米司法省は米国時間12月18日、天安門事件に関する会議を妨害した容疑で、中国在住のZoom元従業員を起訴したとプレスリリースで発表した。元従業員は中国政府と協力し、反体制派を標的にしたとされている。
ニューヨーク市ブルックリンの連邦裁判所に提出されたXinjiang Jin(別名Julien Jin)容疑者に対する訴状と逮捕状も公開された。同容疑者は米国で拘束されていないが、有罪の場合、最高10年の禁固刑を言い渡される可能性がある。
司法省のプレスリリースにZoomの社名は明記されていないが、Zoomの担当者は声明の中で、「この件で(司法省に)全面的に協力し、徹底的な内部調査を実施してきた」と述べた。
司法省によると、会議は5月と6月にZoomを使って開催された。米国居住者が組織し、主催したという。Zoomによると、元従業員が特定の内部アクセス制御を迂回(うかい)しようとするなどして、Zoomの規則に違反したことが内部調査で分かった。またこの従業員は、複数の会議やアカウントの停止につながる行為をして、「一部の個人のユーザー情報を中国当局に共有したか、共有するよう仕向けた」という。
Zoomの担当者は、現段階の調査においては、「10人に満たない個人ユーザーのデータを除いて」非中国籍ユーザーのデータをJin容疑者やその他のZoomの従業員が中国政府に提供したとは考えていないとした。Zoomによると、企業の情報が中国政府に漏れた形跡はないものの、Jin容疑者は天安門事件を振り返る会議の情報を中国政府に提供していた可能性があるという。ZoomはJin容疑者を社内規定違反として解雇し、他にも調査中として休職させた社員がいることを明らかにした。
「われわれは自社の価値観を明らかするための行動を取っている」とZoomの担当者は述べた。「われわれは7月に『政府によるリクエストのガイド』を発行してユーザーのプライバシー、セキュリティ、安全性が常に最優先となるよう、政府のいかなる要求も精査の対象と定めた。また、中国における直接販売とオンライン販売を中止し、米国とインド、シンガポールに研究拠点を設立した。われわれは進化し続けるセキュリティ上の課題を予測し、またそれと闘うために、引き続き積極的な行動を続ける」
訴状によると、Jin容疑者はZoomにおける中国の法執行当局および情報当局との主要な連絡係だったため、中国政府の要請に応じて情報を提供したり、Zoomのビデオ会議を停止させたりしていたという。ユーザーや会議に関する情報を中国政府と共有し、中国国外に在住するユーザーのIPアドレスや名前、メールアドレスといったデータを提供することもあったとされる。Jin容疑者は、中国政府から「違法」と見なされる政治や宗教を話題にするZoom会議を監視していたという。
また、2019年1月から、Jin容疑者およびその共謀者とされる人物らは中国政府の指示により、米国におけるZoomのシステムを利用して世界中のユーザーによる政治的、あるいは宗教的な内容の話を検出していたという。これらの行動の一例として、天安門事件の31周年記念として開催された4つのビデオ会議が中断させられている。
Jin容疑者の共謀者も、別人の名前で偽のメールアカウントとZoomアカウントを作り、これらの会議の主催者や参加者がテロ組織の支援や暴力の誘発、児童ポルノの共有を行っていたとする証拠をねつ造したとされる。これらの偽の証拠では、参加者が会議中にそうした話題について論じたことにされていた。Jin容疑者はその後、この証拠を使って米国のZoom幹部を説得し、会議の終了と、会議主催者のアカウントの停止や削除を行わせたとされる。
司法省によると、中国当局はJin容疑者からの情報を利用し、中国にいる参加者やその家族に報復措置を取ったという。会議で話す予定の人物を一時的に拘束したこともあったとされる。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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