ハイセンスの傘下に入り、東芝映像ソリューションとして新たなスタートを切った東芝「レグザ」は、今、大変勢いのあるブランドだ。テレビのグローバルブランドとして認知されているハイセンスの資金力、調達力を武器に、新技術、機能を次々に取り入れ、アイデアあふれる商品を登場させている。
もともと東芝は、高画質、高機能を追求し、高い技術力を持つメーカー。アイデアも豊富で、実際に複数のチャンネルをまるごと録画する「全録」や今回のレグザエンジンがクラウドと連携して高画質処理をする「クラウドAI高画質テクノロジー」などを生み出している。
クラウドAI高画質テクノロジーは、地上波のテレビ番組を対象に、沈みすぎている黒を補正したり、色味が変化しすぎた画を補正したりと番組の画質を修正する技術。現在は各番組を見ながら、東芝映像ソリューションの映像マイスターが調整しているが、データが貯まってくればAIが自動的に調整する仕組み。テレビ側に調整機能をもたせるのではなく、クラウドに連携できることがメリットだ。
東芝は以前から一歩踏み込んだ画質調整を加えることが得意で、それは1990年代に遡る。当時ほとんど使われていなかった画質調整のパラメーターを増やし、ユーザーが手を加えられるように工夫していた。実際調整を突き詰めていくと、自分好みの画質にできた。
これを今度はクラウドに置き換え、東芝の最高画質をカスタマイズして作るというのがクラウドAI高画質テクノロジーの試みだ。画質調整には大きく分けて2つの方向性があり、元の画質に近づけることと、視聴環境に合わせて調整すること。センサーがあれば環境にあった画質は作れるが見る人の好みを選ぶのは難しい。この時にAIが好みの画質を提案してくれるなど、できることは多い。こうした画質調整機能はありだと思う。東芝はネットを使った機能にも強く、ネットと画質調整という2つが合体し、得意技を極めた技術だと感じている。
もう一つのユニークな展開は、9月に発表した「液晶レグザ V34」シリーズだ。2Kタイプで、サイズラインアップも40V型、32V型、24V型の中小型。いわゆるエントリーモデルの内容だが、「ネット動画を楽しむためのテレビ」と打ち出した点が新しい。
今のテレビは放送波はもちろん、NetflixやYouTube、Huluといったネット動画サービスを見るのが重要な機能の1つ。アプリは採用しているものの、なかなか立ち上がらない、コンテンツが検索しにくいなど「ネット動画も見られます」という程度の対応が目立った。
V34は、新開発映像処理エンジン「レグザエンジンPower Drive」により、ネット動画配信サービスのメニューを軽快に操作できる。実際に使ってみると非常に立ち上がりが早く、とにかく快適。テレビ番組同様の使い勝手でネット動画を楽しめる。
この機能は、10月に発表した「C350X」シリーズにも採用されており、こちらは4Kモデル。今後有機ELモデルにもぜひ搭載していってほしい。ただなんと言ってもこの機能の本命は、ネットで多くのコンテンツ配信が見込まれる8Kテレビだろう。データ量が多い8Kコンテンツはネットを介しての提供が本命であり、テレビにおけるネットモデルの重要さは今後さらに高まるだろう。
液晶、有機ELの両タイプをラインアップし、独自の機能も満載している東芝映像ソリューションは、ハイセンスの傘下に入り、ハイセンスのテレビ画質強化にも寄与。大変良いバランスになっている。今後期待するのは、やはり8Kテレビの登場だ。すでに2019年秋にプロトタイプが公開されており、まずは液晶からトライして、さらに有機ELという展開を期待したい。
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