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OKIのイノベーション活動「Yume Pro」、3年間の歩みとその先--鎌上社長インタビュー - (page 2)

藤井涼 (編集部) 日沼諭史2021年02月15日 10時52分
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「泥臭い」仮説検証を多くの社員が体験し、見方にも変化

——2017年にスタートした「Yume Pro」というイノベーション創出の活動ですが、そもそもこのプロジェクトを始めるきっかけは何だったのでしょうか。

鎌上氏 : OKIはBtoB企業ですので、BtoCの企業よりは目立ちませんが、これまでの歴史のなかで多くのお客様に恵まれ、エアラインや鉄道、金融機関など、さまざまな大企業様から課題解決のためのシステム構築をご依頼いただいています。

 ところが昨今、多くの企業様が先行き不透明な中、デジタルトランスフォーメーションで業務の改革・効率化を進めていくという動きが活発になってきて、お客様からご相談いただく課題・テーマは以前ほどはっきりしたものではなくなってきています。そういう状況でわれわれは待ちの姿勢ではいけない。お客様の課題、引いては社会課題となるものを解決する提案を自らしていかないとなりません。

 であるとするなら、OKIはどう変わらなければいけないのか。お客様からの具体的な依頼を引き受ける受注型ではなく、提案型に変わらなければいけません。受注型から提案型に変わる、これはまさにイノベーション活動そのものですよね。もちろん今までも提案はしてきました。でも、それをもっと加速しなければいけない。そこで、横田と藤原に具体的にどう進めるべきか考えてほしいと指示しました。

——Yume Proはどのようにスタートを切ったのか、振り返っていただけますか。

横田氏 : 2017年10月末にプロジェクトチームが発足して、2018年度からスタートするから2カ月で企画をまとめて、と言われましたので、本当に時間がありませんでした(笑)。鎌上や藤原と一緒に毎週、侃々諤々の議論をしていましたね。

沖電気工業株式会社 執行役員の横田俊之氏
OKI 執行役員の横田俊之氏

藤原氏 : われわれのビジネススタイルとしては、従来はお客様から「こういったものを作ってほしい」という依頼があって、きちっと仕様を決めて、品質の高いものを作る、ということが得意でした。しかし、先ほど鎌上が話していた通り、これからはお客様が何をしていくべきか迷われている中で提案していかなければいけない。それに対していきなり個別の商品企画という形ではなく、Yume Proというプロセスを前段で作ったところがポイントなんですよね。

 まずはその前段で仮説を作り、お客様とじっくり話をして合意を取りながら進める。そうすると、商品を企画するときにはそのネタがすでにできあがっているから、素早く商品化、事業化が進められる。Yume Proはイノベーションをとにかく早く起こそう、事業化に近づけていこう、という考え方なんです。

鎌上氏 : とはいえ、ものすごく革新的なイノベーションを簡単に思いつくはずがありません。世の中、Appleのスティーブ・ジョブズみたいな天才がたくさんいるわけじゃないですから。でも、すごく革新的とは言わないまでも、わずかでも進歩させられる業務上のアイデアなり、商品なりを作る、そのプロセスをプラットフォーム化できれば多くのアイデアを形にしやすくなるのではないか。そうして横田と藤原に考えてもらってスタートしたのがYume Proでした。

 彼らに言っているのは、「いきなりホームランを狙わなくてもいい」ということ。小さくてもいいから、成長体験が得られることから始めようと。OKIは流行に飛びつくのが早いのですが、わりとすぐに熱が冷めてしまうんですよね。そうではなく、この活動を定着させて長続きさせるために成功体験を早く作り、仕組みとして定着させる、そこに約3年間取り組んできたわけです。

——これまでの3年間、Yume Proではどのような活動をしてきたのでしょう。また現状をどう評価されていますか。

鎌上氏 : Yume Proのなかで実施している「イノベーション塾」という研修はすでに累計で約3000人が受講し、全社的に定着しています。企業文化・風土を変えるというところでは、月に数回、私と社員十数名とでランチミーティングを実施して、経営と現場とで同じ方向に向けるようにする取り組みもしてきました。

OKIのイノベーション創出活動「Yume Pro」(同社のウェブサイトより)
OKIのイノベーション創出活動「Yume Pro」(同社のウェブサイトより)

