貧困層向け小口融資の五常・アンド・カンパニーがランクイン--2020年9月の資金調達・時価総額ランキング

 フォースタートアップスは10月9日、成長産業領域に特化した情報プラットフォーム「STARTUP DB」において、2020年1月から9月までを対象とした「国内スタートアップ資金調達金額ランキング」を発表した。

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 それによると、五常・アンド・カンパニーが20億円の資金調達を実施し、7位に新規ランクイン。そのほか、Vpon Holdingsとsubsclifeの2社が新規ランクインした。

 五常・アンド・カンパニーは、貧困層向け小口融資のマイクロファイナンス事業を手がけており、英国・スコットランドを拠点とした独立投資組合のBaillie Gifford、アジア域内のテクノロジー企業への投資に特化したプライベートエクイティファンドであるTGVest Capital、フューチャーベンチャーキャピタル、複数の個人投資家を引受先とする20億円の第三者割当増資を実施している。今回の資金調達で、2014年7月の創業からの累計資金調達額が120億円に達している。

 Vpon Holdingsは、インバウンド産業のビッグデータ解析・活用を行うスタートアップ。独自のAIビッグデータ分析と広告テクノロジーによって、旅行者像の可視化や集客プロモーションを実現した。同社は、グローバル領域において新しい市場を創造するためのプラットフォームを生み出し続けるBEENOS、 韓国に拠点を置くベンチャーキャピタルのSTIC INVESTMENT、香港のベンチャーキャピタルであるTripLabs、クールジャパン機構の4社を引受先とした42億円の資金調達を実施し、13位にランクインした。今回調達した資金は、アジアにおけるデータビジネスのさらなる拡充と世界トップレベルのAI人材の採用や研究開発にも活用する予定。

 subsclifeは、家具のサブスクリプションサービス「subsclife」を運営。SMBCベンチャーキャピタル、XTech Ventures、YJキャピタル 、エニグモ、グローバル・ブレイン、サイバーエージェント・キャピタル、セゾン・ベンチャーズ、ダブルシャープ・パートナーズ、ユナイテッド、三菱UFJキャピタルを引受先とした30億円の第三者割当増資を実施した。今回の資金調達により、subsclifeのシェア拡大に向けた施策を加速させる方針だという。

 カテゴリー別では、金融が4社と最も多く、環境・エネルギー、自動車、コンテンツがそれぞれ3社がランクインした。金融領域では、五常・アンド・カンパニーをはじめ、後払い決済サービス「Paidy」を運営するPaidy、決済代行・信用保証サービス「Fimple決済」を提供するH.I.F.、ウォレットアプリ「Kyash」などを提供するKyashがランクインしている。なお、4社はいずれも2020年に入って45億円以上の資金を調達。突出して社数の多いカテゴリーがないことから、さまざまな分野の企業が大型調達していることがわかる。

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 また、今回ランクインした企業のうち、Mobility Technologies、VPP Japan、ヘイ、Looop、五常・アンド・カンパニー、Paidy、ティアフォー、FiNC Technologies、ispaceの9社が累計調達金額100億円を突破。ランクイン企業20社のうち、設立5年以内の企業は全体の半数の10社。Vpon Holdingsは、設立から約1年でランクインし、設立約2年でランクインとなったABP、レット、LayerXと続いている。

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人工合成クモ糸の「Spiber」が浮上

 フォースタートアップスでは、10月2日時点での「国内スタートアップ想定時価総額ランキング」も発表している。それによると、前回(9月)のランキングで7位だった、人工合成クモ糸「クモノス(QMONOS)」の開発に取り組むSpiberが6位へ浮上。想定時価総額を1007億円から77億円増加させ、1084億円となっている。

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 Spiberは、山形県鶴岡市に拠点を置き、慶應義塾大学大学院でバイオインフォマティクスを専攻していた関山和秀氏によって2007年に設立されたバイオベンチャー。同社は、経済産業省が推進するスタートアップ企業の育成支援プログラム「J-Startup」に採択されており、枯渇資源に頼らず環境性に優れた人工タンパク質素材を通じて、地球規模の課題解決に取り組んでいる。10月6日には、米国の穀物メジャーのArcher Daniels Midland Companyと資本業務提携を発表。米国での量産を進めていく方針だという。

 このほか、前回のランキングで想定時価総額444億円だった、テックスタートアップのプレイドが7億円の増加をさせ、451億円に上昇した。プレイドは、デジタルマーケティング領域でCX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE」を運営。「KARTE」および、「KARTE for App」は、オンライン上での人の行動データをリアルタイムに解析・可視化し、ユーザ一ひとりひとりに対して最適なコミュニケーションをとることが可能なプラットフォームとなっている。

 STARTUP DBが保有する登記簿の情報によると、2019年11月には、米Googleからおよそ16億2200万円の出資を受けており、日本では2社目となるGoogleから出資された日本企業として注目されていた。この8月には、オンラインチャットを中心にFAQ接客やチャットボットなど、オンラインサポートに関わるKARTEの機能を提供するパッケージサービス「いますぐ始めるKARTEオンラインチャット」の導入支援で、トランスコスモスとの協業を発表。今後もカスタマーサポート領域におけるオンラインチャットの導入支援などで、トランスコスモスと継続的に協業していく予定だという。

 今回のランキングで順位を上昇させたSpiberは、トップのMobility Technologiesに続き、設立以降の累計資金調達金額では2番手だという。これまでSpiberは、およそ355.8億円を調達。2018年9月には、海外需要開拓にフォーカスした投資を行うクールジャパン機構より30億円、2019年12月には、アメリカ発の大豆油・ヒマワリ油などの穀物製品加工・販売を展開するArcher Daniels Midland Companyから43億7700万円の大型資金調達を受けている。

 直近では、2020年5月に繊維商社の豊島を引受先として第三者割当増資を実施。同時に紡績糸とテキスタイル開発に関する共同研究契約を締結していた。この共同研究契約の締結により両社は、ナレッジとリソースを相互に活用。ファッションを含む幅広いライフスタイル分野において、Spiberが独自に開発した「ブリュード・プロテイン」をはじめとする構造タンパク質繊維の用途の多様化と、普及拡大に向けた開発に尽力している。

 また、想定時価総額ランキングで2位となっているクリーンプラネットは、累計資金調達金額14.4億円と最も少ない。過去の出資で増資の引き受け先が明らかになっている企業は、三浦工業と三菱地所となる。同社が主力事業として力を入れているのが、東北大学と産学連携体制で研究を行っている「新水素エネルギー」。従来の水素エネルギーに比べてエネルギー出力の効率がよく、CO2も全く排出しないクリーンなエネルギーだという。「安全、安定、安価」なエネルギー源を創出し、世界全体の課題を解決することに期待がかかる。

 カテゴリー別にみると、前回と同様に環境・エネルギーと金融領域が最も多く、4社ずつランクイン。続いて、自動車領域の3社となっている。なお、ランキングに変動のあった、SpiberとTRIPLE-1が製造領域のユニコーン企業として分類されている。

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 TRIPLE-1は、世界初の7nmプロセス技術を使用した、国産ビットコイン用マイニングASICチップ「KAMIKAZE」の開発を手掛けるスタートアップ。KAMIKAZEは従来のチップに比べ50%以上の省電力化と処理速度4倍という、環境負荷を大きく低減させながらの高性能化を実現しているという。

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