空き家問題の解決に物置きシェアサービス「モノオク」が乗り出す。都内の空き家をモノオク公式スペースとして運用し、物置きシェアサービスの浸透をはかるとともに、空き家の新たな活用法を探る。
空き家を物置きスペースとして活用するのは、東京都との実証実験促進事業として展開するもの。モノオクでは、1月に「東京都スタートアップ実証実験促進事業(PoC Ground Tokyo)」に採択されており、3月18日に本格運用に至った。
モノオクは、荷物の置き場所に困っている人と余ったスペースを活用したい人をつなぐ、物置きシェアサービス。2018年4月のサービス開始以来、登録ユーザー数は2万人を超える。住居の空き部屋や物置など、人が暮らしているスペースの一部を貸し出すことが特徴で、「住宅街の中でも保管スペースを作れることがポイント。自宅近くに収納スペースを確保できる」とモノオク 代表取締役の阿部祐一氏は強みを話す。
阿部氏は以前、民泊のホストをしており、その時の体験がモノオクにつながったという。「経験もコネもない中で、今持っているものを提供したいという気持ちで始めた民泊のホストだったが、ゲストの方にサービスを提供する中で、おもてなしが感謝され、すごく嬉しかった。こうした経験をしていただきたいという思いから立ち上げたのがモノオク。民泊は清掃やリネンの交換など、始めるにあたりハードルもあるが、モノオクならば、スペースがあれば誰でも始められる」と、サービス立ち上げの経緯を話す。
ホストは、モノオクのアプリから「スペースの新規登録」を選び、スペースの写真や広さなどの基本情報を入力。住所や荷物の受け取り方法を設定することで始められ、利用料金は自ら設定が可能。一方、ゲスト側はアカウント登録後、利用開始日や希望の広さなどをホストにリクエストとして送信することで、マッチングされれば、スペースを借りられる。
「既存のトランクルームは料金が高いほか、自宅近くに場所が少ない。不動産の延長になるため手続きが複雑などの課題がある。モノオクはそうした課題をクリアした上で、非常にシンプルなサービスとして提供できる」とメリットを挙げる。
借りられるスペースは基本有人で、保険にも対応。「荷物を取り出せる時間が限られるなどデメリットもあるが、安心感は高い。ホストとゲストの方同士が仲良くなり、旅行先のおみやげを渡したなどのエピソードもあり、人とのつながりの中で荷物を預ける体験ができる」と、荷物の保管に留まらないコミュニケーションの場としても機能しているという。
実証実験として開始する空き家活用は、シンプルなサービス内容はそのままに、貸しスペースとして空き家、空き物件を運用するというもの。モノオクのスタッフが常駐し、有人スペースとして利用できる。物件数は徐々に増やしていく方針だ。
「世田谷区は、全国で最も空き家が多い地域と言われており、その数は約4万9000戸。実証実験開始にあたっては、不動産会社や空き家を活用されている会社の方に協力していただきながら使用できる場所を探していった。一言に空き家と言っても状態はさまざまで、一軒一軒実際に見に行く必要があった。その上で、管理会社経由でオーナーの方の許可を取り、今回の開始にこぎつけた」という。
阿部氏は「モノオク自体が新しいサービスのため、オーナーの方に理解をいただくまでにも時間がかかった。今回、東京都スタートアップ実証実験促進事業として東京都のバックアップを得ていることは、大きな後押しになった」と続ける。
今回の実証実験にともない、4月30日までにモノオクが運営するスペースにトランクルームから乗り換えて対象スペースを利用開始するユーザーを対象に、利用料が2カ月間無料になるキャンペーンも実施する。
東京都内で現在約81万戸とも言われる空き家。モノオクでは今回の実証実験を通して、適切な収支モデルや運用方法を検証していくとのこと。その結果を発表することで、物置きシェアサービスのさらなる浸透を目指すとしている。
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