canチームの岸本進也氏(右上)
DigiCom事務局の斉藤久美子氏(中央下)、Space Techチームの井上大夢氏(左下)、コロコロコロッナチームの宮岸大輝氏(右上)、Cats Me If You Canチームの岸本進也氏(左上)

 このセッションでは、DigiComの事務局メンバーであるNTTコミュニケーションズ イノベーションセンター プロデュース部門の斉藤久美子氏が登壇。また、2020年11月に開催されたDigiComのDemodayイベントの上位3チームの代表として、Space Techチームの井上大夢氏、コロコロコロッナチームの宮岸大輝氏、Cats Me If You Canチームの岸本進也氏が登壇し、DigiComにかける想いや今後の展望を語った。

「コンテストで終わらせない」--DigiComから新規事業を創出へ

 事務局メンバーとしてDigiComを6年間育ててきた斉藤氏は、イノベーションセンター プロデュース部門に所属。社内で新規事業を手がける人の支援のみならず、自らも風況データや低遅延映像配信に関する新規事業を手がけている。新規事業創出の当事者として、気づきを支援に生かしているという。

 例年、さまざまな組織から幅広い層が組織横断で参加するというDigiCom。トップ陣の熱量も高く、2020年11月のDemodayでは、NTTコミュニケーションズ代表取締役社長の丸岡亨氏を筆頭に、役員、幹部、各組織長、またNTT Comグループの社長など、総勢30名以上が参加したという。「コンテストを一過性のイベントで終わらせず、社内の新規事業創出支援プログラムに連携することで、事業化を目指した継続的な取り組みができる道筋をはっきりと示した」と斉藤氏は語る。

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2020年11月のDemodayには丸岡社長を筆頭に総勢30名以上の役員・幹部が参加

 とはいえ、社員に新規事業創出の経験者はほとんどいない。そのため、DigiCom事務局でワークショップやメンタリングなど初心者向けの手厚い研修を企画・運営し、参加者のやる気をサポートした。「このように試行錯誤を積み重ねることで、DigiComを社内に定着させ、“新しい価値創造の文化醸成”につなげられていると思う」(斉藤氏)。今回のDemodayは、コロナ禍によりオンラインで開催されたが、参加した幹部らがDemoday開催中にチャットで応援メッセージが送るなど、盛り上げるための工夫も凝らしたという。

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ワークショップやメンタリングなど初心者向けの手厚い研修を用意

 まさに新規事業創出を加速中という様相だが、毎年多くのアイデアが集まる熱量の高さを実現できた理由について、斉藤氏は「課題にぶつかるたび乗り越える、その積み重ねでいまに至った」と答えた。

 たとえば、初年度には「遊んでいると思われそうで参加を躊躇した」という意見があったことから、DigiComへの取り組み時間も業務時間として認めることを明確にルール化し、周知したという。また第3回では、コンテストで終わらせてしまうのはもったいないと言われるようなアイデアも出てきた。そのため、本格的に新規事業創出支援に関する議論を始めて、「BI Challenge」という新たなプログラムを生み出した。

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過去に開催された社内ビジネスコンテストの内容

 そして2020年には、「新規事業創出を目的とする」方針を強調。次の柱となる新事業を創出すること、社内で0から1を生み出すこと、熱意と実力のある社員をブーストさせる仕組みを提供することの3点を周知した。「年1回のイベントであるDigiComを、通年で実施する新規事業創出支援プログラムBI Challengeの1つの入り口として位置付けた」(斉藤氏)

 2020年にDemodayで受賞したチームのアイデアは、まさに事業化していくフェーズにステップアップしたところだ。斉藤氏のプレゼンに続き、Demodayの上位3チームの代表がアイデアを紹介した。

「宇宙の通信キャリア」を目指す入社2年目チーム

 最優秀賞を獲得したSpace Techチームは入社2年目の若手メンバーによって構成されたチームだ。代表である井上大夢氏は、本業でアカウントセールスとして、宇宙業界の顧客と関わるうち、自らも宇宙に関する事業を手がけたいとの想いが湧いたという。

 宇宙産業の世界市場は、2020年には40兆円、2030年には100兆円、2040年には200兆円に成長するという試算もあるほど、ビジネス性が高まっている。また、衛星の小型化や再利用ロケットなどによる打ち上げの低コスト化が進み、AIやセンサーの発展により多種多様な宇宙データを取得できる時代だ。井上氏は「宇宙は、民間でも手が出る領域になってきた」と話す。

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宇宙産業の世界市場規模

 井上氏らは、「宇宙をより近いものに」というミッションと、「近くなった宇宙を拓いていって、地球をより良い世界にしていく」というビジョンを掲げ、アイデアを発表したという。見据えた課題は3つだ。1つは、人工衛星と地球との通信時間が、1日40分程度とかなり短いこと。また、世界中の地上局が個別のネットワークになっており、インターネットのように網羅的に使用できないこと。そして、衛星からクラウドまでの接続性の悪さだ。

