出前館は「手数料競争には乗らない」--藤井社長に聞く2021年のフードデリバリー戦略 - (page 2)

藤井涼 (編集部) 山川晶之 (編集部) 藤川理絵2021年01月03日 16時30分
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飲食店のニューノーマルは「売上分散」

――飲食店の反応はいかがですか。

 飲食店は、デリバリーサービスを入れるならUber Eats出前館の2社、というパターンがほとんどです。というのも、キッチンの面積や出入金なども含めてオペレーション上、1店舗あたりタブレット2枚が限界だという事情があるようです。かつ、Uber Eatsは若年層や単身世帯で出前館はファミリー、客層があまり重複しないため、どちらかを止めることはできないのではないでしょうか。

 また、雨の日や寒い日こそユーザーはデリバリーしたいと思いますが、Uber Eatsの配達員は一気に減る傾向があります。そのため出前館に注文が偏るのです。これは出前館が直営で配送員を抱えている強みだと思います。

――コロナ禍での飲食店のフードデリバリーに対する意識や状況はどのように変わりましたか。

 飲食店では、経営のリスクヘッジとしてデリバリーやテイクアウトに売上を分散していこうという気持ちが、5月からブレていないと思います。出前館の出店店舗数は、感染者数が減っていた時期も伸び続けており、実はずっと毎月記録更新している状況です。今回はコロナだけど、今後また同じようなことが起きるかもしれないという危機感があるのと、「コロナが収束してもイートインの数字は元には戻らない」と、みなさんおっしゃっています。

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 また、理由の1つには、リモート勤務が一気に進み、都心部にいく人が減ったことも挙げられます。オフィスワーカーのイートインを捉えていた店舗が、以前と同じ数字を作れるわけがありません。そして、「密」というものが刷り込まれたことも大きいです。「これからのイートインは、そこでしか体験できない雰囲気、料理、サービスに振り切り、あとはデリバリーして家でおいしい料理を食べることが当たり前になる、この流れは止まらない」という認識だと思います。

――デリバリーやテイクアウトとイートインの売上比率を大きく変えるよう舵を切った飲食店はありますか。

 いままでデリバリー・テイクアウトの売上は多くても10%程度でしたが、比率を20〜30%に引き上げた大手企業や、出前館の加盟店では50%に到達した店舗もあります。

 また、配送員を自前で抱えるお店も出てきています。僕らデリバリーのサービサーにとってのアイドルタイムも、飲食店では仕込みなどキッチンの仕事があるので、それをやってもらいつつランチやディナーの配送をしてもらうということです。

 日本は衛生管理や品質など食への意識が高いので、飲食店に自店配送のノウハウがたまってきたら、今後どっちに振れていくのかは正直分からないですね。毎月実施している数万人単位のユーザーアンケートでも、一番配送品質が高いのは自店配送だというデータが出ています。出前館はその次くらいです。

――出前館も配送品質や安心安全への対策に力を入れているイメージです。

 飲食店って、「作って、渡したら、終わり」ではなく、作ったものが届くまでがサービスだと思ってやっていらっしゃるので、そこに応える意識は会社として強く持っています。

 いま、ピークタイムの取扱高アップに手を打っていくために、法人と個人の両方に配送の業務委託をしていますが、まずはZoomで面談し、テストや講習も受けていただいてから配送業務開始となるので、実は、他社で配送員の経験がある方が選考で落ちるケースもたくさんあります。ここは、僕らが譲ってはいけない部分だと強く思っています。

 ただ、配送品質と配送効率は両立させなければなりません。「品質はいいけど遅い」ではダメだと思っています。この1カ月だけでも平均配送時間は10分近く早くなっていますが、品質と効率の両立は来年に向けての課題ですね。

――少し切り口を変えますが、ゴーストレストランが日本でも出てきています。出前館もクリスマス前に「クラウドキッチン」をオープンさせましたが、デリバリー専門という業態についてはどのようにお考えですか。

 クラウドキッチンやゴーストレストランって、いまコロナ禍で改めて注目されていますが、実は昔からある業態です。ただ、1つのキッチンで10や20の専門店の料理を作るところはあまりなかったので、これは新しい業態だとは思いますが、PDCAを回しやすいのでしょうね。デリバリーに限らず、通常のEコマースにもあることなので、出前館としてはニュートラルに捉えています。

 最近、リアル店舗を構えている有名店が、別のエリアで「イートインはないけどクラウドキッチンがあるので注文できる、といった方法で注文を増やしているケースがあるのですが、これはすごく正しいなと思いますね。

 しかし、「何をもって専門店とするのか」は、社内でも課題として捉えています。ユーザーに誤認させないように、新たにレギュレーションを設ける、LINEのIDと連携させてレビューを書きやすい仕様にするなど、取り組みも加速させています。

「手数料値下げ戦争」には乗らない

――手数料については改定などは検討されていますか。

 もともと40%(サービス利用料が10%、配送代行手数料が30%、決済代行手数料が〜3.0%発生)だったのですが、1月以降、もう少し加盟店に受け入れてもらいやすい料率(配送代行手数料を30%から25%に引き下げ)を導入します。この料率であれば我々もペイできるという水準です。場合によっては途中で下げることもあるかもしれませんが、ひとまず40%よりも低い料率で始める予定です。

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1月以降は、配送代行手数料を30%から25%に引き下げる

――例えば、最近日本に上陸したWoltでは業界最低水準の手数料を謳っています。

 シンプルな考えですが、僕らの手数料は送客が付いています。これはプラットフォームに共通していて、例えば楽天やアマゾンが高い手数料を取っていたとして、競合が手数料を半分で出したところで加盟店は移りませんよね。逆に、送客がないとただのシステム手数料にしかなりません。これだけ加盟店が順調なのは、送客ができていて1店舗あたりの単価も落ちていない、店舗が増えた分、各店舗に取扱高が行き渡っているのが僕らの強みです。

 今後フードデリバリー業界も淘汰されていくのでしょうが、「手数料値下げ戦争」には乗らないと思います。営業サイドでも(店舗側から)比較されるのですが、送客や認知度が全く違います。認知度調査は定期的にやっているのですが、3カ月で15ポイント上がりました。地域ごとに認知度を計算していて、それを見ながら営業をしています。ユーザーからすると、そのエリアの店舗数って住所を入れたらパッと見えてしまうじゃないですか。僕らは、下げる戦争には巻き込まれずに済むのではないかと思います。

 逆に、1店舗あたりの取扱高が取れなくなってくると厳しくなってきます。ここは常にウォッチしていますが、取扱高が保たれていれば、店舗を増やすほど取扱高が増えていくので、エリアマーケと両輪で回している感じですね。

――将来的にはドローンや車での自動配送といった話も出てくるかと思いますが、すでに何か動かれたりしていますか。

 はい。実は、全国的にも有名な飲食店と一緒に、ドローン配送の実証実験を計画中です。熱々の状態を保てるのかなど、いろいろとテストしなければいけないですし、海外では自動配達のフードデリバリーカーが路面を走り始めたりしているので、考えていかなければと思っています。日本では法整備や、個配になると敷地の問題などもありますが、そちらに向かっていくのは間違いないので、僕らもチャレンジしていきたい領域ですね。

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