 また、たとえば商品企画では、BMC(ビジネスモデルキャンバス)によるアイデア整理の手法なども取り入れて、少しずつその成果が出つつありますし、それなりに手応えを感じています。企業文化・風土の改革やイノベーションの実現は、形にすることを焦ってはいけませんが、私としては早く成功体験を出していきたいと思っていたりもしますね。

横田氏 : Yume Proでは、2019年7月に策定された国際規格ISO 56002に準じたIMS(イノベーション・マネジメント・システム)を先取り的に導入しています。大きなKPIは2つあり、1つはイノベーションが日常的な活動となる文化を作ること、そしてもう1つはOKIのイノベーションブランドを確立することです。スタートから5年間、2022年度までにこれらを達成する計画です。

 年に一度、全役員にインタビューして状況を確認し、さらに社員の意識調査の結果も踏まえると、変革に挑戦する社員は着実に増え、チャレンジする企業文化に変わりつつある、という手応えはあります。日本企業のなかではIMSを先駆け的に導入していることもあって、経済産業省の「IT経営注目企業2019」に選定されましたし、お客様から「Yume Proに参加させてほしい」とか、イノベーション・ルームYume ST(夢スタ)に「行ってみたい」という話をいただくことも増えました。OKIのイノベーションブランドの確立というKPIは着実に達成に向かっていると感じています。

本社にある「Yume ST(夢スタ)」。ミーティングスペースやセミナールームなどとして活用されている
本社にある「Yume ST(夢スタ)」。ミーティングスペースやセミナールームなどとして活用されている

藤原氏 : 最初のうちは他の人から「イノベーションなんて、浮ついている」と言われていました。既存事業を担当している人には「こっちは収益を上げるために頑張っているのに、遊んでいるの?」みたいな態度が見え隠れしていたこともあったかもしれません。しかし、われわれだけでなくお客様のなかでもSDGsやイノベーションという言葉が当たり前になってきて、「中長期的に一緒に何かやりませんか」と言われるようになり、そうすると「最初に仮説が必要ですよね」となった。世の中の流れがそうなってきて、先陣を切ってIMSを始めて、本当に良かったなと思っています。

横田氏 : 「Yume Proチャレンジ」という社内アイデアコンテストも実施していて、今年で3回目になりますが、初回の応募数が37件、2回目が46件で、今年はついに147件。急激に増えています。「浮ついている」と言われたという話でしたが、実のところ仮説を机上の空論で作っても意味がなくて、本当に仮説が正しいかどうかは本当にお客様のところへ何度も何度も通って泥臭く証拠を集めてこなければいけないんですよね。

 最低でも100回、場合によっては200回、300回とお客様のところへ伺って意見を聞き、仮説を修正して……という風に繰り返しながら進めていかなければなりません。そういうYume Proのプロセスを多くの社員が体験したことで、今ではグループ全体に「イノベーションは決して浮ついた活動ではない」という共通認識や評価が広がりつつあります。

——わかりやすいところではどういったプロジェクトが成果として上がってきているでしょうか。

藤原氏 : 1つは「AIエッジコンピューティング」です。中期経営計画2022の中で、AIエッジコンピューティングを戦略的キーワードとして打ち出しました。これは情報通信技術を活用して、現場の困りごとを解決するためのコアとなる技術です。たとえば弊社にはすでに通信技術のほかに、24時間オンライン保守の技術やコールセンターもあります。これらを労働力不足の解決に活かそうとしたときに、必要になるのはAIで動くロボットそのものというよりも、遠隔から複数のロボットを人が監視する仕組みではないかと考えました。

 人がそのロボットを監視していれば、24時間働き続けられる協働ロボットが作れます。これまでの協働ロボットの問題点は、人や物に当たりそうになると止まってしまうことなんです。止まるせいで使いものにならない。だから自動で動かしつつも、乗り越えられずに停止してしまうところは、人が助けて乗り越えられるようにする。そうすれば最小限の人手で済み、労働力不足に対応できます。

 三密回避、非対面・非接触の意味でも、ロボットは有用です。労働力不足と感染症拡大という大きな2つの社会課題に対してリーチできるソリューションとして、すでにロボットの遠隔運用のプロジェクトが事業化目前まできているところです。お客様も数社いて、検証を進めています。これは2018年のYume Proチャレンジの最優秀プロジェクトが基になった取り組みですが、2021年度末には事業化にこぎつけられそうです。

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