いま日本では、高度経済成長期に建設された社会インフラの老朽化が喫緊の課題となっている。ドローンは、インフラ設備点検業務の効率化や、高所作業における安全確保などの観点から、橋梁や鉄塔の点検業務をはじめ、測量、配送、災害支援など、さまざまな領域での利活用ニーズが高まっている。
そのような中、ソフトバンクと双葉電子は12月17日、共同開発した産業ドローンのプロトタイプを発表した。主な特徴は、LTE対応の通信モジュール搭載、誤差数センチメートル級の精度を誇る高精度測位サービス「ichimill(イチミル)」への対応、屋外を自動航行時に風速15m/sの環境下でもホバリング(定位置保持)できる安定性だ。
両社は今後、LTEと高精度測位の技術検証を目的とした実証実験と機能改良を行い、複数の利用企業とのテストトライアルを実施したうえで、2021年度には新機体をソフトバンクが法人向けに提供しているドローンサービス「SoraSolution(ソラソリューション)」のサービスラインアップに追加する予定だという。
発表会ではまずソフトバンク デジタルテクノロジユニット5G & IoTソリューション本部の神谷義孝氏が共同開発の概要について、次に双葉電子理事の横山勝氏がプロトタイプの機体スペックや強みをそれぞれ説明した。最後にソフトバンク法人事業統括の松田憲史郎氏が、将来的にこの機体がサービスラインアップに追加される予定の「SoraSolution(ソラソリューション)」について説明を行った。
点検、建設、農業、物流、さまざまな分野でドローンによる作業の効率化・自動化が進んでいるが、ソフトバンクは「ドローンを普及させるためには自動航行は必要条件」だと捉え、マップとGPSを利用した自動飛行、対象物を映像で判断して撮影するという機能を研究してきた。
また、LTEや5G、高精度測位などの基盤をドローンにも活用する。LTEや5Gを活用できれば、空撮した画像や映像をリアルタイムにクラウドへ送信できるほか、機体のテレメトリー情報(機体の位置情報やバッテリー残量など)のリアルタイム伝送や遠隔地からのリモート制御も可能になる。ソフトバンクのichimillは、GNSSと全国3300か所以上に設置した独自の基準点を活用した誤差数センチメートルでの測位が可能で、飛行制御の安定性向上や取得データへの位置情報付与の精度向上が期待できる。例えば、複数枚の画像を1枚に合成(オルソ化)した場合も画像の歪みが少なく鮮明になり、地図データと重ねたときの精度が向上するという。
さらに今後は、高付加価値としてAIを活用したサービスの構築を目指すという。具体的には、ドローンで取得したデータから鉄塔のサビや橋梁コンクリートのクラック(ひび割れ)などをAIを活用して自動検出する機能や、非GPS環境下におけるVSLAMを活用した飛行技術、地上に設置したセンサーとの協働などだ。
神谷氏は、「ソフトバンクの通信技術、高精度測位、SoraSolutionなどのアセットと、双葉電子が持つ防水防塵や耐風性能などにおける開発技術やノウハウを掛け合わせて、産業ドローンの共同開発を進めて行く」と、共同開発における両社の役割を説明した。
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