本来の”ディベート”や”ディスカッション”とは別の面で注目され、著名人の参戦が話題を呼んで熱が入りすぎていた感のあるClubhouseだが、ソーシャルモードの部屋のように”静かに緩く”つながるコミュニケーションを魅力に感じている利用者も少なくない。
子育て真っ最中の女性は、家事と子育てに追われながら、近くに両親や親戚の家もなく、ママ友ともコロナの中で以前ほどの交流がないなど、孤独を感じながら毎日を精一杯こなしていた。そんな彼女にとって、Clubhouseはちょっとした憩いになっている。
トークに参加するわけではない。トークの参加者が友人というわけでもない。
しかし、コロナ禍で会話に飢えている、ごく普通の人たちが他愛もない話をしている様子を聴いているだけで、彼女は心が落ち着くようだと話していた。育児と家事に追われていても参加できるのは音声メディアの大きな利点のようだ。
あるいは、同じクラスタの人たちが世代を超えて集まり、共通の話題で盛り上がる様子も参加者が増えるに連れて増加していった。
あるディスコの時代からクラブの時代まで長く活動してきたベテランのクラブDJが顔を見せると、そこに彼のプレイやトークを楽しみながら育った若手のDJやミュージシャン、他ジャンルのDJを巻き込んで音楽の話に花を咲かせている部屋、同じ取材テーマで意見を話し合う取材先のプレスルームのような部屋。
本来の使い方ではないかもしれないが、一時的な熱狂が収まってくれば、Clubhouseはどんどん多様な表情を見せるだろう。
グループで音声コミュニケーションする道具、サービスは世の中に数多く存在する。
ネットゲームの世界ではdiscordを通じて連絡を取り合いながらゲームする人も多いし、Zoomをはじめとするオンライン会議の道具をビデオオフにすれば音声だけのグループチャットになる。さらにZoomなどには”ウェビナー”と呼ばれる会議の様子を多くの人に見てもらうための仕組み(セミナーなどで使うためのもの)もある。
Clubhouseが持つ音声チャットの機能だけであれば、他で代替できる上、Clubhouseが連携先として活用しているTwitterは、音声チャット機能を「Audio Space」の名称で2020年からテスト運用している。
熱狂も落ち着き、芸能人主催のトークルームが即座に満杯になることも少なくなったClubhouseだが、シリコンバレーの友人に尋ねてみると、居酒屋やバー、ラウンジのような飲み会風トークルームは「今のところ日本だけでの現象」と話していた。
そもそも、飲み会的、あるいはラウンジ的とも言えるトークルームや芸能人の参戦で話題が広まった日本ではClubhouseの認知が広がったものの、米国ではさほど流行しているわけではないという。
実は、こうした”使い方の違い”が、Clubhouseの日本での流行の背景にある。コミュニケーションは人間にとって究極のエンタメでもある。
かつてプレイステーションの父とも言われる久多良木健氏は、まだコンセプト段階でしかなかったプレイステーション3について「人間、一番楽しいのは気の合う仲間で集まって話をすることなんだよ。広帯域でつながるネットゲームが面白いのは、現実社会で集まる場に近くなるから。この世界がさらに進化して現実に近づけばもっともっと面白くなる」なんてことを話していた。
時は2001年ぐらいのことだが、その後、ネットゲームがコミュニティ化し、バーチャルな社会を形成し始めていることを考えれば、久多良氏はまさに慧眼だったと言えるだろう。なにしろ、当時はスマートフォンも無ければ、クラウドコンピューティングという概念すら存在しなかった。
現代、ネットゲームの楽しさの本質は、ボイスチャットで交わす会話にあるというプレーヤーは少なくない。コロナ禍の中で、非ゲーム層がClubhouseに向かうのは必然だろう。飲み会文化が根付く日本で、Clubhouseに火がついたのは必然かもしれないが、さらにこれがグローバルに飛び火するかどうかは、まだわからないが、ユーザーの創造力は時に運営会社の想像を超える使い方を生み出す。
ディベートやディスカッションのために設計されたClubhouseには「挙手」機能がある。意見を言いたい人が手を挙げてスピーカーとして参加するためのものだが、モデレーターには挙手の順番が表示され、また挙手リストをクリアする権限もある。
ある日、この仕組みを利用し“クイズ部屋”を作っているモデレーターを見かけた。
挙手の順番に従ってスピーカーに答えを話してもらうという手法で、まるでクイズ番組のような演出を行っていたのだが、こうした試みがまた、新しい楽しみ方や別の新しいサービスを生み出していくのかもしれない。
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