フォースタートアップスは1月14日、成長産業領域に特化した情報プラットフォーム「STARTUP DB」において、2020年1月から12月までを対象とした「国内スタートアップ資金調達金額ランキング」を発表した。
それによると、構造タンパク質素材「Brewed Protein(ブリュード・プロテイン)」を開発するSpiberが250億円を調達し、調達金額は316億円でトップに浮上した。そのほか、五常・アンド・カンパニーが8位へランクアップ。モンスター・ラボが11位、CAMPFIREが17位にそれぞれ新規ランクインした。
Spiberは、2007年に設立された、山形県鶴岡市に拠点を置く次世代バイオ素材開発を展開するスタートアップ。ランキング発表時点の想定時価総額は、1143億円となっている。2020年12月30日には、三菱UFJモルガン・スタンレー証券をアレンジャー(大口の資金調達ニーズに対し、ひとつの契約書に基づき複数の金融機関が貸付人となるシンジケート・ローンにおいて、借入人の指名により契約の締結までの業務を代表して行う金融機関)として、「事業価値証券化(Value Securitization)」と呼ばれる資金調達手法により、2020年で最高額の総額250億円を調達した。
今回調達した資金を元に、米国の穀物プロセッサー大手であるArcher-Daniels-Midland Company(ADM)と共同で推進する、「Brewed Protein」の米国での量産体制構築と新素材の研究開発などに充当していく方針だという。
なお、Brewed Proteinは植物由来の糖類を主原料に使用。微生物による発酵(ブリューイング)プロセスにより製造され、用途に応じて多様な特徴を付与できるという。そのため、アパレル分野や輸送機器分野など、さまざまな産業における脱石油・脱アニマルのニーズに対し大きな役割を果たせる可能性を秘めており、持続可能な社会の発展に資する次世代の基幹素材として注目されている。
8位にランクアップした五常・アンド・カンパニーは、新興国向け小口融資のマイクロファイナンス事業を手がけるスタートアップ。シリーズDで総額70.7億円の資金調達を実施し、2014年7月の創業からの累計資金調達額は146.7億円に到達している。2020年10月末時点では、インド・カンボジア・スリランカ・ミャンマーに4800名を超えるグループ従業員を擁し、顧客数は60万人、融資残高は288百万米ドルを突破。
2020年12月に行われた最新の調達では、第一生命保険、丸井グループ、アストマックス・ファンド・マネジメントからの追加出資に加え、リコーリース、Beyond Next Ventures、GMO VenturePartnersなどを新規投資家として迎え入れた。主な資金使途としては、新型コロナウイルスの影響を乗り越えて成長を再開しつつある既存グループ会社の事業拡大とデジタル化の推進、アジア・アフリカ地域における新たな投資先の開拓、顧客の生活の変化を捉える社会的インパクト測定などを挙げている。
11位に新規ランクインしたモンスター・ラボは、グループ約1200名、世界16カ国27都市の人材を活用し、デジタルコンサルティング事業・プロダクト事業を展開するスタートアップ。2020年12月8日には、JICベンチャー・グロース・ファンド1号を引受先とした第三者割当増資により、約30億円の資金調達を実施した。この調達は、デジタルコンサルティング事業のサービス面・人材面での強化、一部SaaS型プロダクト事業への投資の2点を目的としている。同社では、引き続きデジタル領域での提供価値向上に注力していく予定。
17位に新規ランクインしたCAMPFIREは、購入型クラウドファンディング「CAMPFIRE」を手がけるスタートアップ。同社は、GMOペパボを創業し2008年にJASDAQ市場に最年少で上場させた、連続起業家の家入一真氏によって2011年に設立された。2020年12月には、シリーズDラウンドで約6億円、シリーズEラウンドで約30億円、合わせて約36億円の第三者割当増資を実施。また、6億円を上限とするコミットメントライン契約締結による融資枠を確保し、合計40億円超の資金を調達した。
シリーズEラウンドでは、Minerva Growth Partnersがリード投資家を務め、新たにBASE、丸井グループを新規投資家として迎え入れた。さらに、6億円を上限とするコミットメントライン契約は、みずほ銀行と締結している。今回調達した資金を活用し、購入型クラウドファンディング「CAMPFIRE」を中心に、同社グループ会社運営の融資型クラウドファンディング「CAMPFIRE Owners」、株式投資型クラウドファンディング「CAMPFIRE Angels」のさらなる利用者拡大に向けて事業基盤強化などに取り組んでいく方針。
今回ランクインした企業のうち累計資金調達金額100億円を突破している企業は、調達額が大きい順にSpiber、Mobility Technologies、Paidy、アストロスケールホールディングス、ティアフォー、Looop、ヘイ、五常・アンド・カンパニー、VPP Japan、モンスター・ラボ、APBの11社となっている。また、ランクイン企業20社のうち、設立5年以内の企業は7社。このうち、VPP Japan、アストロスケールホールディングス、APBは設立5年以内で累計資金調達金額が100億円を超えているという。
トップ20企業のカテゴリー別では金融が5社と最も多く、環境・エネルギーが4社、自動車が3社と続く。金融領域では、新興国向けマイクロファイナンスの五常・アンド・カンパニー、カードのいらないカンタン決済サービスのPaidy、決済代行・信用保証サービスのH.I.F、無料送金アプリのKyash、クラウドファンディング・プラットフォームサービスのCAMPFIREがランクインした。いずれも、設立から10年以内の急成長スタートアップになっている。
さらに、2020年(1月〜12月)の資金調達金額ランキング上位6社のうち、Spiber、Looop、VPP Japan、APBの4社が環境・エネルギー領域の企業となっており、市場からの期待が高いことがわかる。MaaS事業を展開する自動車領域では、Mobility Technologies、ティアフォー、SkyDriveの3社がランクインした。同領域では、2020年12月29日にティアフォーの代表加藤氏が雪の長野にて自動運転タクシーの実証実験を映したツイートが話題を呼んだ。
フォースタートアップスでは、1月4日時点での「国内スタートアップ想定時価総額ランキング」も発表している。それによると、物流支援ロボット「CarriRo」や自動運転技術開発用プラットフォーム「RoboCar」シリーズなど提供するZMPが新規にランクインした。また、スマートニュースが新たに新株予約権を発行したことにより、想定時価総額を1237億円から1242億円に伸ばし、唯一のランクアップ。3位に浮上している。
ZMPは、自動運転技術やそれを応用した宅配ロボットを開発しているスタートアップ。メンバーは世界15カ国から優秀な人材が集まり活躍しているという。主な事業として物流支援ロボット「CarriRo」、自動運転車両プラットフォーム「RoboCar」シリーズやステレオカメラ「RoboVision」シリーズを提供している。また、他にも画像認識技術の開発、建設、農業、ドローンなどの分野での事業展開もしている。
社名のZMPはゼロモーメントポイント(zero moment point)の略で、動力学的な重心位置のことを意味し、二足歩行ロボットにおいて歩行を実現させるために最も重要なポイントのこと。足裏上にZMPが来るように計算され、初めて歩行が実現するように、同社もロボット分野で最も重要な存在になることを目指し、社名としている。
12月のトップ20企業をカテゴリー別にみてみると、環境・エネルギーと自動車領域が4社と最も多く、次いで金融領域が3社と続いている。自動車領域は、ZMPが新規ランクインしたことにより、以前までトップだった金融領域を抜いてトップとなった。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス