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【事業開発の達人たち】置き配×ギグワークで実現する「物流版LCC」--フェリシモ市橋邦弘氏

永井公成(フィラメント)2021年01月20日 08時00分
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 企業の新規事業開発を幅広く支援するフィラメントCEOの角勝が、事業開発やリモートワークに通じた、各界の著名人と対談していく連載「事業開発の達人たち」。今回はフェリシモ 新事業開発本部 物流EC支援事業部長の市橋邦弘さんです。

 EC業界の発展による宅配荷物の増加やドライバー人材の不足で「宅配クライシス」が叫ばれています。また、新型コロナウイルスの感染拡大による影響で置き配や宅配ロッカーの利用増加といった社会変革も進んでいます。

 こうしたパラダイムシフトの中、大手通販企業のフェリシモは、2020年8月に西濃運輸の幹線輸送とギグワーカーのラストワンマイル配達を組み合わせた新しい配送サービス「OCCO(オッコ)」を開始しました。また、このほかに配送センターをオープン化し、他社の荷物もAPIで受け入れと配送ができる仕組みも作りました。これらはどういった経緯で作られたのでしょうか、市橋さんにお聞きしました。

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フェリシモの市橋邦弘氏

フェリシモの「初代ネット担当」としてキャリアをスタート

角氏:まずは市橋さんの自己紹介をお願いできますか。

市橋氏:私は1995年にフェリシモに入社したプロパー社員です。社長から採用面接の時に「インターネットを知っているか?」と聞かれ、もともと文系なのでインターネットは全然知らなかったのですが、「新しいことは大好きです」と答えたところ、採用されました。そして、これからフェリシモのインターネットでの事業を立ち上げるという「未来事業統括本部」に新入社員として配属されたところからキャリアが始まりました。

 阪神淡路大震災の復興のECサイトで、Tシャツを売ったのが最初の案件です。それこそ当時はHTMLをエディターを使って手で書く時代でしたので、O'Reillyの本でHTMLのタグを覚えて、エンジニアの人とゴリゴリ書くというところから始めました。当時の上司がやたらネットやシステムに詳しくて、分からないことは何でも教えてもらえ恵まれた環境でした。

 そうこうしているうちに、日本でもWindows 95の発売とともにインターネットブームが始まりまして、ECがすごく注目されてきました。フェリシモはわりと早い段階からECに取り組んでいましたので、当時からインターネットマガジンとかによく取り上げていただいて、日本のインターネットの成長とともに、フェリシモもECサイトを成長させていただきました。

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 その後は2000年頃にウェブ広告を5〜6年担当し、2005〜6年頃からはウェブシステムの開発部門のリーダーを7、8年やってきました。ECの表と裏の両方をやったことになります。その間にコールセンター、CSなども兼任してきました。現在は、5年ぐらい前に事業開発本部が新しくできて、弊社の代表が本部長を兼任して社長直轄でやるということになったので希望して異動しました。今は新事業開発担当として、毎日いろいろなパートナーさんと一緒にコラボレーションを行っています。

角氏:まさに歴史ですね。

西濃運輸の幹線輸送とギグワーカーによるLCC宅配「OCCO」

角氏:市橋さんが今やられているのはどんなことでしょうか。

市橋氏:元々100%子会社だった「株式会社LOCCO(ロッコ)」に、西濃運輸さんと、ITベンチャーのNL PLUSさんに出資いただきジョイントベンチャーという形で「OCCO(オッコ)」という置き配専門のLCC宅配のサービスをはじめました。

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 3年ほど前から「物流クライシス」という言葉が新聞で取り上げられていました。昔の携帯電話と同じように日本にはBtoCの宅配会社が実質3社しかいないため寡占状態となり、配送料が今後上がるしかないような状況でした。もともと物流業界は3Kといわれ非常に厳しい労働環境であることに加え、EC宅配が増え、再配達も2〜3割になり「このままでは成り立たなくなるから送料が上がっても仕方ない」という状況に陥り、実際に大幅に宅配の運賃が値上げされました。

 その時に、われわれ通販事業者が取れる選択肢は2つで、「値上げを自分たちで飲む」か「お客様にご負担いただくか」です。でも、お客様にご負担いただくと買い控えにもつながりますし、そこは企業努力で一番最後にしたいと思っていました。いろいろ考えて出てきたひとつの案が、携帯電話の格安キャリアができたのと同じく、第4の運送会社を自分たちで作って、自分たちでも荷物を届けられるようにするということです。

 そこで西濃さんとNL PLUSさんにご協力いただきLCC宅配の会社を作りました。会社名は人と人をつなぐトロッコになりたいという願いをこめた「LOCCO(ロッコ)」で、Lを取ったサービス名の「OCCO」は置くだけの送り方を意味しています。とはいえ、われわれが何万台もトラックを買ったりとか、何万人とドライバーを契約するのはなかなか難しいものがあるので、西濃さんに幹線輸送を担っていただいています。

 われわれは神戸の会社ですから、たとえば神戸から東京まで西濃さんに運んでいただくことになります。そして、ラストワンマイルはギグワーカーが運び、置き配を行うというビジネスモデルにしました。東京23区からスタートして、今は順調にエリアを拡大しています。オープンプラットフォームにしていますので、いろいろな企業さんの相乗りも歓迎しています。

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 物流のコストが上がった時、既存の配送業者にその理由を聞いたら、再配達があっても1回分の料金しかいただいていないので、その分のコストがかかるとのことでした。置き配専門にすればコストが抑えられるはずだということで、置き配に的を絞りました。実際にフェリシモの荷物でやってみたところコストは10%削減できました。

 いざ始めると、「盗難は大丈夫なの?」というお声があり、盗難保険などの安全策も取り入れました。また、コロナ禍になってから急に手渡しと置き配の価値が逆転し、「置き配は盗難があるから怖い」から「置き配だから安心」と言われるようになりました。おかげさまで今はフェリシモの荷物だけでも、かなりの数を置き配でお届けすることができるようになりました。

 ラストワンマイルの配達者をギグワーカーにすることで、主婦の方やシングルマザーでなかなかフルタイムで働けない方の仕事、需要、雇用の創出にもつなげたいと思っています。ギグワーカーさんはアプリをスマホに入れて、荷物についているバーコードをスキャンしたら、Googleマップで最短距離を表示して徒歩で届けられるようにしています。荷物を届けたら、アプリで写真を撮ってアップロードしてもらって配達証明とし、報酬をお支払いします。

 ギグワーカーさん以外にも、たとえば牛乳配達や新聞配達の方からも「やりたい」というお声をいただいています。オープンプラットホームにしているので、もっといろいろな通販事業会社さんにも使っていただきたいと思っています。

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角氏:置き配できるご家庭も増えているんですよね。

市橋氏:そうなんですよ。宅配ロッカーの価格も安くなっていっているようで、どんどん普及するんじゃないかなと思っています。今は東京23区と神奈川と埼玉と愛知の一部がOCCOのエリアなんですけど、いろいろなパートナーさんと手を組んで広げていきたいなと思ってやっています。

角氏:すごいな。儲かっていますよね?

市橋氏:システム開発の先行投資で、まだ黒字化にはいっていないんですけどね(笑)。

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