角氏:第1世代からwenaシリーズに取り組んでおられて、気づきなどはありますか。
對馬氏:新規事業をやるにあたって、僕なりの持論があって。やっぱり今回思ったのは、自分のやりたいこととできることのギャップは常にあるものですが、それがようやく重なってくるのが第3世代ぐらいになるということです。
第1世代の時はSuica対応していなかったのですが、第3世代からSuica対応したのも本当に時流で。第1世代から5年間待ったからやっとできた、と言うこともできるかと思います。第1世代からいきなりSuicaに対応して、シチズンさんとかセイコーさんとかと業務提携して、モジュール供給の契約もして…というのは絶対に無理だなと思いました。一歩一歩積み重ねていくことでより大きなことができるんだと思います。
角氏:第1世代の時はまだ信頼が蓄積されてないということでしょうか。
對馬氏:そうですね。しかもそういう自分たちだけで完結できないところもあります。今回Suicaに対応できたのは、Suicaプラットフォームのオープン化の流れがあって、タイミングが合ったからwenaでも実現することができました。Alexaも似た経緯ですね。
はじめから100点満点で全部揃うんじゃなくて、最初のうちは20点、30点ぐらいなんですよ。でも第2、第3世代と続けるにつれて、理想のかたちに近いものにピースがそろっていくんですよね、当たり前のことなんですけど。
角氏:なるほどね。よく分かります。バージョンアップを意識して、事業を育てる気持ちで新規事業にトライしなくちゃ駄目だよってことですね。
對馬氏:はい。だから、投資する側の人たちは、第3世代ぐらいまでやらせてあげてほしいなと思います。もちろんいろいろと事情はあると思うんですけど、KPIをしっかり設計しながら事業を設計していくことが必要ですね。
角氏:ところで、発売までにコロナ禍となりましたが、何か影響はありましたか?
對馬氏:もともと予定していた11月の発売は守れたので良かったのですが、中国で作っている部品の実物を見に現地に行けないのが一番つらかったです。工場とやりとりを何回もするのですが、例えば「パーツにくすみが見える」となったら、それがなぜ出るのかについて、写真ではなく実際にものを見ないと分からないんですよね。部品を全部送ってもらった上でやりとりをする必要がありました。毎回発送して送ってもらって指示出して…というのをメカチームのエンジニアがやるんですけど、それを見ててすごく大変そうに思いました。発送すると税関を通すなどどうしても時間かかってしまうところはあったのですが、ふたを開けてみればなんとかできて良かったです。
角氏:最後に、wenaの今後の展望についてお話いただけますか。
對馬氏:今は品位、小型化、多機能といったところにフォーカスしているので、時計をつけるとそれこそ市場価格7、8万円とかで販売されるようなものになってしまいます。でも時計のボリュームゾーンは3万円台以下と言われているので、そういうところに提供できるモデルを作りたいです。そうするともっと多様なブランドやモデルに搭載することができるようになります。
角氏:なるほど、素晴らしい。ありがとうございます。
<<次回に続く>>
【本稿は、オープンイノベーションの力を信じて“新しいことへ挑戦”する人、企業を支援し、企業成長をさらに加速させるお手伝いをする企業「フィラメント」のCEOである角勝の企画、制作でお届けしています】
角 勝
株式会社フィラメント代表取締役CEO。
関西学院大学卒業後、1995年、大阪市に入庁。2012年から大阪市の共創スペース「大阪イノベーションハブ」の設立準備と企画運営を担当し、その発展に尽力。2015年、独立しフィラメントを設立。以降、新規事業開発支援のスペシャリストとして、主に大企業に対し事業アイデア創発から事業化まで幅広くサポートしている。様々な産業を横断する幅広い知見と人脈を武器に、オープンイノベーションを実践、追求している。自社では以前よりリモートワークを積極活用し、設備面だけでなく心理面も重視した働き方を推進中。
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