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井上氏が説明した宇宙との通信の課題の一例

 井上氏はDemodayのプレゼンにおいて、「この3つの課題は、通信会社だからこそ解決していける。かつ、未来のイノベーションを支援するために、インフラの通信会社としてやるべきことではないか」と経営陣に迫ったという。「入社1年目で、宇宙事業をやりたいと漠然と思っていたけれど、お金もかかるし、NTT Comの既存事業ではない。社長にお話しさせていただきたいけれど、どうすれば良いのだろうと思っていたとき、DigiComで本選まで残れば社長と幹部にプレゼンできると知り、『これだ!』と思って参加した」(井上氏)

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経営陣に直接アピールするためにDigiComに参加した
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宇宙の通信キャリアを目指す

 「コロナ禍によるオンラインでの苦労」について問われた井上氏は、「私を入れて5人の同期チームだが、面識がないのに口説いて一緒にやることになったメンバーもいた。全く知らない同士でいきなりリモート、というのは大変だった」と明かしたが、さまざまなオンラインツールを活用してそれを乗り越えたという。

 井上氏はDigiCom参加を通じて、「言ってみる、やってみる、やり続ける」ことで、今回のように道が開けることを学んだと話す。今後については「1円でも稼ぐ、1ユーザーつくことが、事業化の第一歩だと思っている。まずはそこを実現したい」と展望を語った。

話すきっかけが見つかるビデオパーティ「TagTalk」(特許出願中)

 次に登壇したのは、入社1年目の新人というコロコロコロッナチームの宮岸大輝氏だ。入社早々、リアルに同期と会えない原体験から、話すきっかけが見つかるビデオパーティ「TagTalk」というアイデアを発表した。入社前からDigiComのことを知っており、興味を持っていたという宮岸氏。同じ社宅の新入社員と部屋で遊んでいた際に、DigiComに出ることを決めたという。2人が掲げたビジョンは、「オンラインで素晴らしい出会いを生み出す」だ。

「私たちが入社してからの原体験と、これから世界中で起こると思われること。それは、完全オンラインの研修。入社式、歓迎会、懇親会、すべてがオンライン中心になっている。研修が終わると家で一人ぼっち、同期と話しながら帰ることもできなかった。オンラインでは気が合う人をなかなか見つけられず、感じるのは孤独と閉塞感。この課題は、私たちのみならず、これからみんなが直面していく課題なのではと感じた」(宮岸氏)

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コロナ禍に入社したことですべてがオンライン化。そこで感じた孤独感が原体験となった

 複数のルームが存在するビデオチャットでは、途中から会場に入ると、どのルームに入るか迷うことが多い。TagTalkは、各ルームの話題をタグで表示し、各ユーザーの詳細なプロフィール情報を閲覧できる仕組みで、過去に話した人を通知する機能なども提供することで、オンラインでも「話すきっかけ」を見つけやすくした。人事の協力を得て、入社1年目研修の打ち上げで試用したところ、同期からも「話に入りやすい」と好評を得たという。

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TagTalkの利用イメージ
入社1年目研修の打ち上げで試用した結果
入社1年目研修の打ち上げで試用した結果

 宮岸氏は、DigiComの教育プログラムで多くのことを学んだと振り返った。今回のDigiComでは、実際にユーザーヒアリングやニーズの検証を課したというが、DigiCom本選に向けた事業化トライアルの体験を通じて、熱意と実力のある若手が“飛び級”的に育成されている姿を印象付けた。

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宮岸氏がDigiCom参加で学んだこと

迷子猫をすぐに見つけられる世界に

 「私は11年目の中堅で、1位、2位のチームのメンバーたちが入社する前から毎年デジコンに参加しており、今回で3回目の参加になる」と挨拶したのは、DemoDayで3位に入賞したTeam Cats Me If You Canの岸本氏だ。テーマは、あらゆるものが見つけられる“Smart Finding”の世界観で、「あるはずのものがない」という不安を解決すること。困りごとからソリューションを生み出すことに拘って取り組んできた。今回は「迷子猫」の問題だ。

 アイデアの発端は、チームメンバーの1人の経験だ。メンバーが小学生の頃、玄関の扉を閉め忘れたことで飼い猫が脱走し、ようやく見つけた時には、車に轢かれて変わり果てた姿になっていたという。岸本氏は「飼い猫の数は945万匹で、日本の小学生の数より多い。しかし、毎日200匹以上、年間7万匹以上が迷子になっている。しかも、その8割以上が脱走したまま帰ってこれないと言われている」と説明。ユーザーヒアリングなどを通じて分かった「猫が暮らしの伴侶となる人も多い」ことも踏まえて、迷子猫をすぐに見つけられる世界を作りたいと話した。

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日本における迷子猫の実態を紹介
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テクノロジーで飼い猫を見守れるデバイスの提供を目指す

 具体的なアイデアは非公開とのことだが、数ある猫見守りデバイスの中でも、「通信キャリアならではの発想で、世界中どこにいても、どんなに遠くにいってしまっても、確実に見つけられるソリューションを作りたい」と、NTT Comが掲げる新事業ビジョン「Re-connect X」の体現に向けて意欲を示した。

 また、今回は上位を若手メンバーが受賞したことについて触れ、「こういったコンテストに若手から幹部クラスまで参加することによって、NTT Comに対する印象や社内の文化を、変えていけたらなと思っている」と展望を語った。

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