【事業開発の達人たち】置き配×ギグワークで実現する「物流版LCC」--フェリシモ市橋邦弘氏 - (page 2)

永井公成(フィラメント)2021年01月20日 08時00分
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配送センターをオープン化してAPIで荷物の操作が可能に

市橋氏:今はLOCCOの取締役を兼任しながら、フェリシモの配送センターのオープン化にも取り組んでいます。フェリシモの配送センターは神戸市須磨区弥栄台にあり、およそ4万平米あって大体東京ドーム1個分ぐらいの広さがあります。この配送センターの空きリソースもシェアードサービスとして提供しています。前述のOCCOと組み合わせると、宅配のオープン化と物流センターのオープン化の両方に取り組んでいると言えます。

角氏:これってウェブを長いことやっていらしたから、ウェブの考え方とかコンセプトをリアルに展開しよう、という感覚でやられているんですか。

市橋氏:そうなんですよ。配送センターって会社の中ではコストセンターに分類されるんですが、プロフィット化してコスト削減したいなと思ったんです。ちょうど2000年以降にAWS(注釈:AWSとは、Amazon Web Serviceの略で、Amazonが提供するクラウドコンピューティングサービスのこと)が出てきて、スイッチひとつでフロントのサーバーを倍とか3倍にできる、すごく便利な世の中になったと当時感動していました。

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 しかし、フロントはリソースを3倍にできても、当然ながらバックの配送センターを3倍にすることはできないんですよね。配送センターは1998年に完成したもので、諸先輩方が未来を見据えて大きく作っていただいたんですけど、閑散期は稼働率が半分ぐらいしかありませんでした。それってAWSに例えると、立ち上げられる前のインスタンスみたいなもので、使われないリソースなんですよね。

 その余っているところを使えるようにしたらいいんじゃないかということで、最初は弊社の商品を作っているメーカーさんにご案内を始めました。そして、実費だけお支払いいただいたら共同配送でお届けしますよ、ということで始めさせていただきました。

 そうすると、ご利用いただいた取引先さんに非常に評価いただきまして、今はほぼ1年を通して稼働率が100%近くになりました。最近ではさらに足りなくなってきたので近隣に倉庫を借りて新しい物流業務の検証などもしています。

 まさにそれって、物理的な建物であるものの遊休スペースや配送キャパシティのところをクラウド化の概念で外部に開放したということですね。その開放する手段も、基幹の物流システムはインターネットには一切つながっていないのですが、外から使うためにはインターネットとつながないといけないので、配送センターを外から動かせるAPIを会社のメンバーが作ったんです。(注釈:APIとは「Application Programming Interface(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)の略で、システム間でやり取りする仕組みのようなもの)

角氏:それすごいですね。

市橋氏:利用していただけるパートナーさんにそのAPIのドキュメントをお渡しして使っていただくか、もしくはそこまで開発リソースがなかったり注文数がそんなに多くない場合は、クラウドのストレージ経由で出荷依頼データをCSVでやり取りいただくなど、量とか頻度、キャパシティに合わせて選んでいただいてます。なんらかのセキュアな手段でお送りいただければ対応できます。

 たとえば、通年でご利用いただいているアパレルさんは、毎日のように国内外の工場から納品されてくる先を自社から弊社の配送センターに切り替えて、どんどん入荷されています。そして入荷されてきたものは全部「WMS」という倉庫の管理システムでどんどん在庫化されます。在庫の情報は双方で共有されていて、それをフロントのECサイトと連携し、注文があった商品を出荷依頼データとして投げていただく。そうすると配送センターの中で、ピッキングして、箱詰めして、出荷されます。

角氏:なるほど、分かりやすい。使われている会社さんは、どういうところが多いのでしょうか。

市橋氏:いろいろですね。メーカーさんもありますし、メディアさんにご利用いただくケースもあります。弊社の設備のキャパシティを超えるものはお断りすることもありますが、初めてメーカーさんがEC立ち上げましたとか、ベンチャーでD2Cを始めて社内のスタッフでは手に負えなくなってきたような規模であれば問題なく出荷できる量なので、どうぞ使ってくださいという感じですね。

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角氏:何度か例えが出てきましたけど、要するに物流版のAWSなんですよね。(注釈:AWSとは、Amazon Web Serviceの略で、Amazonが提供するクラウドコンピューティングサービスのこと)

市橋氏:そうですね。物流センターのシェアードサービスですね。

角氏:あれも、シーズンオフのデータセンターのリソースを売り出したものですもんね。

市橋氏:そうですね。われわれ事業会社からすると物流センターはコストセンターに位置づけられるので空きリソースはもったいないので、いろいろなシェアードサービスがあるので物流センターももそうしましょうかと。実際それを専門にやっている3PL(注釈:サードパーティー・ロジスティクス)会社さんもいっぱいいるんですね。

 そういう会社さん、いろいろな会社さんがどんどん出ているけど、それ以上に宅配の個数の伸び率が伸びていまして。直近で2年ぐらい前は40億個と言われていたんですけど、今は多分60億に到達すると言われていまして、数年で1.5倍になるんです。ありとあらゆる倉庫業者さんが全員で取り組んでも賄いきれないぐらいの伸び率です。なので、いろいろな会社さんがいろいろ取り組まれたらいいんじゃないかなと思っています。そのへんもインターネット的な考え方ですね。

角氏:なるほど。すごく面白かったです。ありがとうございました。

【本稿は、オープンイノベーションの力を信じて“新しいことへ挑戦”する人、企業を支援し、企業成長をさらに加速させるお手伝いをする企業「フィラメント」のCEOである角勝の企画、制作でお届けしています】

角 勝

株式会社フィラメント代表取締役CEO。

関西学院大学卒業後、1995年、大阪市に入庁。2012年から大阪市の共創スペース「大阪イノベーションハブ」の設立準備と企画運営を担当し、その発展に尽力。2015年、独立しフィラメントを設立。以降、新規事業開発支援のスペシャリストとして、主に大企業に対し事業アイデア創発から事業化まで幅広くサポートしている。様々な産業を横断する幅広い知見と人脈を武器に、オープンイノベーションを実践、追求している。自社では以前よりリモートワークを積極活用し、設備面だけでなく心理面も重視した働き方を推進中。

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