企業の新規事業開発を幅広く支援するフィラメントCEOの角勝が、事業開発やリモートワークに通じた、各界の著名人と対談していく連載「事業開発の達人たち」。今回はソニーの對馬哲平さんです。
ソニーのスマートウォッチ「wena 3」が11月27日に発売されます。wena 3は2016年に始まるwenaシリーズの第3世代として、新たにSuicaやAlexa、Qrioなどに対応し、セイコーやシチズンとのコラボモデルもリリース予定です。
発売に先駆け、ソニーのwena事業責任者である對馬さんに、wena 3の機能面やビジネスモデル、オープンイノベーションについてインタビューを行いました。「第3世代にしてようやくやりたいことができるようになった」と語る對馬さんは、その理由をどのように考えているのでしょうか。
角氏:Alexaが搭載されたり、Suica対応したり、wena 3では大きな進化が見えますが、開発には相当苦労されたのではないですか。
對馬氏:そうですね。wenaのビジョンとして、「身に着ける喜びと利便性を共存させる、両立させる世界をつくる」ということを掲げています。そのためのミッションとして、スマートウォッチの便利さを追求していくことはもちろんですが、それに加えて「身に着ける喜び」、つまりアナログ時計としての美しさも追求します。アナログ時計としての価値とスマートウォッチとしての価値の双方を両方とも高めていくことを大事にしています。
その中で、スマートウォッチの機能に関しては、「一般のスマートウォッチとほとんど変わらない機能を搭載する」ということを目指しました。AlexaもSuicaも搭載できたし、タッチパネル操作もできるようになったので、それはかなり実現できたと思います。あと、スマートロックのQrioにも対応し、利便性はかなりあがったのかなと。
一方で、アナログ時計としての美しさに関しては、デザインの自由度を向上させることが重要だと考えました。今までのモデルはバンドの中にいろいろな機能が入っていたため、盤面しかデザインを変えられませんでしたが、今回はモジュール化させてバックル部分に全部機能を集約したことによって、バンド部分も自由にデザインできるようになりました。
角氏:最初からここまで作ろうと思っていましたか?
對馬氏:思ってなかったですね。第3世代となり、やっと技術が追いついてきたという感じです。各種センサーやCPUの消費電力がすごく小さくなってきたことで、バッテリーのサイズも抑えられ、ようやくこのサイズにおさめることができました。
角氏:第2世代を出してから第3世代までの間隔はどれぐらいあったんですか?
對馬氏:第2世代は2017年の12月に発売したので、約3年なのですが、第2世代の英国での展開などを始めるのに1年ぐらい経っていたので、実質的には2年ぐらいですかね。
角氏:じゃあ2年の間にここまで進化したと。
對馬氏:そういうことになりますね。
角氏:なるほど。ほかの会社にwena 3を模倣されるようなことってありますかね?
對馬氏:そうですねぇ…。メタルアークアンテナもディスクリートで設計していますし、ここまで小さいのはなかなか作れないと思います。
角氏:アンテナ?
對馬氏:はい。アンテナが金属で覆われると全然電波が飛ばないので、外装には樹脂やプラスチックを使うのが一般的なんです。でも、品位を追求するために、wena 3はどうしてもステンレスで外装を作りたかったので、その覆っている金属外装自体をアンテナにすることにしました。全くモジュールを使用することなく、ディスクリート(※)で設計したため、結構難しかったですね。また、樹脂だったら一般的に厚み1.0ミリ程度必要なところを金属で作ると0.3ミリほどでつくれるので、すごく薄くできるというメリットもあります。
※ディスクリート:半導体製品の部品となる、トランジスタ、ダイオード、コンデンサ、サイリスタなど単機能の素子の総称(IT用語辞典 e-wordsによる)
角氏:なるほど。話は変わりますが、wena 3に搭載されている心拍を測るためのセンサーが従来の緑LEDに加えて、赤LEDも搭載されるようになったと聞きました。
對馬氏:そうなんです。今回から緑LEDと赤LEDの2つを使ったセンサーに変更し、より正確な心拍数計測が可能になりました。センサー自体はソニーのセンサーではないのですが、アルゴリズムはソニーのアルゴリズムを使っています。R&Dセンターのほうでセンサーの技術開発が行われていまして、その技術を活用しています。
角氏:ソニーの研究開発の実績を生かしているわけですね。
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